第183話 そして、フロントラルへ
ウィルフレッドとヴィンセントの「話し合い」から翌日、ルーセンティア王国王城では、「邪神の眷属に関する調査」という名の、中立都市フロントラルへの遠征に向けた準備が進められていた。
第2王女のイヴリーヌと、歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織の5人の勇者達と共に行く者達の編成と、遠征に持って行く装備や道具の用意などで、王城内はとても忙しそうな雰囲気に……満ちてなくて、どういう訳か全体的にゆっくりとしたペースで行われていた為、全ての準備が完了するのに3日もかかってしまった。
当然その最中、
(ど、どうしよう。こうしている間にも、フーちゃんが違う場所に行ってしまうんじゃ?)
と、歩夢は不安そうな表情を浮かべていたが、
「大丈夫、きっと会えるから!」
と、美羽に笑顔でそう励まされたので、その言葉を聞いて、
(ああ、美羽ちゃん。美羽ちゃんも本当は不安な筈なのに……)
と、歩夢はそう感じた後、
「うん。絶対にフーちゃんに会おうね」
と、美羽を見て笑顔で頷きながらそう言った。
そんな感じで3日後。
王城の前には数台の馬車が並んでいて、大勢の騎士や兵士達が、用意した荷物を次々と馬車に積み、その後、選抜された遠征のメンバー達も、それぞれ馬車に乗り込んだ。
その一方で、
「それではお父様、お母様、お姉様。行って参ります」
と、遠征メンバーの代表であるイヴリーヌが、ウィルフレッド、マーガレット、クラリッサに向かってそう挨拶し、それを受けて、
「うむ。気をつけていってくるんだぞ」
「そうよ、無理したら駄目ですからね」
と、ウィルフレッドとマーガレットがイヴリーヌに向かってそう言った。
すると、
「イヴ……」
と、クラリッサがそう口を開いたので、それにイヴリーヌが「何ですか?」と返事すると、
「彼に会ったら伝えて。『わたくしはこの通り元気です』と」
と、クラリッサはイヴリーヌに向かってそうお願いし、それを聞いたイヴリーヌはハッとなった後、
「わかりましたお姉様。必ず、お伝えします」
と、そのお願いを引き受けた。
そして、勇者達はというと、
「先生、みんな。行ってきます」
「「「「行ってきます!」」」」
と、歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織の5人が、爽子とクラスメイト達に向かってそう言い、
「ああ。みんな、気をつけて」
と、爽子も歩夢達に向かってそう言った。
そして、イヴリーヌに続くように、歩夢達も馬車に乗り込むと、全ての馬車がフロントラルに向けて出発した。
多くの人達が見つめる中、馬車は次々と王都内を走り、それから少しすると、王都の外へと続く大きな門が見えた。
そしてその門を潜ると、全ての馬車は「外の世界」へと飛び出した。
馬車の窓越しとはいえ、初めて見た王都の外の景色に、歩夢達は目を大きく見開くと、
「雪村の奴、一足早くこの景色を見たんだよな?」
と、鉄雄がそう口を開いたので、
「う、うん。そうだね」
と、それを聞いた恵樹がコクリと頷きながら返事した。
そして、そんな鉄雄達を他所に、
(フーちゃん、どんな想いでこの景色を見たのかな? どんな想いで、私達のもとから飛び出したのかな?)
と、歩夢は窓の外の景色を見つめながら、そう疑問に思った。
それから4日後、ルーセンティア王国王都、五神教会本部。
その奥にある一室で、
(ふむ。今頃、勇者様方はどうしてるでしょうなぁ……)
と、教主であるジェフリーが1人、窓の外を見ながらもの思いに耽っていると、何やら部屋の外が騒がしくなったので、
「おや? 何でしょうか……?」
と、それに気付いたジェフリーがそう呟くと、
「教主様! ジェフリー教主様!」
と、という叫びと共に部屋の扉がドンッドンッと乱暴に叩かれたので、それにジェフリーはギョッとなったが、すぐに落ち着いた表情になって、
「入りなさい」
と、扉の向こう側に向かってそう言った。
その後、「ハッ!」という返事がして、それからすぐにガチャリと少々乱暴に扉が開かれると、
「し、失礼します!」
と、1人の神官が入ってきた。
よく見ると、その表情は真っ青になっていたので、
「ど、どうかしましたか?」
と、ジェフリーが恐る恐るそう尋ねると、神官は「それが……」と呟いて、
「今朝方、イヴリーヌ様と勇者様方が立ち寄った村に、ストロザイア帝国の『魔導飛空船』が現れたと報告を受けました!」
と、顔を真っ青にしたまま、ジェフリーに向かってそう報告した。
その報告を受けて、
「な、何ですと!? それは本当なのですか!?」
と、ジェフリーが目を大きく見開きながら、神官に向かってそう尋ねると、神官はビシッとした姿勢で「はい!」と頷いた。
それを聞いたジェフリーは、
(うーむ、ストロザイア帝国が一体何故……?)
と、心の中でそう疑問に思うと、
「それで、その『魔導飛空船』がどうしたというのですか?」
と、神官に向かってそう尋ねた。
その質問を受けて、神官は「そ、それは……」と更に顔を真っ青にすると、
「そ、その『魔導飛空船』には、ストロザイア帝国のキャロライン皇妃様が乗っていて、あろうことかキャロライン様は、イヴリーヌ様と勇者様方、そして、数人の騎士達を全員『魔導飛空船』に乗せた後、そのまま飛び去ってしまったのです!」
と、少し震えた声でジェフリーに向かってそう報告した。
その報告を受けて、ジェフリーはポカンとした表情で「は?」と首を傾げた後、
「え? そ、それはどういう意味……?」
と、まるで「理解出来ない!」と言わんばかりの表情でそう尋ねようとしたが、言い終わる前に、
「さ、更に、その……大変申し訳難いのですが……その際、こちらで手配した信者達が、全員その村に置き去りにされてしまいました!」
と、神官が真っ青な表情のままそう報告を続けたので、それを聞いたジェフリーは数秒程沈黙すると、
「な、何ですってぇえええええ!?」
と、ジェフリーは今にも目玉が飛び出そうなくらいの、驚きに満ちた表情でそう悲鳴をあげた。




