第137話 何でそうなった!?
「そのサクラバミナトという勇者、『ルーセンティア王国』を出て、この世界のもう1つの大国『ストロザイア帝国』に行くことになったんだ」
「はぁあああああああ!?」
桜庭水音が「ルーセンティア王国」を出て「ストロザイア帝国」に行くことになった。
ヴァレリーから告げられたそのとんでもない話を聞いて、春風は驚愕の叫びをあげた。
その叫びの後、
「ちょ、ちょっと待ってくださいヴァレリーさん! 今のは何の冗談なんですか!?」
と、春風は掴み掛かる勢いでヴァレリーに向かってそう尋ねると、
「いや、悪いが冗談ではない。現にそのレギオンメンバーから報告を受けた翌日、そいつは数名の仲間と共にルーセンティア王国からストロザイア帝国へと出発したそうだ」
と、ヴァレリーは真剣な表情でそう答えたので、
「う、嘘でしょ? 水音だけじゃないって……」
と、春風はショックで顔を真っ青にしてその場に崩れ落ちそうになったが、それでもどうにか踏ん張った。
そんな春風を、
「は、春風……」
と、レナが心配そうに見つめていると、
「お、教えてくださいヴァレリーさん。何故……一体何故、そのようなことになってしまったのですか?」
と、春風は真っ青な表情のまま、ヴァレリーに向かってそう尋ねた。
その質問に対して、
「申し訳ないが、そのレギオンメンバーについての情報は、外の人間に教えることは出来ない。すまない」
と、ヴァレリーは申し訳なさそうにそう謝罪ながら答えた。
その答えを聞いて、春風は悔しそうに表情を暗くしながらも、
「そう……ですよね。こちらこそ、すみません」
と、ヴァレリーに向かってそう謝罪したが、
「だが、敢えて言うなら、そいつはストロザイア帝国では高い身分属している人間で、その日はストロザイア帝国のヴィンセント皇帝陛下と共にルーセンティア王国へと行き、そこで今言った2人の勇者と戦った……とだけ言っておこう」
と、ヴァレリーは「ここだけの話」という感じでそう教えてくれたので、
「そ、そうですか。ありがとうございます」
と、春風は少しだけ表情を明るくしながらそう言った。
その後、ヴァレリーは話を続ける。
「で、そのレギオンメンバーとサクラバミナトの戦いの後、そいつを含めた勇者全員とウィルフレッド陛下にマーガレット王妃、そして今言ったヴィンセント皇帝陛下を交えて、とある『話し合い』が行われたそうだ」
「は、話し合い……ですか? 一体何を……?」
と、ヴァレリーの話を聞いて、春風がキョトンと首を傾げながらそう尋ねると、
「まぁ『話し合い』って言っても、内容はサクラバミナトがどういう一族の生まれという話から始まって、そいつと春風……お前との出会いとか、その後『冒険家』である『師匠』と共に様々な冒険をしてきたこととか……」
と、ヴァレリーは指で数えながらその『話し合い』の内容についてそう説明すると、
「ほう、それは中々興味深い話ですね」
と、フレデリックは大きく目を見開きながらそう言い、
(うわぁ、マジかよ……)
と、春風は「あちゃー」と言わんばかりに右手で顔を覆いながら、心の中でそう呟いた。
そんな春風を前に、
「ああ、興味深い話なのは私も同感だが、もっと凄いのはここからなんだ」
と、ヴァレリーがフレデリックに向かってそう言ったので、
「は? 一体何なんですか?」
と、それを聞いた春風が再びそう尋ねると、
「決まってるだろ……」
と、ヴァレリーはそう言って、
「お前についてのことだ、春風」
と、ビシッと春風を指差したので、
「は!? お、俺ぇ!? い、一体何を……!?」
と、春風は目を大きく見開きながら驚くと、
「あとレナ! お前についてのこともだ!」
と、ヴァレリーはレナにも指差しながらそう言ったので、
「わ、私もぉ!?」
と、レナはショックで春風と同じように目を大きく見開いた。
そんな2人を見て、
「え? 何ですかこの状況?」
「さ、さぁ?」
と、困惑するフレデリックとタイラーを無視して、
「そう。その『話し合い』で、春風、お前の身の上話から始まり、最終的にはお前……いや、お前レナに、ある疑惑が浮かび上がったんだ」
と、ヴァレリーが更に話を続けたので、
「は? ぎ、疑惑?」
「ちょっと、何言ってんの?」
と、春風とレナは警戒したが、それと同時に、
(ま、まさか……)
と、春風は猛烈に嫌な予感がした。
そしてえ、それはレナも同様で、レナがヴァレリーの話にタラリと汗を流すと、
「春風、お前が実は『異世界の神』が送り込んだ『固有職保持者』で、レナ、お前が実は封印から目覚めた『邪神』となんらかの繋がりを持っているという疑惑だ」
と、ヴァレリーはもの凄く真剣な表情でそう言い、それを聞いて、
「「「「な、何だってぇえええええ!?」」」」
と、フレデリック、タイラー、アーデ、そして、レベッカが驚愕の叫びをあげ、
((うっそぉ! そこまでバレてんのぉおおおおお!?))
と、春風とレナは表情には出さなかったが、心の中ではフレデリック達と同じように驚愕の叫びをあげていた。
そんな春風達を無視して、ヴァレリーは「それだけじゃない……」と更に口を開くと、
「その疑惑に至る過程で、ルーセンティア王国が行った『勇者召喚』が、実は『異世界の神々が認めてないものかもしれない』という疑惑もあがったんだ。そして、それに気付いた『異世界の神々』が、それを調査する為に春風、お前をこの世界に送り込み、『邪神』と繋がりがあるかもしれないレナと共にルーセンティア王国を飛び出したという推論に至ったそうだ。因みに『結論』じゃなくて『推論』なのは、向こうも確証がないからだそうだ」
と、春風とレナを交互に見ながらそう言ったので、
「「「「な、何だってぇえええええ!?」」」」
((うおーい! もうそこまでバレてんのぉおおおおお!?))
と、その場にいる誰もがショックを受けた。
しかし、ヴァレリーは更にそんな彼らを無視して、
「で、その推論に至った後、サクラバミナトは春風、困った状況に陥ったお前を助ける為、もしくは何か『悪いこと』しようとしているお前を止める為に強くなりたいと考えていたところに、ヴィンセント皇帝陛下から『それじゃあストロザイア帝国に来ないか?』と誘われて、その後の話し合い末、サクラバミナトはその誘いを受けて、数人の仲間と共にストロザイア帝国へと旅立ったという訳さ」
と、そう話を締め括った。
そんなヴァレリーの話を聞いて、
「……じゃあ、それってつまり」
と、春風はそう口を開くと、
「俺の所為ってことじゃないですかぁ……」
と、今度こそその場に膝から崩れ落ちながら、震えた声でそう言った。




