第133話 対決、春風vsヴァレリー
「遠慮なく、いかせてもらいます」
と、ヴァレリーに向かってそう言いながら、静かに木剣を構えた春風。
そんな春風を見て、
「ちょ、ちょっと待ってよ春風……!?」
と、レナは止めに入ろうとしたが、
「おっと、危ないですよ」
と、フレデリックにガシッと肩を掴まれてしまい、
「は、離してください!」
と、レナはそれを振り払おうとしたが、幾らやってもフレデリックが肩を離すことはなく、
「駄目ですよレナさん。2人の邪魔しては」
と、フレデリックは穏やかな笑みを浮かべながらそう言った。
しかし、
「で、でも……!」
と、それでもレナは春風のもとへと向かおうとしたが、
「駄目ですよ」
と、表情を変えずにそう言ったフレデリックに、何やらプレッシャーのようなものを感じたので、レナはそれ以上動くのをやめて、春風とヴァレリーに視線を向けた。
さて、そんなレナとフレデリックをよそに、春風とヴァレリーはお互い木剣を構えながら睨み合っていた。
「……」
と、静かな表情で睨んでくるヴァレリーにを見て、
(うん、『神眼』を使わなくてもわかる。この人は、本物の強者だ。幾ら手合わせとはいえ、ちょっとでも隙を見せれば、あっという間に負ける)
と、春風はそう感じ、
(だったら、俺はどう動けばいい?)
と、次に自身はどう動けばいいのかを考えようとしたが、
「……いや、違うな」
と、小さくそう呟くと、ヴァレリーに視線を向けながらゆっくりと深呼吸した。
それを見て、ヴァレリーは目を細めると、
「よし」
と、春風は小さくそう言って、木剣の持ち方を変えた。
木剣自体は鍔がついた十字架のような形をしていて、春風はその木剣の上下を逆にし、左手で刀身、それも鍔に近い部分をグッと握ると、それを自身の腰の左側にあてた。
そこは、まさに先程まで翼丸をさしていた部分で、春風のその構えは、まさに鞘から剣を引き抜こうとする時の構えだった。
ヴァレリーはその構えを見て、「ほう」と大きく目を見開くと、
「その構え……差し詰め『次の一撃で決める』って考えかい?」
と、ニヤッとしながら春風に向かってそう尋ねたが、
「……」
春風は真っ直ぐヴァレリーを見つめるだけで、何も答えようとはしなかったので、
「……はは、いいねぇ」
と、ヴァレリーは小さくそう呟くと、
「出来るもんなら、やってみな!」
と、そう叫んだ後、春風に向かって突撃した。
それを見て、
「は、春風ぁ!」
と、レナがそう叫び、
「……」
フレデリックが真剣な表情を浮かべる中、ヴァレリーは木剣を大きく振り上げて、
「はぁ!」
それを、春風に向かって振り下ろした……が、春風はそれでも動こうとしなかったので、
(は! どうやらただのこけおどしか……!?)
と、ヴァレリーがそう考えた次の瞬間……。
ーーゴッ!
「ぐ……お?」
腹部に強い衝撃を受けたのを感じたので、ヴァレリーは「な、何が?」とそこに視線を向けると、
(何……柄だと!?)
なんと、自身の腹部に、春風の木剣の柄頭の部分が当たっていたのだ。それも、まるでナイフで思いっきり刺されたかのように、深めにめり込んでいたので、
「がはっ!」
と、ヴァレリーはそう声をもらすと、持っていた木剣を地面に落とし、両手で腹部を押さえようとした、まさにその時、
「ふっ!」
春風は、素早くヴァレリーの右足の脛に向かってキックを入れた。
「あっ!」
思わぬ一撃を受けたヴァレリーは、腹部を押さえたままバランスを崩して、地面に倒れた。
その後、
「ぐぅ……」
と、ヴァレリーは苦しそうに呻きながら、なんとか立ち上がろうとすると、
「は!」
すぐ横に気配を感じて、ゆっくりとそこに視線を向けると、そこには今まさに、ヴァレリーに向かって木剣を振り下ろそうとしている春風が立っていた。
春風は未だに苦しそうにしているヴァレリーを静かに見下ろすと、
「……」
その首目掛けて、思いっきり木剣を振り下ろした。
その瞬間、
「ちぃ!」
と、ヴァレリーは大きく目を見開くと、傍に落ちてた木剣を手に取り、春風の木剣目掛けて振るった。
その瞬間、2本の木剣はガッと大きな音を立ててぶつかり合い、弾かれるように春風とヴァレリーの手から離れた。
(ここで終わりか?)
と、レナとフレデリック、そしてヴァレリーがそう疑問に思った次の瞬間、
「っ」
「な!?」
なんと、春風はヴァレリーに飛び掛かり、全身で彼女を動けないように拘束した。それも、自身の右腕でヴァレリーの首を絞めるような形で、だ。
「うぐ!」
春風のまさかの行動に、ヴァレリーが再び苦しそうにそう呻くと、
「まだ続けますか?」
と、春風が穏やかな口調でそう尋ねてきたので、それを聞いたヴァレリーは少し考え込むと、
「……いや、やめておくよ」
と、「ふふ」と笑いながらそう言ったので、
「ふむ、どうやら勝負ありのようですね」
と、フレデリックも「ふふ」と笑いながらそう言い、
「は、春風!」
と、レナは表情を明るくした。
その後、フレデリックが見つめる中、春風とヴァレリーは戦闘態勢を解いて、
「ありがとうございました」
と、春風はヴァレリーに向かってペコリと頭を下げながらそう言うと、
「いやぁ、お前中々強いじゃないか」
と、ヴァレリーは「ははは」と笑いながらそう返事したので、それに春風も、
「いえ、自分はまだまだです……」
と、返事しようとすると、
「流石は、異世界の人間ってところだな」
と、ヴァレリーはそれを遮るかのようにそう言ったので、
「「……は?」」
と、春風は勿論、レナまでもがそう声をもらした。
そして、数秒の沈黙後、
「……ヴァレリーさん。あなた、今何て言いました?」
と、春風が警戒しながらヴァレリーに向かってそう尋ねると、
「お前、『雪村春風』だろ? 異世界人の」
と、ヴァレリーは真剣な表情で、春風に向かってそう尋ね返した。
謝罪)
大変申し訳ありません。前々回と前回投稿した話ですが、誠に勝手ながら一部加筆修正させてもらいました。
本当にすみません。




