第116話 中立都市フロントラル
本日2本目の投稿です。
門番らしき若い男性と別れた後、春風とレナは「壁」の向こう側へと続く大きな「門」を潜り始めた。
「さぁ、ここを通れば私達の『目的地』だよぉ!」
と、レナは元気よくそう言ったが、
「うん。楽しみだねぇ。はぁ……」
反対に、春風はズーンと沈んだ表情になっていた。
無理もないだろう。幾ら春風自身もわかっていたこととはいえ、初対面の人間から「可愛いお嬢ちゃん」などと呼ばれてしまったのだから。勿論、その後しっかりと自身が「男」だということを説明したので、
「す、すまなかった!」
と、若い男性に謝罪してもらった。
その時のことを思い出して、
「は、はは。わかってはいたけどさぁ……」
と、春風は更に沈んだ表情になっていると、
「げ、元気出して春風! あんなのは最初だけだから! 次からはちゃんと『男』として見てくれるから!」
と、レナは必死になって励ましてきたので、
「う、うん。ありがとう」
と、春風はホロリとしながらお礼を言った。
その後、
「さ、さぁ気を取り直して! もうすぐだからね春風!」
と、レナはそう言って春風の手を引っ張りながら進み出し、
「うわ! ちょっとレナ……!」
と、春風が驚いていると、「門」の向こう側に着いた。
そこは、一言で表すなら「ファンタジー風の大都市」と呼べるところで、よく整備された道に、大小様々な、石造りの立派な建物が並んでいる。そして、そんな大都市の中では、様々な服装や装備に身を包んだ大勢の人達で賑わっていた。
そんな「門」の向こう側の様子を見て、
「うわぁ、こりゃ凄い光景だな。『日本』どころか『地球』じゃ絶対に見られないや」
と、春風がそう感想を述べると、レナは「ふふ」と笑いながら春風の前に出て、
「ようこそ、『中立都市フロントラル』へ!」
と、春風に向かって元気よくそう言った。
そんなレナの言葉を聞いて、
(ここが、『中立都市フロントラル』。ルーセンティア王国どころか、どの国にも所属しない都市か……)
と、春風はゴクリと唾を飲みながら、心の中でそう呟いた。
その時だ。
ーーグゥウウウウウ。
「「あ」」
春風とレナ、2人の腹からそんな音がしたので、思わず真っ赤になった顔を見合わせた。
それからすぐに、
「え、えっとぉ。今日はもう時間が時間だし、『ハンターギルド』は明日ということにしようか」
と、レナが顔を真っ赤にしたままそう言ったので、
「う、うん! そうだね、そうしよう!」
と、春風も顔を真っ赤にしながらそう言った。
それからすぐに、2人はその場から歩き出した。
次の目的地はレナ曰く、
「まずは、『お金』を手に入れなきゃ!」
とのことで、案内役のレナを先頭に、2人はとある場所に向かった。
レナの案内のもと、フロントラルの中を暫く歩いていると、ある1軒の建物の前に着いた。
その建物を前に、
「レナ、もしかしてここが?」
と、春風がレナにそう尋ねると、
「うん、このお店で倒した魔物から取れる『素材』を買い取ってくれるの」
と、レナはコクリと頷きながらそう答えた。
そして、レナがギィッとその建物ーー店の扉を開けると、
「おお!」
と、春風が小さくそう歓声をあげたように、店内はとても綺麗で、カウンターにあたる場所には、店員らしき黒いエプロンをつけた1人の男性が座っていた。
その男性に向かって、
「すみませーん!」
と、レナがそう挨拶すると、
「ん? おお、レナじゃないか、いらっしゃい!」
と、男性店員がレナに向かってそう返事した。
その後、2人はカウンターの傍まで近づくと、
「素材の買い取りお願いします」
と、レナはそう言って、腰のベルトについているポーチの蓋を開けると、そこから様々な「何か」を取り出して、それを目の前の男性店員の前にドサッと置いた。
それはよく見ると大小異なる宝石のようなものだったり、何やら獣のものと思われる爪や牙だったり、更には大きな昆虫の頭だったり体の一部だったりと、その種類は様々だったので、
(おお、これがレナが倒してきた魔物の素材って訳か)
と、それを見た春風はそう感心した。
そんな春風を他所に、
「うーん、どれどれ……」
と。男性店員は目の前に並べられた「魔物の素材」と思わしき数多くのものを、1つ1つ手に取りながらジッと見つめた。
それから暫くすると、
「はい、これが買い取った分の代金ね」
と、男性店員がレナの前に少し大きめの布袋を置いた。
レナは「ありがとうございます」と言ってその布袋を受け取ると、
「それじゃあ、次は彼の方をお願いします」
と、チラッと春風を見ながらそう言い、それに続くように、
「お、お願いします!」
と、春風は緊張しながらも、男性店員に向かってそう言った。
すると、
「……『彼』?」
と、男性店員は目を細めながらジッと春風を見つめてきたので、
「言っときますけど、彼、顔は可愛いですがちゃんとした『男』ですからね」
と、レナが男性店員に向かって何処か脅すような口調でそう言ったので、
「え、あ、そ、そうでしたか! いやはや……!」
と、男性店員は思わず大慌てでそう言うと、
「そ、それでは、売ってほしいものをお願いします!」
と、春風に向かってちょっとおかしな口調でそう言ったので、春風は「それでは……」と、腰のポーチから、今日出会い、倒してきたサーベルハウンドやシーフファルコンから取れた素材を広げた。
それを見て、
「う、うわ! これはまた凄いですね!」
と、驚く男性店員に向かって、
「お、お願いします」
と、春風は頭を下げながらそう言った。
それからまた暫くすると、
「はい、こちらが代金になります」
と、男性店員はレナと同じように少し大きめの布袋を差し出し、
「ありがとうございます」
と、春風はペコリとしながらそれを受け取ると、レナと共に店を出ていった。
その後、2人が店の外に出ると……。
ーーグゥウウウウウ。
と、再びお腹が鳴り出したので、
「さ、さぁお金も手に入ったことだし、ご飯を食べに行こっか!」
と、再び顔を真っ赤にしたレナがそう言ってきたので、
「うん、そうだね。俺ももうお腹空いちゃって……」
と、同じく再び顔を真っ赤にした春風もそう言った。
そして、その言葉を聞いて、
「よーし、それじゃあ行くよ!」
と、レナはまた春風の手を掴むと、
「ちょ、ちょっとぉ!」
と、驚く春風を無視して、レナは春風の腕を引っ張りながらその場から歩き出すのだった。




