第99話 「まとめ(?)」と「反省(?)」と……
「レナ・ヒューズ」に関する話でちょっとしたひと騒ぎが起きたが、その後、漸く落ち着いてきたので、
「ま、まぁ取り敢えず、だ」
と、ヴィンセントは「ふぅ」とひと息入れながらそう口を開いた。
その言葉にウィルフレッドをはじめとした周囲が反応すると、
「今までの話から、水音、お前さんのことについては置いといて、『雪村春風』と『レナ・ヒューズ』についてまとめようと思う」
と、ヴィンセントがそう提案してきたので、それに水音は勿論、ウィルフレッドや爽子ら勇者達も、
『わかりました』
と、コクリと頷いた。
その後、
「そんじゃあ、まずは『雪村春風』についてだな」
と、ヴィンセントがそう言ってきたので、それに周囲が真面目な表情になると、
「確証はねぇが、自身を『勇者召喚に巻き込まれた者』と名乗った雪村春風は実は何らかの『固有職能』を持つ『固有職保持者』で、その背後にはお前さんら勇者達の故郷『地球』の神々がいて、現段階の雪村春風の『目的』が、封印から目覚めた『邪神』に会うことかもしれないということだ」
と、ヴィンセントも真面目な表情でそう言った。
その言葉に爽子ら勇者達はタラリと汗を流していると、
「で、次に『レナ・ヒューズ』だが、こいつが『ハンター』であることは確かだが、『邪神』となんらかの繋がりがあるかもしれないという疑惑があるということだ」
と、ヴィンセントは続けて「レナ・ヒューズ」についてそうまとめたので、その言葉に今度はウィルフレッドとマーガレットがタラリと汗を流した。
そして、
「で、この2人が『外の世界』に出てから数日が経ってるってことは、まだ『邪神』のところに向かってる最中か、最悪の場合はもう既に邂逅を果たしてるか、もしくは何か『別の目的』があってそれを果たす為に動いてるかもしれないということになる」
と、ヴィンセントが真面目な表情のままそう言うと、その場にいる者達全員がゴクリと唾を飲んだ。
すると、
「……とまぁ、ここまで言ってはみたが」
と、ヴィンセントは「はぁ」と溜め息を吐きながら言うと、
「ぶっちゃけた話、どれも確証もない推測すぎねぇ。今話したのとは別のパターンかもしれねぇし、もしくは仮に雪村春風の背後に『地球の神々』がいても、そいつらが本当に『地球の神々』なのか怪しいところだし、もしかするとその正体はもっと悪い奴で、そいつらが雪村春風を利用して、何か良からぬことを企んでるのかもしれねぇ」
と、ガリガリと頭を掻きながらそう言ったので、それに周囲が「あ、確かに……」と言わんばかりにポカンとすると、
「ま、本当に最悪の場合ってのもあるかもしれねぇから、そこは記憶の片隅に置くとしても……」
と、ヴィンセントはチラリと純輝に視線を向けながらそう言って、
「そんなに心配することはねぇって」
と、最後にニヤッと笑ってそう言った。
その言葉を聞いて、純輝は「あ……」と声をもらすと、
「……そう……ですね。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
と、ヴィンセントに向かって頭を下げながら謝罪し、その後、
「先生に、みんなも、勝手なこと言って、ごめんなさい」
と、爽子やクラスメイト達にも謝罪したので、爽子達も「気にしないで」と純輝を励ました。
それを見て、ウィルフレッドがほっこりとしていると、
「で、ウィルフよう……」
と、ヴィンセントが声をかけてきたので、
「ん? どうしたヴィンス?」
と、ウィルフレッドがそう返事すると、
「今、こうしてこの部屋に結界を張ったとはいえ、さっきまで俺らがしてた話の内容は、絶対に他言無用だからな」
と、ヴィンセントはかなり真剣な表情でそういってきたので、
「む、な、何故だ?」
と、ウィルフレッドが恐る恐るそう尋ねると、
「いや、何故ってお前、確証がないとはいえ、雪村春風に『固有職保持者』の疑惑がかかっちまっただろ。それってつまり、ルーセンティア王国は『悪魔』を世界に放っちまったっつうことだろうが。5柱の神々の命令とはいえ、雪村春風という異分子をこの世界に招いたのはお前達……もっといえばクラりんだ。彼女、このこと知ったらぜってぇショックを受けるだろうぜ」
と、ヴィンセントは呆れ顔でそう答えた。
その答えを聞いて、ウィルフレッドは勿論、爽子ら勇者達までもが「あ!」と今になって気付いたかのような表情になった。
そんな彼らを前に、
「それにクラりんや国民だけじゃねぇ。五神教会……特にジェフリー教主にもぜってぇにこの話を言っちゃいけねぇ。もし奴がこのことを知っちまったら、間違いなく雪村春風は『異端者』として扱われちまうし、もっと最悪の場合、奴らが動くだろうしな。ていうか動くだろうよ」
とヴィンセントがそう話を続けると、
「ん? あの、『奴ら』って誰が動くのですか?」
と、爽子が首を傾げながらそう尋ねてきたので、それにヴィンセントとウィルフレッドが「ん?」と反応すると、
「……異端者討伐部隊『断罪官』。五神教会の『影』とも言える存在で、『異端者は容赦なくぶっ殺す!』を信条にしているヤベェ連中さ。もし奴らに雪村春風のことが知られれば、間違いなく連中はそいつをぶっ殺すだろう」
と、ヴィンセントは更に真剣な表情でそう答え、それに続くように、ウィルフレッドも「うむ」とゆっくりと頷いた。
その言葉を聞いて、爽子達が「そんなぁ!」とショックを受けていると、
「そんな顔すんなって! この結界は完璧なんだしよ! 俺らもだが、お前さんらが不用意に外でこの話をもらしたりしなきゃ、あいつらの耳には入らねぇだろうしよ!」
と、ヴィンセントは「ガッハッハッハ!」と高々に笑いながらそう言ったので、それを聞いた爽子達は、
『で、ですよねぇ』
と、少々ぎこちないが「はは」と笑いながら言った。
その後、
「……ま、この話はここまでにするとしてだ……」
と、ヴィンセントがそう呟くと、
「なぁ、水音」
と、水音に向かってそう声をかけたので、
「は、はい、何ですか?」
と、水音がそう返事すると、
「今までの話を聞いて、お前さんはどうしたいんだ?」
と、ヴィンセントはかなり真面目な口調で、水音に向かってそう尋ねた。




