第98話 「レナ・ヒューズ」について
「恐らくそのレナ・ヒューズって奴は、邪神となんらかの繋がりがあると思う」
と、真面目な表情でウィルフレッドに向かってそう言ったヴィンセント。
そんなヴィンセントの言葉に、
「ま、待ってください! それは、どういう意味ですか!?」
と、大きく目を見開いた爽子が、ヴィンセントに向かってそう尋ねると、
「落ち着いてくれ爽子センセ。今から順を追って説明するからな」
と、ヴィンセントにそう言われてしまい、爽子は「うぐ!」と呻くと、
「わ、わかりました」
と、気持ちを落ち着かせながら引き下がった。
それを見届けると、ヴィンセントは「よし」と頷き、その後、視線をウィルフレッドに戻して話を始める。
「まずはウィルフ、あの話し合いの後、俺達の方で『レナ・ヒューズ』について調べておいたぜ」
「おお、それはありがたい。それで、彼女について何かわかったのか?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、
「レナ・ヒューズ、年齢は17歳。2年前にふらりとフロントラルに現れて、そこでハンターになっている。因みに、現在のハンターの階級は『銀の2級』だそうだ」
と、ヴィンセントは「レナ・ヒューズ」についてそう答えた。
その答えにウィルフレッドが「そうか……」と呟くと、
「あの、『フロントラル』とか『ハンター』とか、『階級』というのは……?」
と、純輝が恐る恐る手を上げながらそう尋ねてきたので、
「む? おお、そうか! まだその辺りについては教わってなかったか!」
と、ウィルフレッドは純輝の質問にハッとなると、最後に「すまない」と謝罪して、
「まず、『フロントラル』だが、正式名称は『中立都市フロントラル』と言って、我々がいる『ルーセンティア王国』とヴィンスの『ストロザイア帝国』の、丁度中間に位置する大きな都市で、ここと『ストロザイア帝国』、そして幾つかの小国にも属さない、まさに『中立』を謳っていると言ってもいい」
と、まずは『フロントラル』について説明した。
その説明を聞いて、爽子ら勇者達が「おお……」と歓声をあげると、
「そして、『ハンター』についてだが、『ハンター』とは報酬と引き換えに様々な仕事をする者達の総称で、魔物の討伐から要人の護衛と、様々な仕事が存在している。また、そんなハンター達は「ハンターギルド」という組織に所属しており、そこで彼らは実力に応じた『階級』を与えられる。といっても、最初は1番下の『銅の3級』から始まり、実力が認められることによって『銅の2級』『銅の1級』『銀の3級』『銀の2級』『銀の1級』『金の3級』『金の2級』『金の1級』、そして最高位の『白金級』と上がっていくのだ」
と、ウィルフレッドは「ハンター」についてそう説明した。
そして、それに続くように、
「因みに……」
と、ヴィンセントがそう言うと、自身の懐から見覚えのある1枚のカードを取り出したので、
「あ! それって確か、レナ・ヒューズさんが持ってた……!」
と、それを見た爽子がそう口を開くと、
「そう、『ハンター』の証、『ライセンス』だ」
と、ヴィンセントはニヤリとしながらそう言った。
そんな彼の言葉を聞いて、爽子ら勇者達は再び「おお」と歓声をあげると、
「……って、あれ? ヴィンセント皇帝陛下がそれを持ってるということは……」
と、「おや?」となった爽子がそう尋ねると、
「そう、俺も『ハンター』をやってる。階級は『白金級』な」
と、ヴィンセントはまたニヤリとしながらそう答えた。
その答えを聞いて、
『えええええええっ!?』
と、爽子ら勇者達が驚きに満ちた叫びをあげると、
「もっと言うと、ストロザイアの皇族達は皆『ハンター』をやっててな、俺以外にも妻……皇妃のキャロラインに、息子と娘、そしてもう1人の娘エレクトラも含まれている」
と、ヴィンセントはついでのようにそう言ったので、
『な、なんだってぇえええええええ!?』
と、爽子ら勇者達はショックを受け、
「フッフッフ……」
と、ヴィンセントは不敵な笑みを浮かべた。
すると、
「……は! すまない、話が逸れてしまった」
と、ウィルフレッドはそう謝罪すると、
「ヴィンス、続きを聞かせてくれ」
と、ヴィンセントに向かってそうお願いしたので、それにヴィンセントが「あいよ」と返事すると、
「で、このレナ・ヒューズって奴は、主に魔物の討伐を中心に活動していてな、10代と若いが実力はかなりのもので、幾つもの『レギオン』から勧誘を受けてるんだが、全て断っているそうだ。ああ、因みに、『レギオン』っていうのは、複数のハンターが組むチームのことだ」
と、「レナ・ヒューズ」について説明を続けた。ついでにハンターのチームである「レギオン」についてもだ。
その説明を聞いて、爽子ら勇者達からまた「おお」と歓声があがると、
「それだけじゃねぇ。このレナ・ヒューズ、どうもあまり他人に対して心を開かないみてぇでな、一応複数人で仕事にあたった時はその人達と共にキチンと仕事をしていたが、それでも他人に対して一定の距離をおいてるみてぇなんだ。そしてこいつは、ハンターになってから幾つも仕事をこなしてはいるが、どういう訳かルーセンティア王国でその国関連の仕事はしないんだわ。それ故に、こいつルーセンティア王国内で見たっつう情報が入ってこないんだわ」
と、ヴィンセントは更にそう説明した。
その説明を聞いて、
「そんな彼女が、何故この国に……というか王城内に現れたのだ?」
と、ウィルフレッドがタラリと汗を流しながらヴィンセントに向かってそう尋ねると、
「さぁな。詳しい事情とかは、本人に直接聞くしかないだろうよ。だがな、さっきも言ったように俺はこいつが、『邪神』となんらかの繋がりがあるに思えるんだ。でなきゃ、ここに不法侵入しようなんてまずはしないだろう」
と、ヴィンセントは難しい表情でそう答えたので、それにウィルフレッドが「そ、そうか……」と呟くと、
「あ、あのぉ……」
と、祈が恐る恐る手を上げたので、
「ん? どうした時雨?」
と、爽子がそう尋ねると、
「な、なんか今、『不法侵入』っていう不吉な単語が聞こえたような……」
と、祈は恐る恐るそう返事したので、
『あ……』
と、ウィルフレッドやヴィンセントだけでなく、爽子、水音、歩夢、美羽、純輝、煌良、優までもがそう声をもらしたので、
「え、何? 何ですか皆さんのその反応は……?」
と、今度は祭がそう口を開いたので、ウィルフレッドやヴィンセント、そして爽子達はお互い顔を見合わせると、
「あー、その。実はだな……」
と、ウィルフレッドが申し訳なさそうな表情で、「勇者召喚」が行われたあの日、一般人は王城に入るのを禁止にしていたにも関わらず、何故かレナ・ヒューズがその場にいたので、実は彼女は不法侵入してきたのではないかという結論に至った時のことを、祈だけでなく他のクラスメイト達にも話した。
その話を聞いた後、
『……そ』
『ん?』
『それを先に教えてくださぁあああああああいっ!』
と、彼女達の怒鳴り声が響き渡った。




