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20話 実技の授業


 メリックの課題の翌日。

 俺は実技の授業に参加していた。


 今回はダンジョンに潜るという授業ではない。


 実技の授業にもいくつか種類があり、ダンジョンに行く授業もあれば学校の施設を用いて魔法を使うという授業もある。

 今日は後者の方だった。


 2クラス合同の授業であり、生徒同士が二人組を作って魔法で模擬戦をする。

 怪我をしないようにある程度の手加減はするのが暗黙の了解だ。


 万が一怪我をしてもすぐに医務室で治療できるし、生徒の中には治癒系の魔法を収めている人もいるから安全面で問題はない。


 俺は今まで魔法を使えなかった。

 だからこうした実技に参加できずにただ端の方で指をくわえてみているだけだった。


 だが今はもう違う。

 ついに魔法が使えるようになった俺は大手を振って実技に参加できるのだ。



「というわけで今日から俺も実技の方にでるけど、なんかみんな距離遠くない?」



「そ、そんなことないよ」

「これくらいがふつうだって」

「そうそう。レイクラフト君は初参加だからわからないかもしれなけど、みんなだいたいこんな感じの距離だって」



 顔を引きつらせながら俺から一定の距離をとっているクラスメイト達。


 そう。

 ようやく実技に出られると意気込んで参加したはいいものの、俺はクラスメイト達から物理的に距離を置かれていた。

 クラスメイト達の集団から遠巻きにされている。


「いや絶対おかしいでしょ。そもそもそっちは固まっているじゃん。ぜんぜん離れていないが」


「ま、まあまあ。別にいいじゃん」

「そうだよ深く考えんなって」

「別にお前と模擬戦したくないってわけじゃないからさ」

「ば、ばかお前!」


 要らないことを呟いた生徒に他の生徒から叱責が飛ぶ。



「あ、やっぱりそうなのか」


「あー。悪いな、アル。そりゃお前とジェイクの決闘みたらな……」


 ローランドが集団から出てそう説明してくれる。


「お前の空間魔法は威力が強すぎるんだよ。模擬戦なんてしたら絶対に死ぬわ」


「失敬な。まだ誰も殺してないぞ」


「まだ……?」


「揚げ足をとるなよ。きちんと殺さないように直撃を避けて放つに決まってるだろ」


「直撃したらどうなるんだ?」


「え? まあそりゃ……死ぬけど」


 

 生徒たちの集団が更に距離を取った。



「いやいや待ってくれ。お前らの魔法でも直撃したら死ぬような魔法はあるだろ。俺だけその扱いはおかしい」


「確かに俺らが使える魔法の中には危ない奴もあるけどさ、そういうのは普通使わないで模擬戦するんだよ。空間魔法にはそういう危険じゃない魔法っていうのはあるのか?」


「あるにはあるぞ」


「そ、そうか。よかった」


 ホッとローランドが安心して一息つく。



「そうだよね。神級魔法と言ったって、全部があんなに強いわけないよね」

「決闘で使った奴が一番強い魔法だったってことか」

「ごめんね、レイクラフト君。悪いことしちゃって」

 

 遠巻きにしていたクラスメイト達が近づいてくる。


「それで、使っても危険じゃない魔法っていうのはなんなんだ?」


「一つは空間固定ってやつだな。ていうかこれについてはローランドには一昨日も説明しただろ」


「悪い。決闘の時の印象が強くて忘れてた」


「まったく……」


 呆れながらも、クラスメイト達に空間固定について説明する。


「ジェイクの炎龍を防いだのはこれのおかげか」


「上に乗ることもできるんなら空中を移動することもできるよな」


「水の上とかも歩けそうね。応用力の高い便利な魔法じゃない」


 彼らが空間固定について考察していると、ローランドが尋ねる。


「これ以外にはあるのか?」


「ああ。空間移動っていう魔法がある」


 これはダンジョンの下層から抜け出した時に使ったものだ。

 一度行った場所や目で見えている場所に移動することができる。


 空間移動について説明すると、再度クラスメイト達はそれについて意見を交わし始めた。


「防御系と移動系の魔法か。なんか攻撃系の安全な魔法ってのはあるのか? むやみに物を破壊しない、威力の調整がきく魔法とか」


「ないよ」


「え?」


「ない。これ以外の魔法は全部威力の高い攻撃系の魔法だよ。一番威力低い奴だと、これかな」


 俺は人のいない上へと向けて空間射出を行う。


 どごおおおおおん、という轟音と共に空間は高速で放たれた。

 空間固定で壁を作りみんなを衝撃から守ることは忘れずに行う。

 

 だが轟音や衝撃によって出た強風はみんなが感じることになった。


「……いまのが、一番強い攻撃?」


「違う違う。一番弱い攻撃」


「あはは。そうか。おーいみんな。今のが一番弱いらしいぞ」


 乾いた笑顔をしてローランドは生徒たちに告げる。



「「「…………」」」



 みんなは無言で後退し、彼らの距離が最初の頃より遠くなった。




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