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77.ストレングスポーション作製

「エドガー、もし急ぎでなければ、後で魔術剣士団の処まで届けに行ってもいいが。どうする?」


 スレイはカウンターに置かれた小鬼王(ゴブリンキング)の角を手に取って席を立つと、エドガーに提案した。

 作業には時間がかかる。このまま待たせておくのも忍びないと思った。丁度エリアもロイドと一緒に散歩に出かけていて、応対する相手が居ない。


「……スレイ殿、いいのかな? もちろん私としてはそうして貰えると助かるが」

「隊長なんだろ。忙しいんじゃないのか? ……こんな街外れのアトリエまで足を運んで貰って、さらに待たせるっていうのも悪いからな」

「しかし、安値で請け負わせておいて、さらに一手間かけさせるというのもどうなのだろうか」

「それについては、俺が魔術剣士団の処に足を運ぶきっかけになるかなって。別に配送料を請求するつもりはないから安心してくれ」


 スレイの提案に対し、エドガーは顎に手を当てて少し迷った素振りを見せていたが、やがて口を開いた。


「……ふむ、来訪のきっかけに都合が良いという事であれば。スレイ殿は魔術剣士団の兵舎のある場所は知っているのかな」

「確か南門の近くにある建物だったよな。ここからは少し離れているけど、それについては別に構わないさ」

「ああ、それであっているよ。……では、そうさせて貰おう。少し待ってくれ。用意していた空き瓶を出そう」


 エドガーは顎に当てていた手を離すと、虚空に向けて伸ばした。


『異界の門』


 今のエドガーの台詞は亜空間部屋(サブスペースルーム)の合言葉のようだった。彼は魔術Bランク以上の使い手という事になる。

 亜空間に手を差し込むと、五本のポーションの空瓶を取り出してカウンターに並べた。

 それから内ポケットから革財布を取り出し、六枚の銀貨をカウンターにある木彫りの硬貨受けに乗せた。


「……エドガー、銀貨が一枚多いんだが」

「届けてもらう為の手間代、それと領収書の発行費用とでもしておこうかな。……それではスレイ殿、よろしく頼むよ。安値で請け負わせて申し訳ないね。今度機会があれば私に奢らせてくれ」


 エドガーは爽やかな笑顔を浮かべると、身をひるがえし玄関から去っていった。

 それを見送った後、スレイは天井を仰ぎ溜息をついた。


(配送料は要らないって言ったばかりなんだがな。余計な気遣いってもんだ。……とりあえず、二度目の依頼を済ませちまうか)


     ◇


 スレイはアトリエに入り、受け取った小鬼王(ゴブリンキング)の角を作業台に置くと、金槌を手に取って何度か殴打した。

 小気味よい音と共に角は粉々に砕けて数多の小粒の欠片と姿を変える。

 次に小粒となった角の欠片を、白い乳鉢に入れた後、水を加えて乳棒ですり潰す。

 五分。一〇分。二〇分。乳鉢の中で、角の欠片はペースト状の物体へと変貌していく。 


 そして、先ほどエドガーから預かってた五本の空瓶に均等に入れ、その上から水を注ぐ。

 一見するとただの濁った水だが、これがストレングスポーションの変成媒体となるものである。


(……ストレングスポーションを作るのは久々だな。俺も今度予備としてストックしておくか)


 そのような事を考えつつ、スレイはすり潰した角の入ったポーション瓶に向けて手を翳した。


『変成術。角の粉末・水──ストレングスポーション』


 発声する事により、変成元となる媒体と変成後の物質のイメージを固定させながら、スレイは変成術を発動させた。

 一瞬の後、ポーション瓶の中にある角の粉末で濁った液体が、澄みきった薄紫色の液体に変化していた。


「……よし。上手くいったな」


 ポーション瓶を一つ一つ手に取りながら鑑定を行い、成果物に間違いがない事を確認すると、スレイは五本のポーションを手に玄関に戻った。

 カウンターに備え付けてある羽根ペンを手に取ると、用意してあった細い紐の付いた白いラベルにペンを走らせた。


 『名称:ストレングスポーション 品質:Bランク』


 このように書き記した後、アトリエに戻り、ポーション瓶のネック部分に細い紐を括り付けた。

 これで一応の完成である。


(……っと、ポーションの色はこれでよかったのかな。まあ最悪、色替えにもう一度変成をかければいいか)


 スレイは肝心な事を聞き忘れていた事を思い出した。詰めが甘かったかもしれない。

 その時、玄関からノックの音が聞こえた。


「ただいま。スレイさん」


 少し遅れて声と共に扉が開くと、エリアとロイドが姿を見せた。


「お帰り、エリア。少し歩き疲れたって顔だな」

「遅くなりました。ロイドがかなり歩きたがっていたので。……あら、スレイさん。その紫色のポーションは……もしかしてお仕事があったのですか」

「ああ、今さっき終わった処だ。ルーンマウンテンの山頂で会ったエドガーが来てたんだ。覚えているかな」


 スレイに問いかけられ、エリアは少し思い出すような仕草をした。


「蒼い髪をした魔術剣士団の方でしたよね。……確かスレイさん、スカウトを受けていたような」

「ああ、剣と魔術の修行にいいかもしれないな。明日、依頼のポーションを届けるついでに話を聞いてみようと思う」




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