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69.錬金術協会への報告書

 初の依頼人である、クラリッサへのマジックポーション引き渡しが終わってから翌日の事。スレイは錬金術協会へ出かける事にした。

 借りていたルーンマウンテンの魔素(エーテル)のポイントが記された地図の返却と、偶然発見した魔素(エーテル)の源泉の存在を伝える為である。初依頼完了の報告もついでに行おうと思っていた。

 もう一度魔素(エーテル)の源泉に出向き採取するという選択肢もなくはなかったが、しばらくはマジックポーション作りは控えようと思った。高騰について改めて調査をしたいと思っていたからである。


 エリアには街はずれのアトリエの店番を任せる事にした。彼女は爆ぜる疾風(ブラストウィンド)でも対外的な顔役を務めていた。もし来訪客が居ても彼女なら上手に対応してくれるだろう。

 そして彼女の傍らには絶対的な守護者であるロイドが居る。エリアが危険に晒される事は万が一にもない。


「私は店番がてら、ロイドのブラッシングをしますね。……ロイド、こっちに来てください」


 エリアに声をかけられると、ロイドはエリアに駆け寄って目の前に座った。

 彼女が手にしたブラシで、これから何が行われるか分かっているようである。ロイドはブラッシング自体が大好きだが、特にエリアにして貰うととても喜ぶ。

 気持ちはわからなくはない。そしてスレイが居る間は極度に甘えた姿を見せないらしいので、さっさと出かけようと思った。

 ロイドはルーンマウンテンの出来事の一番の功労者である。コニー少年の捜索。新たな魔素(エーテル)源泉発見。獣巨人(トロール)の共同撃破。

 スレイからはお礼が出来ていないが、出来る限り良い思いをさせてあげたいと思った。


     ◇


「……スレイ君が、この魔素(エーテル)の源泉のポイントを?」


 錬金術協会の応接室。

 二枚の書類を手に取った錬金術協会幹部のアルバートに問いかけられると、スレイは頷いた。

 一枚は新たな魔素(エーテル)のポイントが記された錬金術協会の地図。

 そしてもう一枚はクラリッサから引き受けたマジックポーションの依頼の報告書だった。

 忙しくしているであろう彼に、街外れのアトリエまで足を運ばせるのも悪いと思ったので、依頼報告書を持参してきた次第である。


「ああ。……山頂で行方不明者が出てな。捜索の最中、偶然見つける事が出来た」

「その行方不明者は?」

「コニーという少年だったんだが、無事だったよ。探していた子が偶然魔素(エーテル)の源泉の処に迷い込んでいた。魔素(エーテル)を摂取し中毒で気絶していたが、あの状況だと無暗に歩き回られるよりかえって良かったかもしれない。その点も含めて幸運だった」

「それは何より。……流石、元Sランクの冒険者と言った処か」


 アルバートは一拍置き、さらに続ける。


「このポイントは錬金術協会の方で改めて調査隊を送り確認しよう。君のお手柄だ。魔素(エーテル)の源泉を確認出来次第、協会から謝礼を送りたい」

「謝礼はいらないよ。そこが安全に魔素(エーテル)を採取できるポイントとは限らない。なんせ獣巨人(トロール)に遭遇したからな。……単体だったから難なく処理出来たが、あの周辺は安全とは言い難いかもしれない」


 急斜面から滑り降りた場所にあるポイントである。まず魔素(エーテル)の採取がかなり面倒かもしれない。スレイ達はクラリッサの召喚するシルフに頼る事が出来たのが大きかった。

 あの斜面を下らずに辿り着く事も出来るとは思うが、そちら側は凶悪な怪物が潜んでいる可能性もある。


「了解した。あの山も探索し尽くされた訳ではない。登山道は定期的に神聖術による退魔結界が張り巡らされている為、比較的安全だが、少し踏み外せば凶悪な怪物が潜んでいる」


 どうやら安全なのは登山道だけであり、未踏地域は安全とは言い難いらしい。

 この分だと錬金術協会に借りた地図に乗っている、青丸のついた魔素(エーテル)の採取ポイントも安全ではないのかもしれない。

 受付嬢のイライザからはそういった話は一切聞かなかった。彼女らしいといえば彼女らしい。


「それと、もう一枚は依頼の報告書。ようやく初依頼が終わったよ」

「ああ。目に通させて貰った。……マジックポーションか。魔素(エーテル)を採取という事はそうだろうな」

「マジックポーションって今、高いんだな。アルバートさんは原因を知らないか?」

「色々あっての事だ。私からは一切言及出来ない。気になるのであれば自ら原因を調べ、そして判断して欲しい」


 アルバートは表情一つ変える事なく淡々と告げた。彼は錬金術協会の幹部であり監査役でもある。

 全ての錬金術協会員に対し、極力中立的な立場を求められるはずで、特定の協会員にとって不利になるような情報を迂闊に呟くことは出来ないという事だろう。


「わかった。……そういえば依頼はどれくらいの頻度でこなせばいいのかな。今の処、その一件だけで、あまり仕事が出来ていないけど」

「実態がゼロではまずいが基本的には自由だ。仮に月一回という今のペースでも、トラブルなく仕事をこなしてくれれば問題はない」


 そのようにアルバートに言われ、スレイは安堵した。

 この言い方からすると、今月の最低限のノルマはこの一件で達成できたという事だろう。




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