第四十八話 また戦争が……
■リズ視点■
無事にお医者様がかけつけて、体の隅々まで調べている間、私は部屋の外で静かに待っていた。すると、そこにアルフレッド様が、血相を変えて飛んできた。
「アルフレッド様、来てくださったんですね!」
「当然だ! それで、セリアの具合は!?」
「今診てもらっているところです。恐らくですけど、あれを見てしまったんじゃないかと……」
「あれ……もしかして、予知かい?」
アルフレッド様の問いに、わたしは小さく頷いてみせる。
「突然フラッとして、そのまま支えていたら、突然苦しみだして……動かなくなりました。あれは、よほど酷い予知を見てしまった反応とみて、間違いないと思います……」
「そうか……くそっ、叶うのなら、僕が全ての痛みを引き受けるというのに……」
何も出来ないもどかしさを感じること一時間。このために来てくれたおじいちゃんの先生は、難しい表情を浮かべながら、部屋の中から出てきた。
「セリアの容体は?」
「おや、アルフレッド様。ご安心ください、命に別状はありません。体もすこぶる健康です。しかし……意識が戻る気配がまるでありません。まるで、どこかに沈んでしまったかのようです」
「そんな……それじゃあ、セリア様はもう目覚めないのですか!?」
「それは私には何とも……何かきっかけがあれば、あるいは……少なくとも、現代の医療技術や医療魔法では、どうにもできないことです」
目覚めないだなんて……そんなの、信じられないよ。だって、前にセリア様から聞いたことがあるのだけど、セリア様は予知で意識を失ったことはあると言っていた。なら、今回だって、きっと目覚めてくれるはず!
「くそ、どうしてこんなことに……目覚められなくなるほどの予知……もしかしたら、その内容に何か手掛かりがあるかもしれない。だが、一体何の予知を見たのだろうか……?」
「そういえば、意識を失う前に、セリア様が言っていたことがあるんです」
「本当かい? なんて言ってたか、ゆっくりでいいから思い出してほしい」
「とめ、あかいつき、せ、そう……これらのことを言っていました」
「とめ……止め。赤い月。せ、そう……まさか、戦争か!?」
「戦争の予知をしたということですか!? そんな予知をしたら、セリア様への反動が……!」
「あまり考えたくはないが……それのせいで、セリアの精神は深く傷つき、意識の深層へと落ちてしまったのかもしれない」
どうして、セリア様がそんな目に合わないといけないの!? なんとかして、セリア様を助けないと! でも、一体どうやって……?
「リズ嬢、誠に申し訳ないのだが、今の情報を父上に伝え、緊急会議を開かなくてはいけない。だから、その間セリアのことをお願いできないかな?」
「アルフレッド様は、一緒にいてくれないのですか?」
「そうしたいのは山々なんだが、もしかしたら戦争がまた始まってしまうかもしれない以上、王家として対処をしないといけない。君が近くにいてくれれば、安心して任せられるのだが……」
「なるほど……わかりました。お任せください!」
人間には、役割というものがある。アルフレッド様にとっては、王子様として国と民のために頑張る、わたしは使用人兼友人として、セリア様の看病を頑張る。これが今出来る、最善の手だよね。
とはいっても、先程考えていた、どうやって意識を引っ張り上げるのかについては、明確な回答は手に入っていないんだよね……とにかく、看病をしながら呼びかけを続けてみよう。そうすれば、きっといつかセリア様の意識に届いて、起きてくれるよね!
****
■アルフレッド視点■
「父上、大変です!!」
今日は書斎で書類仕事をしていると聞いていた僕は、急いで父上の書斎へとやってきた。大きなテーブルの上には、どう頑張っても片付けきれないような、書類の山がある。
「やっほ~アルフレッド! 今日はどうし……ふむ、お気楽にやっているような雰囲気ではなさそうだな」
「はい。さきほど、セリアが予知を見たようでして。その内容の一部を知れたのですが、恐ろしいものでした」
「申してみよ」
「彼女が言っていたのは、止めて、赤い月、戦争……以上の三つです。おそらく、薄れる意識の中、伝えたいことをとにかく伝えようとして、こうなったのでしょう」
赤い月というのは、何十年かに一度、真っ赤な月が浮かぶ日がある。理由は解明されておらず、赤い月の日は不幸が訪れると言い伝えられ、恐れられている。
実際に、赤い月が何かをしたという記録はないが、とても不気味なものだから、恐れるのも無理はない。
「戦争? まさか、カルネシアラ国がまた戦争を? しかし、彼らとは和平条約を結んだ……それを破るとなれば、他の国からも警戒され、後々大変なことになるだろうに」
「情報網によると、既にカルネシアラ国の王家の信頼は失墜し、多くの民の反感を買っているようです。このまま放っておけば、反乱が起きてもおかしくない状況のようです」
「それは余も聞き及んでいる。今回の一件とは、無関係とは言えぬだろうな。なんにせよ、彼女の言葉をそのまま受け取るとなると、最悪な未来が訪れかねん。そうならぬように、対処をせねばならん」
「その通りですね。では、まずは民の安全からですね」
「赤い月まで猶予はあるから、その間に市民の避難誘導、武器や防具、保存の効く食事の用意だ。だが、これらは敵に悟られないように、全て隠密に行う」
「隣国に助けを要求したりはしないのですか?」
「うむ。おそらく、奴らは準備が出来次第、奇襲を仕掛ける形で責めてくるであろう。なのに、我々が支援を要求すれば、向こうは警戒を強めて、さらなる力を準備する可能性がある。このことを他国が知った結果、便乗して攻められる可能性も否定しきれんしな」
確かにその通りだ。カルネシアラ国以外の隣国とは、争いこそないものの、友好的かと言われると疑問が残るような関係だ。
「色々言ったが、まだ我々の知らない情報があるやもしれん。しかし、いかんせん状況を見た本人の意識が戻らなければ、情報の集めようがない。余達は彼女の回復を祈りながら、出来ることからやるしかあるまい」
「そうですね。僕も国のため、民のために身を粉にして働く所存です」
「うむ。せっかく楽しい時間を過ごしたというのに、またすぐに激務に追われるのは申し訳なく思うが、よろしく頼むぞ」
「お気になさらず。デートも結婚も、全てを終わらせてからゆっくり考えることにします」
「……? アルフレッド、今結婚と申したか? 余の知らぬ間に、随分と仲が進展したのか?」
「正式にセリアと恋仲になりました。本当はもっとゆっくりお話したいのですが、それはまた後程」
本当は、父上にセリアのことを報告したいが、今はそのようなことをしている場合じゃない。僕は王子としての仕事をしっかりと果たさなければならないのだから。
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