第四十六話 あなたと一緒にいるだけで
一生の思い出に残る初デートを済ませた私達は、夕焼けに照らされるお城に無事に戻ってくると、いつものように、たくさんの使用人や兵士に出迎えられた。
「みんな、今日も出迎えありがとう。僕達がいない間に、なにかあったかい?」
「特に異常はありません!」
「ならよかった。これもみんなが真面目に働いてくれているおかげだね。僕はセリアを部屋まで送っていくから、各自持ち場に戻ってくれて構わないよ」
アルフレッドの指示で、各自散り散りになっていく中、ヒソヒソと話す声が聞こえてきた。
「ねえねえ、セリア様のことを呼び捨てで呼んでたわよね?」
「もしかして、デートが凄くうまくいって、進展したんじゃない?」
「なるほど、絶対にそれだわ……! 今日はとっても素敵な日ね……!」
女性の使用人が話す内容は、とても好意的で、かつ的確に見抜いているものだった。
彼女達以外にも、デートが上手く行ったことに気づいたり、それを喜ぶ方々の声が多かった。
「それじゃあ、部屋まで送っていくよ」
「はい、よろしくお願いいたしますわ」
いつものようにエスコートをされながら、私は部屋に向かって歩き出す。
その途中で、いつも中庭が見える廊下を通るのだけど、いつもは素通りすることが多い。しかし、今日はその中庭をジッと見つめながら、足を止めた。
「どうかしたのかい?」
「その、もう少しだけデートを楽しみたいと思いまして……ワガママなのは重々承知ですが、この素敵な日を終わらせたくなくて」
「ああ、僕も同じ気持ちだよ」
嬉しそうに笑うアルフレッドにつられて、私も笑顔になりながら中庭に向かい、ゆっくりと散歩を始める。
今日のデートの間で、アルフレッドとはたくさんの言葉を交わしたからか、散歩中に言葉が無かったが、私にはそれでよかった。ただ静かに、アルフレッドの横を歩く。同じ時間、同じ場所を静かに共有する幸せ。私には、それだけで十分満足だ。
でも、それがアルフレッドにとって良いものなのかは、私にはわからない。もしかしたら、もっと会話を楽しみたい可能性だってある。
「アルフレッド、さっきからずっと静かに散歩しているだけですが、これでよろしいのでしょうか?」
「僕は、君といられるだけで幸せだからね。もしかして、退屈だったかな?」
「いいえ、そんなことはございませんわ。私も、あなたとこうしていられるだけで、幸せですから。ただ、私は良くても、あなたが嫌に感じていたらと思ったのです」
「セリアは優しいね。そんなことを言われたら、我慢できなくなっちゃうじゃないか」
「きゃっ! きゅ、急に抱きしめないでくださいまし……!」
アルフレッドは、とても嬉しそうにニコニコしながら、私のことをギュッと抱きしめた。
抱きしめるのはいいけど、急にされるとビックリしてしまうし、誰かに見られたら恥ずかしいから、少々自重してもらいたい。
「のんびりしていたら、空が暗くなってきたね。このまま星を眺めていてもいいけど……」
「これ以上は明日に響いてしまいそうですし、星を眺めるのはまた今度にしましょう」
「そうだね。それじゃあ、次のデートは静かな場所で、天体観測にしようか!」
「まあ、とても素敵ですわね。ぜひお願いしますわ」
とても幸せな約束を交わしてから、私は今度こそ自室へと歩きだす。中庭から自室まではさほど距離がないため、数分もしないうちに部屋の前についてしまった。
……これで、本当に素敵な一日が終わってしまうのね。また明日会えるはずなのに、このままアルフレッドとお別れするのが、寂しくて仕方がない。
「セリア、今日はとても楽しかったよ。本当にありがとう」
「こちらこそありがとうございました。今日のことは、一生忘れませんわ。それで、その……お別れの前に、もう一度……あの……」
私は言葉を詰まらせながら周りを確認する。そこには、私達以外に誰もいない。
これは絶好の機会。そう思った私は、アルフレッドに顔を向けながらギュッと目を瞑ると、少しだけつま先立ちをした。
「セリア……」
「んっ……」
私の糸を汲み取ってくれたアルフレッドは、そのまま私に優しくキスをしてくれた。
最初のキスは、ただ驚くばかりでよくわからなかったが、今回は自分からせがんだから、少しだけ余裕があった。とはいっても、ドキドキしすぎて、アルフレッドの唇が柔らかかったくらいしかわからなかったけど……。
「私……幸せですわ」
「それはなによりだよ。じゃあ……おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
強い名残惜しさを感じながらも、私はアルフレッドの姿が見えなくなるまでお見送りをした。
楽しくて幸せな一日は、こうして幕を閉じた。またこんな素敵な日が訪れると良いなと、だらしない笑顔で考えながら部屋に入ると、元気な声にお出迎えされた。
「おかえりなさ~い!」
「り、リズ?? どうして私の部屋に??」
「お仕事が終わったので、お出迎えをしようと思って!」
そ、そうだったのね……それは嬉しいのだけど、今絶対にだらしない顔をしていたところを見られたわよね?
「それで、デートの方はどうでしたか? にやにや」
「どうって……とても楽しかったですわ。機会があれば、またアルフレッドとお出かけしたいです」
「えっ!? 今呼び捨てでしたよね!? あれ、思った以上に進展してる!? セリア様、何があったのか、洗い浚い吐いてもらいますよ~!」
「え、えっと? お手柔らかに……?」
これは、下手したら眠れないのではないかと覚悟していると、唐突に私は、今までに感じたことがないくらい、強烈な眩暈に襲われた。
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