第三十九話 私にやれること
あれから数日後、私は自室のバルコニーのテーブルに突っ伏しながら、大きな溜息を吐いた。
「セリア様、お行儀悪いですよ?」
「仕方ないではありませんか。一緒に魔法の練習をして以来、アルフレッド様に会えてないのですから……」
詳しくは聞かされていないが、今色々と大変なようで、アルフレッド様に全然会えていない。そのせいで、思った以上に体調が崩れてしまい、気力もわかない。
そんな私のことを、リズがお茶を淹れながら、悲しそうな顔で見てくる。
「私も、なにか力になれれればいいですのに……」
「セリア様の力と言えば、やはりあれですよね。ほら、予知の力!」
「最近発動しませんのよね……そうだ。大変な理由って、何か知っておりますか?」
「たしか……あ、いえ。なんでも」
「何を隠してるの? 言いなさい。言わないと……」
私はニヤリと笑いながら、リズに手が届くところにまで移動すると、親指と人差し指を使って、リズのほっぺを潰して、ひよこの口みたいにしてあげた。
「ふにゅ~!」
「ぴよぴよ攻撃が嫌なら、話しなさい」
「はなしまじゅ~!」
涙目になりながらも、確かにそう言ったことを確認した私は、リズを解放した。
リズのほっぺ、もちもちで触り心地が良かったわね……今度、お願いしたら触らせてくれるかしら?
「使用人が、コソコソ話していたのを偶然聞いちゃったんです。実は、わたし達が知らないうちに、例の人達に、何度もお城が襲撃されていたみたいで……」
「なんですって!? 予知は見えなかったのに……!」
どうしてこういう時に役に立ってくれないの!? 予知であった内容の痛みを受けるという、重い制約を背負わされているのだから、少しくらい予知が自由に使えてもいいじゃない! そうすれば、不幸が確定したとしても、事前に準備が出来たのに!
「アルフレッド様のことですから、心配をかけないように、伏せておいたのでしょう。ちなみに、もう鎮圧済みみたいです」
「そう……それはよかったですが……王家は国と民のために頑張り、守っていたのに、命を狙われるなんて、あんまりだわ」
これが、私の家族のような極悪人なら、情状酌量の余地はないが、アルフレッド様もフェルト殿下も、悪いことはしていないから、なおさら不条理さに腹が立つ。
悲しみに押しつぶされて、誰かのせいにしないと生きていけない気持ちは、百歩譲ってわからなくもないけど……だからといって、やって良いことと悪いことがあるし、ちゃんと状況を把握しないといけない。
……私に、そんなことを言える資格なんてない? それは言わないお約束よ。
「だから忙しいのですね……何かお手伝いをしたいのですが……この国で生活するようになってから、一度も公務をしておりませんのよね……」
「セリア様、いつも本を読んで過ごしていますものね」
「なんだか、それだと穀潰しみたいだから、やめてほしいですわ……」
「あ、ごめんなさい! そんなつもりじゃ……!」
リズが悪気があって何かを言うタイプじゃないのは、よくわかっている。だからこそ、刺さるというか……あまりにも的を得ている言葉だもの。
「とは言っても、よその国の内政のことや、公務のことなんて、私達にはわからないですし……手伝えることなんて、たかが知れているかもしれませんが……」
「なら、別の観点からお役に立ちましょうよ!」
「別の観点?」
「まさに一石二鳥の、抜群のアイディアですよ!」
……なんだろう、聞いて良いような、悪いような……期待半分、不安半分と言ったところかしら。
「なんとかアルフレッド様を捕まえて、イチャイチャすればいいんですよ!」
「い、イチャ!?」
「ほら、セリア様は最近アルフレッド様にお熱じゃないですか。会えなくて体調を崩したり、中庭で腕を組んじゃうくらいには! アルフレッド様も大好きですし、一石二鳥!」
「えぇ!? み、見ておりましたの!?」
「はい、ばっちりと! って、覗きに行ったわけじゃないですよ!? お洗濯をしようと思って通りかかったら、見かけただけですから!」
あ、あんなイチャイチャしているところを見られた……それも、私の唯一のお友達に……な、なんて顔をすればいいかわからない。
「やっぱり、そういう感じなんですか?」
「…………」
私は、耳までトマトみたいに真っ赤にさせ、目を潤ませながら、コクンっと小さく頷いた。
「やっぱり! おめでとうございます! あなたに春が来て、嬉しいです~!」
「ちょ、リズってば! 離れてくださいまし~!」
リズは嬉しそうな表情を浮かべながら、私に頬擦りをしてした。
最初はやめなさいって感じだったが、せっかく喜んでくれているし、良いかなと思うようになった。
「そうだ、今度お祝いとして、お部屋でパーティーをしましょう! パーティーといっても、二人だけの小さなものですけどね!」
「それは嬉しいですが、お仕事は大丈夫ですの?」
「大丈夫ですよ! いつもそれなりに終わるのが早いんで!」
「そうですのね。でも、あんまり結婚とかなんとかは、言わないようにしてくださる?」
「どうしてですか?」
「すぐにはしないということは、おそらく何かしらの事情があるのだわ。それも知らずに、早く結婚させろだなんて、そんなワガママをいうわけにはまいりません」
「あの親子なら、ノリノリでやりそうですけどねぇ」
「そこがポイントですわ。未来に前向きな彼らが、結婚を進めないのは、問題があるから。その問題とは……」
「例の反王家、ですか?」
「おそらくそうかと。反王家の方々がどんなことをするかわからない以上、迂闊に結婚式を挙げるのは難しいのだと思う」
反王家の方々の他にも、きっと戦争で起こった問題は、山積みだろう。私も何とかしたいところだけど、どうすれば……。
「いえ、どうしようって頭を抱えているだけでは、問題は解決しませんわ。私達によくしてくれたこの国のためにも、とにかく即行動! リズ、行きますわよ!」
「はいっ! 愛する人のために、即行動!」
「もうっ、わざわざ言い直す必要はございませんわっ!」
私はリズと一緒に、アポなしで謁見の間に行くと、フェルト殿下は快く通してくれた。
「やっほ~! 可愛い未来の娘とご友人とおしゃべりできるなんて、今日は良い日だね~! それで、何か用かな?」
一瞬だけ、本来の厳格な雰囲気を出してきたフェルト殿下に、思わず怯んでしまいかけたが、負けていられない。ちゃんと話さなきゃ。
「最近、反王家以外にも、戦争のせいで困っていることはありますか?」
「そうだね~。最近、戦争のせいで生活が苦しくなっている人が多いんだ。彼らの生活の支援をしているんだけど、人手が足りないんだよねぇ……」
「では、そこでお手伝いをさせてください! もし予知が発動したら、不幸を最小限に出来るかもしれません。私、この国の力になりたいのです! お願いいたします!」
簡潔にフェルト殿下に簡潔な内容でお願いし、頭を下げると、帰ってきた言葉は……。
「許可しちゃうよ~!」
……急に、体から力が抜けてしまいそうな、気の抜けた返事は勘弁してほしい。
なんにせよ、了承は貰えたということね。これで、ただ本を読んでいるだけの穀潰しにならずに済む!
「いやぁ、助かるよ! それじゃ、指示はアルフレッドに聞いてね~。彼なら、手取り足取り、舐め回すようにおしえてくれるはずさっ」
「若干変態行為が混ざっておりませんでしたか……??」
「気のせい気のせい!それにしても、人の国のことなのに協力してくれるお嫁さんなんて、最高過ぎない? いや、最高だ! ん~、ハッピーって……いいねぇ!」
なんだかんだで、いつも通りのフェルト殿下から、許可を貰うことが出来た。
これで、私もアルフレッド様や国のために頑張れるのね。復讐も大事だけど、すぐにどうにか出来ない以上、出来ることを頑張らないと。
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