第三十三話 戦争はどちらから?
「…………」
アルフレッド様は、なんて答えれば良いのかわからないのか、視線を逸らしながら、頭をかいて誤魔化している。
リズのした質問は、私もとても気になっていた。こんな優しい人達が、本当に戦争なんてするのだろうかと。
「私も知りたいです。よければ、お話くださいませんか?」
「……わかった。わざわざ隠すようなことでもないしね。ただ、それを話すのなら、当事者の方が一番良いはずだ。ちょっと聞いてくるから、ここで待ってて」
そう言うと、アルフレッド様は私達を置いて、どこかへと去っていく。それから数分もしないうちに、アルフレッド様は戻ってきた。
「お待たせ。少しだけ時間があるそうだから、お伺いしてみよう」
「わかりました。リズ、行きますわよ」
「わたしもですか? えっと、わたしの勘違いじゃなければ、ただの田舎者の使用人には、明らかに場違いな気がしますけど……」
「私達の祖国の話でもあるのだから、聞く資格はあるはず。ですよね、アルフレッド様?」
「ああ、もちろんだ」
「そうですか? では、わたしもお供しますね」
アルフレッド様に案内された場所は、私達が今まで一度も訪れたことのない部屋……フェルト殿下の私室だった。
「父上、セリア様とリズ嬢を連れてまいりました」
「はいはい~どうぞ入っちゃって~!」
相変わらず陽気で気が抜ける声に促されて中に入ると、きちっと整頓された部屋と、笑顔のフェルト殿下に出迎えられた。
「やっほ~二人共! 今日も良い天気だねぇ!」
「ごきげんようですわ、フェルト殿下。本日はお時間をいただき、感謝いたします」
「いやいや、気にすることはないよぉ! なにせ、未来の娘とその友人のお願いなら、聞いてあげるのは当然……っと、話の内容があれであるからな。ふざけたように見える態度は控えておこう」
「「……へ?」」
私達の知っているフェルト殿下とは、まるで別人に変身したのではないかと錯覚してしまうくらいの豹変っぷりに、リズと共に間抜けな声を漏らしてしまった。
「本来の父上はこっちなんだよ。いつもは誰でも親しみやすいように、明るい人柄を演じられているんだ」
そ、そうだったの!? てっきり、フェルト殿下はそういう方なのだとばかり……目に見えるものばかりを信じて、本質を見抜こうとしないと、こうなるということね。
「アルフレッドから話は聞いておる。そなた達は、カルネシアラ国との戦争について聞きたいのだったな」
「仰る通りです。私達は、この国に来てから大変良くしていただきました。そんなあなた方が、祖国に戦争を仕掛けたなんて、信じられないのです。なにか、事情がおありだったのですか?」
「ふむ、なるほど。そなた達も含めて、余はカルネシアラ国の人間と何度も話をする機会があったが、皆が口をそろえて我々を悪と決めつけるのだよ」
それはそうだろう。私達カルネシアラ国の人間にとって、ソリアン国の印象は決まっている。野蛮で危険、対話の余地もない国と人間だと、全員が思っているだろう。
「失礼、つい愚痴が出てしまった。先に結論から伝えよう。我々ソリアン国から、カルネシアラ国に戦争はしかけていない」
「それでは、あの戦争は私達が仕掛けたものだということですか?」
「信じられんと思うが、それが事実だ。我々は自己防衛のために、カルネシアラ国と戦争をしていたにすぎない」
「……この国の人達を見てて、もしかしたらとは思っていましたが、いざ聞かされるとやっぱり驚いちゃいますね……」
確かに驚きではあるが、リズと同じように、私ももしかしたらとは思っていたから、言うほど驚きはしていないが……一つ、疑問が残る。
「では、どうして私達はソリアン国が悪だと決めつけ、疑わなかったのでしょう? 国に住む民は、それこそ膨大な人数がおりますわ。なのに、一度もソリアン国が被害者だと仰る方は見ませんでした。それは、本当はそちらが悪いという証明になりませんこと?」
私の情報網が少ないと言われればそれまでかもしれないが、これでも一応王族として、それなりに話を聞いている。でも、どこでもそんな話は聞いたことがない。
「簡単な話だ。そなたの父、モーリス・カルネシアラの力によるものだ」
「お父様の? お言葉ですがフェルト殿下、お父様は力のほとんどを失っていて、大それたことは不可能ですの」
「その力を失った原因が、今君達が陥っている状況なのだよ」
「どういうことですか?」
「父上がカルネシアラ国から連れてきた捕虜を調べた結果、君達カルネシアラ国の人間から、とある魔法が検知された。その魔法というのは、一種の洗脳魔法なんだよ」
洗脳魔法……ま、まさか……!?
「気づいたようだね。そう、君の父君は、その魔法を使って全ての民に、我々への間違った認識を植え付けたんだ」
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