第二十九話 プレゼント開封
「これは、思った以上に酷いな」
爆発現場を見ながら、アルフレッド様は忌々しそうにボソッと呟く。その横顔は、私が自分の破滅の予知で見た時の顔と、同じものだった。
「父上が公務で城を開けているこのタイミングを見計らっての犯行か……?」
「ごめんなさい、私がもう少し投げる位置を考えていれば、こんなことにはなりませんでしたわ」
「いや、むしろあの土壇場の状況で、最小限の被害で収まる手を打って凄いと思うよ」
そうなのかしら? あの時は、もう体が自然と動いていたから、褒められてもあまり実感が沸かない。
「うぅ……あっ、セリア様ぁ~! ご無事でよかったです~!!」
「リズ! あなたも無事でよかった!」
「はい、丁度買い出しに行っていたんです! それで戻って来たら、こんな騒ぎになってて……セリア様は大丈夫なのか、気が気でなかったですっ!」
私の元に走ってきたリズは、涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら、私に力強く抱きついてきた。
かくいう私も、リズの無事が確認できた安心感で、彼女の背中に手を回して、思い切り力を入れていた。
本当に、リズが無事でよかった。ホッとして緊張の糸が切れたのか、何だか一気に疲れが押し寄せてきた。
「あっ、ごめんなさい! まだ体の傷が治りきってないのに……!」
「こんな痛みなんて、あなたと再会できた喜びの前では、かすんでしまいますわ」
「うぅ、セリア様にそんなことを言ってもらえるだなんて、わたしは幸せ者ですぅ~! うえぇぇぇん!!」
ついに本格的に泣きだしてしまったリズをなだめながら、爆発した現場を調べるアルフレッド様に視線を向けた。
「アルフレッド様、なにかわかりましたか?」
「爆発物は、魔法を使ったものだということ。もう一つが、この辺りには犠牲者はいないということかな」
「そうですか、良かった……」
良かった? 私は、アルフレッド様やソリアン国の王家に復讐をしようとしている。彼らのことだから、民の身に何かあったら、深く傷ついて……私に情けない姿を見せるはずだ。
だから、思い通りに行かなくて、悔しいことのはずなのに……自然と口から出てきた言葉は、真逆のものだった。
「報告! 死者も重傷者もゼロ。城への被害も軽微ですが、十七名が爆風に巻き込まれたり、爆風で割れたガラスが当たったといった理由で負傷! 新たな爆発物に関しては、現在見つかっておりません!」
「十七人も被害者が……彼らへの治療と怪我の具合は?」
「既に数名の医者をお招きし、無傷の兵士や使用人と共に治療にあたってもらっております! 怪我の具合に関しては、深刻なものではないとのことです!」
「わかった。迅速な対応、感謝する。引き続き、治療と爆発物の捜索を続けるように、伝達魔法で共有してくれ。それと、城の見張りを強化するように」
「はっ!!」
報告に来た兵士は、新たな指令を実行するために、颯爽とその場を去っていった。
この非常事態でも、人命を優先に動く国のトップ、それに従い、適切な対応をする民……これのどこが野蛮だというの? こんなに全員が協力的で、互いを大事にするなんて、簡単にできることではないはずだ。
「ぐずっ……それにしても、一体何でこんなことになったんでしょう?」
「それは確かに……アルフレッド様、何か心当たりはございますか?」
「無い……と言えば嘘になるかな。だが、この件に関しては君達は無関係だ。わざわざ危ないことに首を突っ込む必要は無い」
無関係と言われても、気になるものは気になってしまう。とはいえ、これ以上聞いても応えてくれそうもないから、聞きたい気持ちをグッと抑え込んだ。
もしかしたら、私が聞いてはいけないような、物凄い闇が関わっている可能性はありそうだ。
****
その日の夜、結局新しい爆弾は見つからなかったが、何があるかわからない以上、私を一人にするのは危険だろうと、アルフレッド様が言ってくれた。
それもあって、今日はとある人物と一緒に過ごすこととなった。
「セリア様、なんだかこれ、お友達の家にお泊りに来たみたいで、ワクワクしませんか!?」
今日一緒に過ごすのは、興奮気味のリズだ。目はキラキラと輝き、ジッとしていられないのか、体が小さく横に揺れている。
頭のちょこんっと立った毛も、嬉しそうに横に揺れて……って、あれはどういう仕組みなのかしら? なぜか、聞いてはいけないような気がする……。
「そうだ、セリア様! なんだかよくわかりませんけど、あの荷物ってもう開けて良いんですよね?」
「ええ。アルフレッド様が、私にくださったのよ。検査が終わって安全が確認されたから、もう大丈夫ですわ。開けてもよろしくてよ」
「わたしが開けるなんて、おかしいですよ。セリア様が開けてください」
私が良いと言っているのだから、別に気にする必要は無いのだが、断る理由もない。だから、私は早速一つ目の箱を開けると……茶色の犬のぬいぐるみが入ってた。
「まあ……このクリッとした小さなお目め、なんて愛らしいのかしら!」
「次のもきっと期待できますよ!」
「どれどれ……こっちは猫ちゃんですわ! このちょっとジト目でむすっとしてるのが良いんですの! こっちは……確か、カンガルーでしたか? 遠くの国に生息していると聞いたことがありますが……ふふ、お腹に子供が入ってて、可愛いですわぁ……!」
端からどんどんと開けていき、新しい仲間がどんどんと増えた結果、何体かがベッドに乗っているだけだったのに、今では部屋の至る所にぬいぐるみが置かれた。
どこを見ても、可愛いぬいぐるみ。それに、書庫から借りてきた本もたくさん……これが、幸せ空間というものなのね。
「これだけぬいぐるみのお友達がいると、安心できますね! あ、でも……お友達の座を奪われてしまいますっ!?」
「ご安心なさい、リズ。この子達は大切なお友達ですが、あなたは私の一番大切なお友達ですわ」
「い、一番……えへ、えへへぇ……なんだか照れちゃいますねぇ……」
綺麗な赤い髪と同じくらい、顔を真っ赤にさせるリズは、クネクネしながら恥ずかしがっている。
私としては、本当のことを伝えただけなのだけど、リズが喜んでくれて良かったわ。
「あれ? 開封していたら、こんな時間になっちゃいましたね。明日も早いですし、寝ましょうか」
「ええ、そうね」
王族や貴族の部屋に置かれるベッドは、例外を除いてフカフカで綺麗な、大きなベッドが使われる。その広さは、私達が同時に寝転んでも、余裕でスペースが空いている。
「セリア様、もしかして今、わたしが小さいからスペース余ってるなーみたいなことを思ってませんでしたか!?」
「そ、そんなことは思っておりませんわよ? おほほほ……」
「あやしい……」
そこまで直接的なことは考えていないが、似たようなことは考えていた私は、咄嗟に笑って誤魔化すが、リズはジト目で私を疑っている。
「さあ、今日はもう寝るのでしょう?」
「なんだかはぐらかされた気がしますが……そうですね。寝ましょう」
私がベッドに寝転がると、その隣にリズも寝転がる。こうして一緒に寝ていると、学園物の物語にあった、お友達とお泊り会をしているみたいで、ワクワクしてくる。
「ねえリズ、まだ起きてますか?」
「はい。どうかされましたか?」
「せっかくこうしてゆっくり話せるのですから、もう少しお喋りしたいと思いまして」
「もちろんいいですよ。何をお話しましょう?」
「そうですわね……私、あなたのことが聞きたいですわ。お友達とはいえ、あなたの知らないことはたくさんあるもの」
「わたしのことですか? えへへ、なんだか照れちゃいますけど……いいですよ。では、そうですね……わたしの故郷とか、母の話とかしますね」
話の内容の前置きをしてから、リズは楽しそうに話を始める。
大自然に囲まれた故郷の美しさや、小さな村だけど凄く素敵な方と一緒に過ごしたことや、心に残った思い出。そして、大好きなお母様のこと……色々と聞いているうちに、段々とリズの話し方が、ゆっくりになってきた。
「リズ、たくさん話して、眠くなってきたのではありませんか?」
「はい……ごめんなさい、セリア様……続きは、また今度でも……?」
「もちろんよ。あなたとおしゃべりできて、楽しかったわ。またしましょう」
「えへっ、もちろんです……ふわぁ……おやすみなさい……」
「おやすみなさい、リズ」
就寝の挨拶から間もなく、リズはとても気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
今日は大変なことがあったけど、最後には素敵なことがあって良かった。
「明日も、良いことがありますように……」
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