第二十六話 わたしはいつまでもお友達
ちょっとした騒ぎはあったものの、無事に自室に戻ってきた私は、アルフレッド様に言われた通りに部屋でゆっくり過ごしていると、バンッ! と、勢いよく扉が開いた。
そこに立っていたのは、息を切らせたリズだった。
「セリア様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ。突然どうされたのですか?」
「どうしたもこうしたもありませんよ! お城の中が騒がしいから、事情を聞いたら、セリア様がアルフレッド様と倒れて、怪我をしたって聞いて! 急いで飛んできたんですよ!」
それなりに騒ぎになっていたから、リズの耳に入るのは、なにも不思議なことではないわね。
「怪我をしたのは、大きな荷物を運んでいた使用人の女性ですわ。私ではございません」
「えっ……ち、違うんですか? 本当に? でも、突然苦しそうにしてたって……」
「…………」
私の予知のことを、リズは何も知らない。私が本当は聖女で、予知の力が使えるということは、一部の方しか知らないことだ。
私が聖女ということを知られたら、絶対に悪用する人間が出てくると思い、誰にも言わないでおいたのだけど……リズには、ちゃんと伝えた方が良さそうね。
「私、実はずっとリズに隠していたことがありますの。聞いてくださる?」
「もちろんです。なにか、重要なお話……ですよね?」
「ええ。まず最初に……聖女って、誰かご存じですか?」
「聖女って、ジェシカ様ですよね? セリア様のお姉さんの……」
「実は、本当の聖女は私だったって言ったら……信じてくださいますか?」
「信じます!」
「そうですわよね、信じてくれるはず……えっ?」
「信じますっ!!」
一度目の時点で、とても気持ちがこもった返事だったのに、二度目は更に声を大きく、身を乗り出して伝えてくれた。
「リズは、私が嘘をついているとは思わないのですか?」
「はい。まったく。こっれっぽちも。微塵も。だって、セリア様が嘘をつくような人じゃないって、知っていますから! 今思うと、この前わたしの予知の話をしてくれた時に、なんだか言い訳みたいに聞こえたのは、気のせいではなかったのですね」
あ、あら? うまく誤魔化せたと思っていたのに、全然うまくいっていなかったのね……。
「そ、そうでしたのね。では、話を続けますが……」
本当の聖女は自分だというのを皮切りに、私は生まれてからのつらい境遇や、家族に利用されていたこと、自分の死を予知したことをきっかけに変わったことや、予知の内容、不幸は変えられないこと、あの大騒ぎは自分の復讐で、まだその復讐は終わっていないといった、私の考えていることの九割を伝えた。
残りの一割は、アルフレッド様やソリアン国の王家への復讐だけど、今お世話になっている場所の復讐を知ったら、リズがどんな行動を取るか読めないし、変に気を使わせる必要もない。
……そんなことを思っていると、リズはクリッとした大きな瞳から、大粒の涙を流しながら、私のことを抱きしめてくれた。
「ううっ……セリア様、何も悪くないのに、ずっとずっと苦労をしていたんですね……神様は残酷すぎですよ……!」
「リズ……」
「大体、どうしてセリア様だけそんな目に合わないといけないんですか!? どうして自分の子供を大切に出来ないんですか!? 義理とはいえ、家族なのにどうして目の敵にするんですか!? どうして誰も助けないどころか、加担したり笑ったりしてるんですか!? あぁぁぁもう! どいつもこいつも、わたしのお友達をいじめるなー!!」
先程のアルフレッド様みたいに、リズも他人のことだというのに、そんなに怒ってくれるのね。なんだか、不思議な気分……嬉しいって気持ちに似ている……胸の奥が、フワフワしているような、そんな感じ。
「セリア様! 先程の話の中で、不幸は変えられないと言ってましたけど、それは今までがそうだっただけで、今回もそうだとは限りません! なによりも、わたしがそんな未来なんて受け入れたくありません! あなたの使用人として、お友達として……絶対にあなたが幸せになる未来を迎えられるように、お手伝いをしますっ!!」
「ありがとう、リズ。でも……私のしようとしていることは、復讐ですのよ? 復讐なんてよくないって、止めないのですか?」
「う~ん……止めたいわたしがいるのは確かです。復讐をしたって、何も生まれない。悪い人達と同じステージに上がることは無いって。でも、復讐を肯定している自分もいるんです」
「それは、どうして?」
「だって、全部自分達のために、罪もないあなたをいじめて、利用して、傷つけてきた人達ですよ!? ぼっこぼこのメッタメタになってほしいに決まってます!」
「ぼ、ぼっこぼこって……」
「どっちもわたしの気持ちとはいえ、それをあなたに押し付けるのは、なんか違うなって思って……わたし、バカだからよくわからないんですけど……とにかく! お友達として、なにがあってもセリア様の味方ということは、絶対ですから! ただし、人の道を踏み外すようなことをしたら、全力で止めますからね! 例えば、人殺しとか!」
「ありがとうございます、リズ。私……あなたに出会い、お友達になれたこと……本当に嬉しく思いますわ」
私は最大限の感謝を込めて、リズのことを抱きしめ返す。
こんなふうに人を抱きしめていると、心が安心するのね。お母様が抱きしめてくれた時も、こんな感じだったのを覚えている。
ということは、アルフレッド様としても……ち、違う! これはちょっと頭に浮かんだだけで、してもらいたいとかではないわ!
「にやにや」
「ちょっとリズ! 何をにやにやしているのですか!」
「直感ですが、セリア様が可愛らしいことを考えて、悶えているような気がしました。にゅふふ」
なにそれ、ひょっとして魔法!? 相手の心を読む魔法だったり……いや、そんなのが使えるなら、もっと早くに使ってるだろう。
「話を戻すと……セリア様が色々話してくれた中で、予知の話に出てきたアルフレッド様と、実際のアルフレッド様って、随分と違いますよね?」
「あなたもそう思いますわよね? アルフレッド様はもちろん、この国の民も、聞いていた話と全然違いますし……」
「ですよねぇ……国王様なんて、超がつくほど陽気で明るい感じで、野蛮のやの字も感じられませんでした。わたし、もっと殺伐としてるというか、暴力や殺しが当然の国だと思っていました。それくらい、ソリアン国の人達は野蛮というのが、カルネシアラ国では常識でしたし」
「一体、何を信じれば良いのか……」
「むしろ、セリア様にしていた連中なんかの方が、よっぽど野蛮ですよ。いや、あいつらの場合は捻くれ者とか、卑怯者っていうのがピッタリですね」
私の代わりにずばずばと言ってくれるから、なんだか気持ちが良い。私も、もっと早くからこれだけ言えていれば、人生が変わっていたかもしれない。
「ああ、リズ。今の話は、誰にも秘密ですわよ?」
「もちろんです! お口を縫い付けているつもりでいます!」
「そこまでしなくても……」
もう、リズったら……と、クスクス笑いながら、しばらく二人でおしゃべりをしていたら、突然部屋のドアから、トントンっと叩く音が聞こえてきた。
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