第二十二話 どこまでも私の心配を
フェルト陛下への謁見を無事に済ませた後、私達は夕食を振舞ってもらった。
歓迎の証として、この国の郷土料理を、これでもかと出された結果、私もリズも、お腹がはち切れそうになってしまい、動けなくなっていた。
「わたし……もう食べられません……おいしすぎて、食べ過ぎちゃいました……」
「私もですわ……こんなに満腹になったのは、生まれて初めての経験……」
もしかして、これは私達が食べ過ぎて動けなくなるように仕向けた、ソリアン王家の罠だったり? もしそうなら、なんて悪質なの……!
「ふふ、君達に喜んでもらえてなによりだよ。さて、少しセリア様と話があるから、リズ嬢は席を外してもらってもいいかな?」
「えっ? えーっと……」
私が、まだアルフレッド様への警戒を解いていないのを知っているからか、リズが視線で、どうしよう? と問いかけてきたのがわかった。
それに対して、私は小さく頷いてみせると、リズは言われた通りに部屋を後にしていった。
「それで、お話とは何でしょうか?」
「少し気になることがいくつかあってね。最近、カルネシアラ国は随分と荒れているようだが、なにかあったのかな?」
「さあ。存じ上げませんわ」
私が出発する前から、既にカルネシアラ王家は多くの人間に叱責され、混乱に陥っていた。それを、アルフレッド様は既に知っているということなのだろう。
ただ、さすがにその原因は自分だなんて言ったら、後々面倒なことになるだろうから、とぼけておくことにした。
「そうなのかい? てっきり、酷いものをプレゼントされている君が、一枚噛んでいると思ったけど、僕の早とちりだったか」
「……プレゼント……?」
酷いものをプレゼントって、少し変な言い回しね……ちょっと待って。なんだか、その変な言い回しに聞き覚えというか……言った覚えがあるような……あっ!
「あなた、どうしてそれをご存じなのですか!?」
「実は、あの花にはとある魔法がかけられていてね。君がどういった話をしているか、どういった生活をしているか、一部拝聴させてもらったんだ」
「ぬ、盗み聞きをしていたということですの?」
ほら、ついにボロが出始めたわ! そうやって、私の弱みを握って、自分達が優位に立つための材料にするのね!
「邪な考えは欠片もないが、結果的にはそういうことだね。不快な思いをさせてしまったなら、深く謝罪するよ」
「……どうして、そのようなことを?」
「あの時、君が怪我をしているのをわかったと同時に、疑問に思った。ドレスを着て城にいるということは、それなりの身分のはず。なのに、怪我を隠しているということは、もしかしたら虐待されているのかもってね」
「見事な推理力ですわね。それで、それを知って、どうされるおつもりだったのですか?」
「どうって……可能性があるのに、見て見ぬふりなんて出来ないだろう? だから、僕からカルネシアラ国の国王に、事情を聞くつもりだったんだ。まさか、その張本人から、婚約の申し出が来るとは、思いもしていなかったよ」
……なんなの? 私なんて、ほとんど他人も同然だったというのに、この方はよその国の事情に首を突っ込んでまで、私を助けたかったというの?
「ずっとつらい目に合っていた君に、少しでも素敵な気持ちになってもらいたい。元気になってもらいたい。そう思ったら、君を歓迎するのに、必要以上に熱が入ってしまったんだ」
「…………」
嘘だ、こんなの嘘に決まっている。今の言葉は、全て私を惑わすための嘘。だって、だって! 相手は戦争を起こした国の王家! 蛮族の国の王子なのよ!
そう、ソリアン国の方々は、全員が恐ろしい……なのに……なんでこんなに優しいの? 私の心配をして、手を差し伸べてくれるの? そんなことをして、なんの意味があるの? 私……ぜんぜんわからない……。
「……とまあ、君に会うまでは、それが僕の行動原理だったが、今はそれだけじゃない。彼女……リズ嬢と話をしている時に見せた、君の笑顔、本当に素敵だった。特に、キラキラと輝くサファイアのような瞳には、目を奪われた。思わず一目惚れしそうになった。いや、してしまったと言った方が正しいかな?」
「ひ、ひとっ!?」
い、一体この方は、どれだけ混乱させることを言えば気がするの!? そろそろ私も、頭がいっぱいいっぱいになってきているんだけど!?
「からかうのはおやめくださいませ!」
「からかってないよ? そうじゃなきゃ、頬にキスなんてしないよ」
「あ、ああ、あれは……でも、あれくらいは普通だって!」
「ははっ、これでも一応僕も人の子だからね。初めてしたキスが少し照れ臭くて、その場しのぎのことを口にしてしまったんだ」
少しって、こっちはそれどころではないくらいに、胸がドキドキしたというのに……!
「そうやって慌てるところも可愛いね。大丈夫、僕達の愛はゆっくり育めばいい。だから、あまり深く考えすぎずに、平穏に過ごしてほしい。大方、向こうはかなり過酷だったのだろう?」
「…………」
余計なことを言って、面倒なことになるのを防ぐために、沈黙を貫くと、アルフレッド様はそれで納得したようで、うんうんと頷いた。
「君にも色々と事情はあるだろうし、君の考えもあるだろうから、深くは言及しないよ。僕達のことを信用できるようになって、話したいと思ったら、その時に聞かせてほしい」
「っ……!」
アルフレッド様は、最後に優しい笑顔を残して、私の前から去っていった。
結局、私はあの方を信じていいのだろうか? 見ず知らずの私のことを心配して、助けてくれて、私のような人間を、素敵だと言ってくれた方を……。
いや、絶対に信じてはダメだ。あの方は、お母様の敵。復讐しなければいけない敵なのだから。
「わかってる。わかってるのに……どうして、こんなにモヤモヤした気持ちになるのかしら……」
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