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【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です  作者: ゆうき


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第二十一話 陽気な国王様

「ふへぇ……」


 生まれて初めての湯浴みを体験していたら、その気持ちよさと、待遇の良さに、完全に骨抜きにされていた。


 アルフレッド様は私の傷のために、刺激が少なく、色々な怪我に効くお湯を用意してくれていた。それだけでなく、湯浴みの担当の使用人が、私の体を優しく丁寧に洗った後、しっかり傷の手当てまでしてくれた。


 私の家族は、揃ってこんな素敵なものを、毎日味わっていたのね……湯浴みの自慢話を聞かされるだけで、私は冷たい井戸水と石鹸で、頭と体を洗っていたというのに。ああ、思い出したらまた怒りが……。


 それにしても、ここに来てから、あまりにも至れり尽くせりな気がしてならない。やっぱり、何か裏がある……?


「お疲れ様でした。どこか痛むところはございますか?」


「いえ、どこもございませんわ。とても気持ちよかったです。それに、用意していただいた肌着やドレスも、とても滑らかで着心地が良くて……全然肌が傷みません」


「アルフレッド様が、国で一番の職人に自ら赴いて依頼を出した、特注品ですのよ」


 私のために用意してくれたの? こんな上質な布を用意するのは、大変だっただろうに……ああもう、騙されてはダメよ私! こんなの、絶対に裏があるに決まってるわ!


「こほん……まあ、そうでしたのね。なんだか、そこまでしていただくのは、申し訳ないですわ」


「ここだけの話、アルフレッド様はあなたのことを随分と気になされております。政略結婚ではありますが、もしかしたら……ふふっ」


 いや、意味深な言い方をしないで! 気になってしまうじゃない!


「では、一度応接室にお戻りくださいませ」


「わかりました」


 言われた通りに応接室に戻ると、私と同じように湯浴みをしたのか、頬を上気させたリズが座って待っていた。


「あ、セリア様! おかえりなさいませ!」


 私を見つけるや否や、すぐに駆け寄ってきて頭を下げる。まさに使用人の鏡だ。


「リズ、そちらはどうでしたか?」


「もうびっくりですよ! 色々と教えてもらったんですけど、みんな親切ですし、教え方も優しくて丁寧なんです! カルネシアラ国の人達とは、大違い!」


「そんなに酷かったのですか?」


「初めてのお仕事の日に、荷物の置き場所すら教えてもらえませんでした。お仕事も見て覚えろとしか言わないし、初日から些細なミスで怒鳴るし、それを見た人はクスクス笑うしで……お、思い出しただけで、胃がキリキリと……」


 職人なんかは、見て覚えるのは当たり前というし、そこに関しては百歩譲って良いとして、まだ新人の方を怒鳴ったり笑ったりするのは、あまりにも性格が悪すぎる……。


 それに比べて、ここの方々は随分と優しいようだけど……やはり、すぐに信用は出来ない。


「その後に湯浴みをして、綺麗さっぱりになってここで待ってたって感じです!」


「そうだったのですね。ところでリズは、この国の方々のことを、どう思いますか?」


「とっても優しいと思いました! なんていうか、ソリアン国の人達はみんな怖いって聞いてましたし、それが当たり前という風潮でしたが、ちゃんと自分の目で見てもいないのに決めつけるのは、よくないって反省しました。セリア様はどうですか?」


「私も、聞いていた話と違っていると思いましたが、もしかしたら何かの罠かも勘繰っておりますわ」


「そうでしょうか……わたしには、そうには見えませんでしたけど……気をつけるに越したことはないですよね!」


 そう、油断するのが一番よくない。少しでも気をつけておけば、何かあった時に対処できるはず。彼らは大丈夫という確証を得るまでは、この考え方でいよう。


「失礼します。お夕食の前に、国王陛下がご挨拶をしたいと申しておりますので、お願いできますか?」


「わかりました。リズ、行きましょう」


「わ、わたしも!? うぅ、国王様とお話なんて、ドキドキする……」


「大丈夫よ。私達なら何でも乗り越えられるわ」


「セリア様……はい、そうですよね!」


 リズを無事に鼓舞した後、国王陛下の待つ謁見の間へとやってきた。そこには、先程一旦別れた、アルフレッド様の姿もあった。


「ご機嫌麗しゅう、国王陛下。本日からこちらでお世話になります、セリア・カルネシアラと申します。こちらは、共に来てくれた使用人で友人でもあり、リズと申します」


 いつもの様に、ドレスの裾を持って挨拶をすると、国王陛下はのそのそと私の前までやってくる。


 身長はアルフレッド様には及ばないが、目力が凄くて圧倒されそうだ。それに、全身から出る威圧感というか……凄みを感じる。きっとこのお方こそ、戦争を起こした――


「いやぁ~! 遠いところから良く来てくれたねぇ~! ボクがこの国の国王、フェルト・ソリアンさ!」


「は……?」


 フェルトと名乗った彼は、割と強めに私達の肩をバシバシと叩きながら、楽しそうに笑っていた。


 私のイメージでは、野蛮な人が多く住むソリアン国のトップなのだから、もっと恐ろしい存在だと思っていたのに、目の前にいる方は、それとはかけ離れすぎている。


「よろしくよろしく! 長旅大変だったでしょ? あれ、座ってるだけでも結構疲れるのって不思議だと思わない?」


「え? ええ……そ、そうですわね?」


 フェルト陛下は、ギュッと手を握ると、それをブンブンと上下に振った。それを、リズにも全く同じことをしている。

 それのせいで、リズの動きも思考も、完全に停止してしまっている。


「リズ、しっかりなさい」


「はっ……今、現実が受け入れられなくて、意識を手放してました……」


「気持ちはわかるけど、気をしっかり持つのよ」


「あれ、元気ないけど、どうしたのかな? ああ、ボクわかったよ! 新しい土地だから、環境に適応するのが大変なんだね! わかるよぉ~……ボクも仕事で、遠い地にある雪国に行ったことがあるけど、大変すぎて十分で帰りたくなってさぁ。えっ、さすがに早すぎるって? う~ん、ごもっとも!」


「…………」


 な、なんなの……この明るくてお喋りな方は……陽気という言葉は、この人のために存在しているのではないかと思うくらいなのだけど。


 本当に、この方がソリアン国の国王……なのよね? それも、確か即位してから戦争が起こってるから……あの戦争を起こした、張本人ということになる。


 だというのに、これはどういうことなの? これも、私を動揺させたり、安全な人だとアピールして、油断を誘う作戦なの? うぅ、ここにきてから、思ってもなかったことばかり経験したせいで、頭が痛いわ……。


「父上、話がそれてます」


「おっ? こりゃ失敬失敬! セリア、そしてリズ。我らソリアン国は、君達のことを新しい仲間として、歓迎する! 自分の家のようにくつろぎ、楽しく生きてくれたまえ!」


「慈悲深いお心遣い、誠に痛み入ります。私も、アルフレッド様の婚約者として、誠心誠意、務めさせていただく所存ですわ」


「そんな固くならないでよ~。ほら、リラックスリラックス!」


 ずっと戦争をしてきた敵国のトップに、リラックスと言われても、はいわかりました! なんて言える人は、さすがにいないのではないかしら?


「はっはっはっ! 長かった戦争も終わり、息子は素敵な婚約者がきてくれて、みんなハッピー! いやぁ、幸せって……いいよね!」


 ビシッと親指を立てるフェルト陛下に、私もリズも、引き気味に頷くしか出来なかった。


 長年国王なんてしているくらいだから、凄い方……なのだろうか? でも、彼が戦争を仕掛けたとしたら、お母様の敵でもある。


 そうだ、見た目と言動に騙されてはいけない。私は、ソリアン国の王家を絶対に許せない。アルフレッド様共々、必ず復讐をしてやる。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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