第十九話 熱烈なお出迎え
国境を超えてからしばらく進んでいると、森を抜けて綺麗な草原が広がっていた。この辺りは大きな畑があったり、牧場があったりと、とてものどかな場所だ。
「凄く平和な感じ……ですよね」
「ええ。正直なところ、馬車なんて走ってたら、上半身裸で棍棒をもった民達が、襲い掛かってくるかと想像していたのですが……」
「あはは、セリア様。それこそ、冒険物を読みすぎですよね?」
他愛もない話をしながら、二人で同じ窓から外を眺めていると、ぽつぽつと民家が増え始めていって……次第に町と呼べる規模の場所までやってきた。
「ここがソリアン国の城下町です。ご案内をしたいところですが、本日はアルフレッド様がお待ちですので、このまま城に向かいます」
「ええ、わかりましたわ」
ソリアン国の城下町って、建物は主に石で出来ているのね。祖国はレンガを主に使っているからなのか、雰囲気が違って見える。
それ以外にも、人々はとても楽しそうに、時には忙しそうに、町中を歩いている。そこに、野蛮と思える要素なんて、どこにもない。
……それなら、どうして祖国の民達全員が、この国は野蛮だって思っているのだろうか? 戦争を仕掛けてきたからって考えるのが自然だけど、今まで出会った人達の穏やかな性格を見てると、戦争なんてするとは考えにくい。上に立つ人間がよほど愚かとか?
「セリア様、難しい顔をしてどうしたんですか?」
「少々考え事をしていただけですわ。お気になさらず」
答えの出ない疑問を悶々と考えていると、馬車はゆっくりと止まった。どうやら、無事に目的地であるお城に到着したようだ。
「お待たせしました。どうぞお降りください」
「ありがとうございます」
「わわっ、わたしもいいんですか!?」
「せっかくのご厚意なのですから、素直に受け取りなさいな」
「わかりました。それじゃ、失礼して……!」
御者のリードをしてもらいながら先に降りると、その流れでリズもリードをしてもらう流れになっていた。
使用人が、こんなふうにリードを受けるなんて、普通ならありえないことだもの。リズが驚くのも当然だ。
「ようこそ、我らが王の治める地、ソリアンへ」
お城の中に入ると、エントランスにズラッと並んだ兵士達による、ソリアン国の敬礼、そして使用人達のお辞儀に出迎えられた。それも、数十人……下手したら、百人は超えていそうなくらいだ。
「せ、セリア様……なんだか、もの凄い歓迎されてませんか?」
「この国の王子の婚約者を初めて迎えるのですから、これくらいは当然かと存じますわ」
リズの前では、冷静さを保っているように見せてはいるものの、正直私も驚きを隠せない。いくら二国の和平の象徴である婚約とはいえ、こんなに歓迎するものなのだろうか? 少なくとも、祖国の人間が同じ立場になっても、ここまでするとは思えない。
私が知らないだけで、実はこれぐらいが普通だったり? それか、私を油断させるための、ソリアン国の罠……?
「ひぇ~……あ、え~っと……ど、どうも~……え、えへっ」
「しっかりなさい、リズ。驚く気持ちは理解出来ますが、堂々としていないといけませんわ。使用人の作法は、教わっているでしょう?」
「そ、そうでした! ピシッとします!」
大規模な出迎えに圧倒されるリズだったが、すぐに使用人として、堂々とした振る舞いを取り始めた。
それに続くように、私は一歩前に出ると、ドレスの裾をもって、深々と頭を下げた。
「皆様、本日はお忙しい中、私達のために盛大で素敵なお出迎えをしていただいたこと、心より感謝の言葉をお伝えさせていただきますわ」
「セリア様、リズ様。長旅お疲れ様でした。アルフレッド様がお待ちですので、こちらへ」
使用人の一人に連れていかれた先は、このお城の応接室だった。そこに通されると、先に来ていた長身の男性が、素敵な笑みを浮かべながら、歩み寄ってきた。
この方が、私の婚約者となるアルフレッド・ソリアン様。長年続いた戦争の敵国の王子であり、予知の中でお父様と共に、私を処刑した人物だ。
短く揃えた黒い髪も、切れ長で美しい黒い瞳も、祖国ではほとんど見かけないからか、とても目立って見える。
「こうして話すのははじめてだから、改めてご挨拶を。僕がアルフレッド・ソリアンだ。よろしく、セリア様」
お城でたまたま見かけた時や、お見舞いの品をいただいた時も思ったが、本当にこの人が、予知で見たアルフレッド様ご本人なの? 本当に、あのソリアン国の王子なの? 全く信じられないくらい、紳士的で素敵な男性だ。
「セリア・カルネシアラです。こちらは私の友人であり、使用人のリズです。よろしくお願いいたしますわ、アルフレッド様」
「その、えっと……」
「もう、リズったら……緊張し過ぎてガチガチではありませんか。ほら、肩の力を抜いて」
「ご、ごめんなさいセリア様……」
私以上に緊張しているリズを見ていたら、少しだけ緊張がほぐれて、自然と笑みが溢れた。
「……美しい……なんて素敵な笑顔だ……」
「アルフレッド様? 何か仰いました?」
「あ、ああ……失礼。ただの独り言だよ。よろしく、セリア様」
「えっ……?」
貴族の間では、男性が女性の手の甲にキスするのが、日常的に行われている。だから、この手を取ったのも、それをするためのものと思っていたら……なんと、アルフレッド様は静かに立ち上がると、私の頬にキスしてきた。
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