第十七話 わたしも一緒に行きますっ!!
「あれって、リズですわよね!? えっ、どうして彼女がここに!?」
それなりの早さで走っている馬車を相手に、リズは余裕でついてくるどころか、その距離をグングンと締めている。
どうしてここにいるのかとか、どうやって追いついたのかとか、色々聞きたいことが多すぎる。ソリアン国の使者の方には申し訳ないが、少し待っててもらおう。
「すみません、少しお待ちくださいませ! なにやら、知り合いが追いかけてきているようですの!」
「お知り合いですか? わかりました!」
御者の方にお願いすると、とてもすんなりと馬車を止めてくれた。それを見計らって、私はキャビンから飛び降りて、息を切らせるリズの元へと向かった。
「はぁ……ふぅ……よかった、無事に追いつけました!」
「リズ、どうしてあなたがここに? 凄い汗じゃない……少々お待ちになって」
私はハンカチを取り出すと、汗だくのリズの顔を、傷つけないように優しく拭いてあげると、リズは少し恥ずかしそうに、しかしどこか気持ちよさそうな表情を浮かべていた。
「リズ、あなた……お母様はどうされたのですか?」
「…………」
リズは表情を真剣なものに変えると、静かに首を横に振った。
ということは、リズのお母様は……助からなかったのね。やっぱり私の予知で見てしまったものは、事前にわかっていても……。
「ありがとうございました、セリア様」
「えっ……?」
自分の力不足を痛感し、胸を痛めていると、一番つらいはずのリズが、ニッコリと笑った。
「おかげさまで、私は数日の間、母とたっぷりお話出来ましたし、甘えさせてもらいました。おかげで、お別れの準備が出来たといいますか……母に、笑顔でさよならを言えたんです。だから、わたしは満足していますし、あなたにとても感謝をしているんです」
「……そうなのね……それは、本当によかった……」
私の予知は、確かに当たったといえるかもしれないが、深い悲しみに苛まれるはずだったリズは、とても清々しい顔をしている。
予知というのは、こうやって頑張ると、未来は変わることはある。とはいっても、不幸が起こることに変わりないが……それが、誰かにとっての救いになるのね。
「ありがとうございます、セリア様。それで、母の葬儀も無事に終わって一段落していたら、お城のことを風の噂で聞いたんです」
「お城のことって、もしかしてあなたもご存じなのですか?」
「はい。もう国中に知れ渡って、大騒ぎですよ。わたしも、本当にびっくりしてしまいまして! きっとセリア様が大変だろうから、この恩を返すために、そしてセリア様の力になりたいって思ったら、急いでセリア様の元に帰らないとって! 急いで戻ったら、お城を既に発ったと聞いて、追いかけてきたんです!」
「そ、そうでしたか。よく追いつけましたわね……」
「えへへ……昔から、自然の中で遊んでいたからか、体力とか足の速さには自信があるんです!」
そ、それにしたって普通追いつけるかしら? 私も体力はそれなりに自信があるが、お城からここまでずっと走れと言われたら、顔がひきつると思うわ。
「改めてになりますが、本当にありがとうございました。わたし、このご恩は一生忘れません。だから……その恩返しがしたいんです。わたしを、あなたと一緒に行かせてください!」
「え、えぇ!? あなた、本気ですの!?」
「もちろんです! わたし、気弱でドジでグズですけど、一人で行くよりは心強いと思いますし、何かの役には立つと思うんです! だから、わたしも連れていってください!」
リズの優しい気持ちは……とても嬉しい。涙が出そうになるくらい嬉しい。けど、それを受け入れることは出来ない。
「理屈はわかりました。でも、あなたは連れて行けませんわ」
「ど、どうしてですか!?」
「他国で暮らすというのは、私達が想像している以上に大変なことでしょう。それに、ソリアン国のことを考えると……あなたが仕えていた王家の者として、私を慕ってくれる愛しい民を、そんな場所に連れていくことは出来ません」
「それなら、しがみついてでもついてきます!」
「そんな、子供ではないのですから……あなたのためを思って伝えているのです。わかってください」
「嫌です!!」
文字通り、私の足にしがみつくリズは、駄々をこねる子供のように声を荒げながら、しがみつく手に力を入れた。
「どうしてわかってくださらないのですか!? 私は……私は! 生まれて初めてお母様以外に私のことを考えてくださったあなたを、巻き込みたくないのです!」
「ずっとあなたのことを助けられなかった、気弱でダメダメな私に、こんなことを言う資格なんてないかもしれませんが……それでも言わせてください! セリア様は、ずっとずっと一人で頑張り、耐えてきたんですよね!? でも、これ以上一人で頑張ったら疲れちゃいますよ! そんなの、わたしは嫌なんです! だから、これを機に、私にあなたの力にならせてください! わたしを、巻き込んでください!!」
「リズ……あなた……」
リズは、大きな瞳に目一杯の涙をためながら、まっすぐ私に向き合ってお願いをする。
こんなに私のことを考えてくれる方を、私の都合で危険にさらすなんて、絶対にあってはならない。ここは何を言われても、突っぱねるのが正解――のはずなのに、気づいた時には、私は一筋の涙を流しながら、頷いていた。
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