236:ヒートサースト-4
本日二話目です
「鑑定っと」
白い木の塊は高さ5メートル、幅3メートルほどの結晶体と言う感じである。
樹皮は白、赤、黄が混ざった色をしているが、熱拍の樹呪程に鮮やかと言う感じではない。
そして、一部の樹皮は剥がれていて、そこから赤い宝石のような物が見えている。
うーん、見た目だけなら、熱拍の樹呪の一部と言う感じだがさて……
△△△△△
熱拍の幼樹呪 レベル17
HP:102,725/102,725
有効:なし
耐性:灼熱、気絶、沈黙、小人、脚部干渉力低下、恐怖
▽▽▽▽▽
「熱拍の幼樹呪ねぇ。これが成長すると熱拍の樹呪になるのかしら」
「『たぶんそういう事でチュね』」
しかしHP10万とはまた圧倒的……と言うか、このサイズでHP10万なら、周囲に聳えている熱拍の樹呪のHPは幾らになるのか。
うん、そちらは考えないでおこう。
今は熱拍の幼樹呪についてだ。
「普通に着地出来るわね」
「『拍動もしてないし、熱も放っていないでチュね。HPとかに異常は?』」
「見られないわね。私のHPや満腹度を吸い取るような事はしないみたい」
私は熱拍の幼樹呪の上部に着地する。
うーん、この感じだと、ただの岩のようにしか見えない。
宙に浮いているし、樹皮があったりで、間違っても岩ではないのだけど。
「色々やってみましょうか」
「『何時でも逃げられるようにしておくでチュよ』」
「言われなくても」
私は腰のトゥースナイフを抜くと、熱拍の幼樹呪の樹皮に埋まっている赤い宝石の周囲の樹皮へと突き立ててみる。
うん、かなり固いが、一応刺さる。
そして、何度か刺す事で、宝石のような物体が取れた。
「おっと……」
『チュアッ!?』
だが、宝石を取った瞬間に、熱拍の幼樹呪の高度が大きく落ちた。
黒い砂の海との距離からして、50メートルは確実に落ちている。
どうやら、この宝石は熱拍の幼樹呪にとって欠かせないもののようだ。
とりあえず鑑定してみよう。
△△△△△
熱拍の幼樹呪の赤樹脂
レベル:17
耐久度:100/100
干渉力:110
浸食率:100/100
異形度:16
熱拍の幼樹呪から採取できる赤い樹脂。
周囲の呪詛、エネルギー、物質を自分にとって都合のいいように変換する力を有している。
注意:推奨レベル未満のプレイヤーが触れると、HP、満腹度、干渉力が吸収されます。
▽▽▽▽▽
「うわぁ……」
「『さ、流石は呪限無でチュね……』」
どうやら熱拍の幼樹呪はこの物質を利用することで、周囲の呪詛と熱を浮力と栄養に変換。
成長と高さの維持を行っていたようだ。
しかし、注意事項の内容が怖すぎる。
私はレベル17だからギリギリセーフだが、足りなかったらと思うと恐怖以外の何物でもない。
「いえ、もしかしてレベルは足りているようにされている?」
「『あー、あり得るでチュね。ここはたるうぃに合わせて作られた的な事を言われたでチュし。調整は入っているかもでチュね』」
だがこの力を私の物に出来れば……まあ、色々と出来る事はあるだろう。
回収しておく価値は高そうだ。
「うーん、先に樹皮。あと出来れば木材もかしらね。『毒の邪眼・1』」
「『回収できるならそうでチュね』」
しかし、樹脂を取ると、それだけ高度が落ちてしまい、黒い砂の海に近づくことになる。
熱拍の幼樹呪から取れる有用アイテムが樹脂以外にもある可能性は高い。
と言うわけで、私は念のために『毒の邪眼・1』などの邪眼術を使って風化しないようにしつつ、熱拍の幼樹呪から樹皮を剥ぎ取ってみた。
△△△△△
熱拍の幼樹呪の樹皮
レベル:17
耐久度:100/100
干渉力:110
浸食率:100/100
異形度:13
熱拍の幼樹呪から採取できる白、赤、黄が入り混じった樹皮。
熱と乾燥に対して極めて強い耐性を有する。
上手く加工すれば、耐性そのままに繊維を取り出す事も可能。
▽▽▽▽▽
「おおっ……これはいいわね」
「『呪詛纏いの包帯服の改良に使えば、耐性関係が大きく改善されそうでチュねぇ』」
ザリチュの言う通り、これがあれば私の火炎耐性は大きく改善されるだろう。
是非とも集めておきたいところだ。
理想形は繊維を取り出して、糸に変え、編み込む形だろうか。
もしかしたら、ザリチュの強化も図れるかもしれない。
それに、渇泥の中や、熱樹の熱が強いエリアの探索も出来るかもしれない。
「よし、樹皮を剥ぎ取れるだけ剥ぎ取るわよ」
『分かったでチュ』
うん、樹脂は後回しで。
今はまず樹皮の採取だ。
丸裸にするつもりで採取しよう。
そう考えて、剥ぎ取っていると気付く。
「ん? 下から中に入れるのね」
「『本当でチュね。入ってみるでチュ?』」
「ええ、入れてみるわ。フレイルを」
熱拍の幼樹呪の下に回り込むと、内部に繋がるように穴が開いているのが見えた。
さて、場合によってはこの穴は、穴に見えて、実は口である、なんてパターンがあるのだろうが……中に何があるのかは気になる。
と言うわけで、私はとりあえず毛皮袋から取り出したフレイルを突っ込んでみる。
問題なし。
「大丈夫そうね」
続けて右手だけ入れてみる。
やはり問題なさそうだ。
私は穴の奥へと進んでいく。
「石板? あー、配信はここまでで。機会があったらまた垂れ流します」
穴の奥は直径1メートルほどの球状の空間で、私が居る側とは反対側の壁には台座のような物と、台座に乗せられた赤い石板があった。
そして、僅かにだがこの周囲の空間が歪んでいるのも見て取れた。
なので私は配信を終了すると、石板に近づいていく。
『脱出用ゲート、と言うところでチュかね』
「そうみたいね」
石板に手をかざす。
すると『ダマーヴァンド』に戻るかどうかが表示されると共に、必要なワードが表示された。
なぜこんな所にこんな物があるかは分からないが、切りどころか。
「じゃあ、一度脱出しましょうか」
『分かったでチュ』
「『orijot、orijot、jyugemuno itugiri』」
ワードを唱え終わった時、私は『ダマーヴァンド』第三階層の例の部屋に戻されていた。
09/05誤字訂正




