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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編

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第92話『鶯谷トンネルの霊界門』

 岐阜県の山あいにひっそりと佇む、鶯谷トンネル。

 昼間はただの古ぼけたトンネルだが、夜になると誰も通らなくなる。


「なんで夜は誰も通らないんだろうな……」


 修がトンネル入り口の古びた黄色い街灯を見上げながら言う。


 白い灯がぽつぽつ並び、赤い消火栓の赤色灯も鈍く光っている。


「もの好き以外はね」


 愛菜が肩をすくめて笑った。


「好奇心で来たボク達は、まあ“もの好き”に分類されるよね?」


 結が手すりを撫でながら言う。


「でも、昔からここで変な事があったらしいわ。人が突然消えたり、夜になるとどこか違う世界に繋がるって……」


 浜野先生は懐中電灯を片手に真剣な顔をしていた。


「さあ、肝心の現場だ。お前ら、気を引き締めろよ」


 四人はトンネルの入口をくぐった。

 ひんやりとした空気に包まれ、黄色灯の薄暗い明かり が壁に影を落とす。


 歩を進めると、壁の落書きが目についた。


「またこういうイタズラか……」


 修が指差したのは、「○○参上!!」と、どこかコミカルな文字。


 愛菜が笑いながら言う。


「こういうの、幽霊の仕業だったりして」


 トンネルの中ほどで、四人は足を止めた。

 外の街灯の明かりが、トンネルの出口の先に小さく見える。


 結が言った。


「見て、外の世界はあんなに明るいのに……トンネルの中はまるで別の空間みたい」


 修が頷く。


「実は、このトンネルは霊界への入り口なんだ」


「はあ?」


 愛菜が目を丸くした。


 修は説明する。


「ここを通る者は、現世と霊界の狭間に迷い込む。帰れなくなる人も多い。だから、誰も夜は通らないんだ」


 浜野先生が懐中電灯をトンネルの壁にかざしながら言った。


「光が揺れてる……あれ、壁に何か映ってるぞ」


 壁に薄く浮かぶ霧のような人影。

 ゆらゆらと動くそれは、誰かがトンネルの向こうからこちらを見ているように見えた。


「幽霊……!?」


 結が震える声で言った。


 ノクスが「にゃあ……(気をつけろ)」と愛菜だけに囁く。


 突然、トンネルの出口の明かりが一瞬消え、辺りは闇に包まれた。

 パニックになる皆を、修が落ち着かせる。


「大丈夫、俺達は一緒だ。焦るな」


 暗闇の中で、かすかな囁き声が聞こえ始める。


「こっちにおいで……」


 結が耳を塞ぐ。


「やめて……そんな声、聞きたくない」


 愛菜がノクスの声を聞き取りながら言う。


「にゃあ……(出口は罠だ。帰るなと叫んでるにゃ)」


 修は懐中電灯を必死に振り回しながら進む。


「霊界の門は、このトンネルのどこかにある。俺達で見つけて、閉じなきゃ」


 激しい足音が後ろから迫る。

 皆振り返ると、無数の影が彼らを囲んでいた。


「助けて……」


 声は次第に大きくなり、絶叫に変わる。


 絶望的な状況の中、愛菜がノクスの声を頼りに出口を目指し叫ぶ。


「みんな、走れ! にゃあ……(出口は右だ! こっちに来い!)」


 必死に走った先で、光が戻りトンネルの出口が見えた。


 四人は息を切らしながら外に飛び出す。


 外の街灯の明かりが、現実の世界へ彼らを引き戻した。


「ふう、やっと戻れた……」


 修が深く息をつく。


 結は震えた声で言った。


「鶯谷トンネル……霊界の入り口だったんだ」


 愛菜がノクスを抱きしめながら仰天。


「怖すぎだよここ!!」

 次回予告


 第93話『三雲トンネルの封印』


 除霊されたはずの三雲トンネル。

何も起きないその静けさが、逆に怪異の“気配”を濃くしていく。

修達が辿り着いたのは、封印されたまま眠る“何か”だった。


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