表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/185

第58話『約束の夜、揺らぐ記憶』

 夜の旧校舎。


 どこか時の流れから取り残されたような建物の廊下に、柔らかな月光が差し込んでいる。

 月明かりは窓を通して長い影を落とし、静寂をより濃くしていた。


 その静けさを破るように、浜野京介たちは足を止めた。

 彼らの前にあるのは、203号室──浜野の“記憶”とリーヴァとの繋がりの部屋。


「……着いたな」


 浜野は小さく呟く。

 目の奥に、決意の光と微かな迷いが揺れていた。


「ドキドキしますね」


 隣に立つ結が言う。

 声は小さいが、確かな緊張がにじんでいた。


「にゃう……(なんか、落ち着かねぇな)」


 ノクスが耳をぴくりと動かしながらぼやいた。




「行こう」


 浜野は一歩を踏み出す。


 その瞬間、部屋の奥──古びた木製の机の上に置かれたノートが淡く発光した。


「これは……?」


 彼がそっと手を伸ばすと、ノートが微かに震え、次の瞬間──空間が揺れた。


 光の粒が宙に舞い、部屋中に幻想のような映像が広がっていく。


 そこに映し出されたのは、幼い頃の浜野、そして──銀髪に紫の瞳を持つ少女、リーヴァの姿だった。


『観測記録。対象:浜野京介。記憶断片、統合準備中──』


「……今の、声……!」


 愛菜が思わず声を上げた。


 映像のリーヴァが、優しく幼い浜野の頭を撫でる。

 その手つきは、母のようであり、親友のようでもあった。


『あなたはいつか忘れる。でも、私はここに残る。君が自分を失わないように──』


「にゃう……?(なんだ……?)」


 ノクスが小さく言葉をこぼす。

 その表情は、普段の軽口をすっかり引っ込めた、真剣なものだった。


 浜野の目が揺れる。

 彼の中で眠っていた記憶が、少しずつ呼び覚まされていく感覚。


「……俺は、彼女と……リーヴァと、約束を交わしたんだ」


 声は震えていたが、はっきりとしたものだった。


 結がそっと隣に立つ。


「なら、その記憶を……取り戻しましょう」


 浜野は深く頷く。

 記録の扉は、確かに開かれた。


 ノクスが最後に、小さな声でぽつりとつぶやいた。


「にゃう……(妙だ……)」


 その瞬間、再びノートが脈打つように光った──

 次回予告


 第59話『銀髪の少女は夢に笑う』


 記録の映像はなおも流れ続ける。

 リーヴァの微笑みと共に明かされる、過去の真実──。

 “記録”の深層に沈むもう一つの約束が、浜野の心を揺らす。

 そして、ノクスが気づいた“違和感”の正体とは?


 「にゃう……(笑ってるけど、あれは本当に“今の彼女”かにゃ?)」


 誰も知らない“彼女”のもう一つの顔が、夜の闇に浮かび上がる──。


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価(★★★★★)やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

続きの執筆の原動力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ