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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第54話『忘れた者と、思い出す者』

 午後九時。

 大学の旧校舎から少し離れた職員棟。

 その一室で、浜野京介は静かに一枚の紙を見つめていた。


 差出人も記載のない、手書きのメモ。


『京介へ。君はかつて、“ひより”と呼ばれるものに会っている。思い出せ。すべては、そこから始まった。』




「……いたずらか?」


 京介は紙を手に取り、表も裏も確認した。


「ひより、か。そんな名前の子には、会った事はない」


 その声には迷いはなかった。

 だが、紙を見つめる彼の瞳は、どこか微かに揺れていた。


 机の引き出しから、古ぼけたノートが一冊取り出される。

 中には、彼が過去に調査したUFOやUMA、怪現象の記録がずらりと並んでいた。


 その最後のページだけが、白紙だった。


「……あの夜の事か」


 京介はポツリと呟いた。


 幼い頃、彼は確かに“何か”に連れ去られた経験があった。


 真っ白な空間。

 浮かぶ幾何学的な図形。

 そして、自分の名前を呼んだ、淡い紫色の瞳の少女。


 だが、彼の記憶はそこで途切れ、真相は今も深い霧の中にある。


「俺が会ったのは……あの少女だ。『ひより』とやらとはまったく違う存在だ」


 それでも、奇妙な違和感だけが残る。


 あの空間。

 あの言葉。


 ──“記録を、預けます”


 少女の声が頭の中に響いた気がしたが、詳細は思い出せなかった。


「記録……?」


 京介は無意識に白紙のページを見下ろした。


 次の瞬間、文字が浮かび上がる。


 リーベル・イナーニス──空白の書。

 忘れられた記憶は、白の中に記される。




 ノートを手放し、京介は思わず椅子から立ち上がった。


「何だこれは……文字が、勝手に……?」


 白紙だったページに、次々と文字が浮かび上がっていく。


 203号室。封印は、解かれた。

 次に目覚めるのは、“思い出す者”。




「……封印? 203号室って、旧校舎の……?」


 京介は眉をひそめ、立ち上がってメモを再び手に取った。

 だが、今度はそのメモさえも文字が滲み、次第に消えていく。


「おい、待て。まだ……!」


 京介はメモを強く握ったまま、急いで部屋を出た。

 廊下に出ると、夜風がすうっと吹き抜けた。


 そして、その風の中に混じって、耳元で誰かが囁いた。


『──ようやく、目覚めるのね』


 京介は振り返るが、誰の姿も見えなかった。


 胸の奥に、不思議な熱が灯る。


「……“ひより”ってのは、一体……」


 彼は静かに呟いた。


 ──封印、条件達成につき、一部解除。


 「あ……ぇ……思い……出した……思い出したぞ!!リーヴァ!!俺は!!」

 次回予告


 第55話『金色の記憶と、白紙のノート』


 封印は静かに解かれ、記録は少しずつ蘇る。京介の過去と、“ひより”の存在が交錯する時、物語は静かに進み始める──。


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