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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第三章:空白の書編

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第51話『白い少女の秘密』

「……ひより、か」


 修がそう繰り返すと、白いワンピースの少女──ひよりは、ほんの僅かにうなずいた。


 空色の髪が静かに揺れる。

 その表情は乏しく、けれど、どこか懐かしいような、哀しみを含んだ雰囲気を漂わせていた。


「にゃう?(この子、やはり、ただの幽霊じゃない……精霊の類か?)」


 ノクスが唸るように小さく鳴いた。


「ノクスが言ってる。何か、違うって……普通じゃないって」


 愛菜がこわごわそうに伝える。


 だが、結はなお不思議そうな顔で、棚の奥を見つめたまま首をかしげていた。


「……何も、見えない。でも、何かが……いるのよね?」


 修は軽くうなずき、再びひよりに向き直る。


「どうして、ここに現れた?俺に、何か伝えたい事でもあるのか?」


 ひよりは少し首を傾げた後、小さな声で言った。


「……夢の中で、呼ばれたの。誰かが……“書を見ろ”って。そしたら、気がついたらここにいたの」


「にゃう(書、だと……?)」


 ノクスの耳がぴくりと動く。


 その瞬間、ひよりの手元に──何もなかったはずの空間に、ふわりと“それ”が現れた。


 白く、何も記されていない本。


 ページの端が、風もないのにゆっくりとめくられた。


「これ……なんだ?」


「名前は……《空白の書ーーリーベル・イナーニス》。たぶん、私の記憶と、未来が入ってる」


 ひよりの声が、わずかに震えた。


「でも、本当は──読んじゃいけないの。見せていいのは……お兄さんだけ」


「……俺?」


 修が驚くと、ひよりはそっと本を差し出す。

 修がその本に手を伸ばした瞬間、ページの文字が浮かび上がった。


 それは、今まさに図書館にいる修達“オカ研の関係者”だった。


 雨城 修、君鳥 愛菜、黒咲 結、ノスフェラトゥ──

ノクスの本名であると少し前に聞いたがまさかノクスまで……


 そして、浜野 京介の名と、その横にある謎の一文。


『浜野 京介──彼は、まだ思い出していない』




 修の手がぴたりと止まる。


「これ……どういう意味だ?」


 ひよりは首を振る。


「分からない。でも、この本は“真実じゃなくて、これからそうなるかも知れない記憶”を書くの」


「未来予測……いや、予兆、か」


 修が呟いた時、ノクスが低く唸った。


「にゃう(……ヤバいのが、近づいてるにゃ)」


 次の瞬間、図書館の奥──使用禁止となっている古文書室の扉が、ぎ……っと音を立てて開いた。


 誰も触れていないはずのその扉。


 奥から漂ってくるのは、異様な湿気と、重たい空気。


 ひよりがぽつりと呟いた。


「“囁き”が近づいてる……今夜、扉が開く」


 修は本を閉じ、強く言った。


「行くしかないな。……何がいるか、確かめよう」


 その決意に、ひよりはそっと微笑んだ。



 その夜、誰もいないはずの図書館で、“誰かの声”が確かに聞こえた。


 それは人のものではない、けれど確かに、誰かに向けた声だった。


 世界の奥で、記憶と未来がゆっくりと混ざり始めていた──


 次回予告


 第52話『ひよりの残滓と、もうひとつの部屋』


 古文書室の扉が開く。


 そこにあったのは、封じられた“別の記録”。


 少女・ひよりの過去にまつわる“最初の断片”が浮かび上がる。


 囁きが近づく……それは一体何なのか──

そして、“先生”の忘れた記憶とは……?


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