12番目の記憶
遠い地の片割れに起きた悲劇も、母の死も知らず。
別の地にて。仕事を引き受けたティ。
「下山できるか?」
一緒に依頼を受けたA級ランクのグループ三人に声をかける。酷い顔色をしていたが、何とか頷いてくれた。
「ポーター、ついて行ってくれ」
「それでは、アナタひとり。いっしょ、げざんする」
俺は首を振った。
「今夜、また喰いに降りるタイミングだ」
「わたしたち、アナタ、ここでビバークしてまつ」
「……降りてくれ」
雪山。最初ポーターだけでも五人いたし、冒険者も銅・銀も含め10人越えでいた。総勢三十余名のレイド。だが魔道具の不具合が起こった。登山をフォローするそれが異常値になった事で、高山病のような症状や凍傷などで、命の危険がある者が続出した。その上、先ほど吹雪で分断され、いつしかこんな状態になってしまったのだ。
この山の上にドラゴンが住み着き、三日に一度町を襲っているという。本来、別の大陸に住むそれがどうしてこの大地に降り立ったかわからない。それもまだ幼竜。誰かが他の大陸で親を倒し、それの一部をこちらに持ち込んだ事で、引き込んでしまったのかもしれないというのが概ねの推理。ただ大切なのはこの地にドラゴンが降り立った経緯ではなく、今、標的になっている町があるという事。
町に降りてきた時に攻撃したが、戦果は上がらなかったようだ。火を吐くので、その町は全壊した。
今はその隣町が標的になっている。頭がいいのか、攻撃さえしなければ食べつくしたり、焼き尽くしたりせず、目標にした家を壊して出てきた人間を一度に五~六人程度食べたら去っていく。その代わり食べられなければ、また次、また次と家を壊して……知恵がついたか地下室まで掘り返し、人間が隠れている所を探すようになったそうだ。退避出来る者は町から動いたが、動けない老人は残ってワザと贄となっているとも聞く。
「後ろを気にしながら戦う余裕はない」
「だからこそ、もどろう」
「今夜、確実に町の誰かが死ぬ、という事でイイか?」
ポーターが息を飲んだ。腕の立つ冒険者を集め、国からの依頼で始まったこの仕事。この地でまだ日の浅い俺は余り知られておらず、書類審査の不具合で紛れ込んだマスコット扱いだった。
だがココに来る二日間で、そこそこ働いた俺はきちんと冒険者として認められていた。それでも一人残すのに抵抗はあるのだろう。ポーターとしての矜持もあってか、彼は一際撤退を進めた。
「別に分かれた隊が向かってくれているかも。だからティが行かなくても」
「それは俺に冒険者をヤメろと言っているのか?」
冒険者の一人の言葉に言い返す。先ほどドリーシャを斥候に飛ばしたが、感知能力が高いらしく、かなり上空を飛んだのにも拘らず目が合った。遠目とは言えドラゴンの回りに動くモノ、人影は見受けられなかった。
人手不足どころか誰も居ないのだが、言えば止められるので口にしない。この時間も正直惜しい。
「……あす……むかえにくる。いいね?」
下山の危険性と明日も生きていて欲しいという、気遣いからそう言ってくれるのがありがたい。無駄になるかもしれないが。そう言うのを押さえて俺は頷いて、懐から塊を取り出す。
「こいつを頼む」
「くるぽ!」
山の上のはるか上空、冷たくなるまで飛んでくれた彼女を胸で温めていた。それを取り出し、ポーターに託す。ドリーシャが普通の鳩ではないとはわかっていても、死地に連れて行くにはもはや縁が深すぎた。
「くるくるくる……っ!」
極薄だが結界をかけておいたから、半日は身動きできないだろう。不満そうに首を前後させるのが笑いを誘う。小さい体、羽毛だけではこの寒さへの耐久は短い。さっき飛んでもらったので魔力を送ってやったが、体力もまだ回復していないようだ。
「行ってくる」
撫でてやったドリーシャがクルクル鳴いている声以外は無言で送り出される。
国からの依頼だ、誰も『行かなかった』では示しがつかない。それを冒険者なら誰でもわかっている。連帯責任、ただ誰か一人でも行って『頑張ったが、失敗した』なら無様であっても格好が付く。彼らも口先でははぐれた別隊が向かっているのではと言ったが、それは確信ではなく、誰でもイイから何かしらのアクションをしてくれる事を求めていた。
俺が雪山でも比較的元気なのは、先ほどドリーシャに張ったような結界を上手くスーツ状態にし、伸縮を持たせ全身に纏っているから。他の者に施せればいいが、先ほどのドリーシャのように固める事は出来ても、肌感覚がわからない他人を自由に動くようにするのは難しく、複数人に施すのはまず無理だ。
もともと結界と言うのは固定の場所に展開する物で、盾にする者は居ても、そんなの着ている人間は見た事がないとあきれつつ言ったのは師匠だ。
これも寒さや空気濃度を簡単に調節できるだけ、防弾にするにはやはり厚みを作り、盾や壁など固定結界にするしかない。
こうして一人になって三時間。
身体強化の魔法で頑張っているが、積雪は体力を消耗する。いつかもう少しまともに飛べるような魔法を身に付けてやると考えた、その時やっとドラゴンを視界に収めた。
形は蛇のような長さはない、地球で西洋の紋章にみるドラゴンそのままだ。青みを帯びたグレーの大きな体躯は象を思わせ、オレンジの瞳が印象的だ。高さは三メートルほどだが、畳んだ蝙蝠羽を広げるともっと大きい。これで幼体と言うのだから、親となればもっと巨大なのだろう。
岩に隠れつつ、近づく。見つかって岩ごと吹き飛ばされれば意味はない。けれど散歩気分で歩み出せる相手でもない。
近づくにつれ、雪が解け、灰色、そして黒の地表が見える。ドラゴンの体温か、その身に纏う魔法が適正な居住温度を作りだしている。俺はソレを見ながら『壁』を感知する。
それこそ先ほど話していた固定結界だ。俺のではない、ドラゴンの。その場を適温に変えるだけではなく、上からの急襲を避ける為、かなり強固な半円結界を構築していた。
斥候からもたらされた情報により、飛べる者を駆使しての戦闘は組まれず、地道に登山、結界開錠、戦闘開始という計画がたてられた。ちなみに当たり前ながらドラゴン側からは攻撃できる仕様だ。
俺の仕事は戦闘よりも結界を解く、魔法使いとしての役割がメインだった。
だが、状況が変わった。俺はドラゴンの結界の全解除ではなく一部だけを解き、魔法を放り込み、とりあえず今晩だけでもドラゴンを動かない程度でもダメージを与え、時間を作ろうと思った。そうすれば、最初に具合を崩して下山した数人が、隊を組み直して来てくれるだろうと。
「gggggggggggっgggっ!」
この世のモノとは思えない鳴き声に、耳に入る音を絞るが絞り切れない。いつもあるかないかわからない頭の耳がビクリと反応して立つ。それにしても腹が立つ音なのは、何なのだろう?
「しまっ……」
俺は左腕が入るだけしか開けていなかった結界が開き、同時に自分の後ろで『閉まる』のを感じた。ドラゴンが結界の中に『俺』を入れたのだ。
「ぐふっ」
無様に自分の放った魔法の暴風雪とドラゴンの動きが巻きあげる岩や何かにぶつかる。頭に直撃していたら死んでいただろう。俺は伸縮する薄い結界を解き、小さな半球結界を作る。カマクラのようなそれを自分が入るだけ小さく、その分、強力に張りあげる。
「……三層……ちっ、プラス三層!」
視界が悪い、何があっているか全くわからない。ともかく削られる壁を体が巻き込まれぬように次々追加で構成していく。その厚みを作るのに俺の中の力が使われ、ガツガツ減っていく。ドリーシャから始めて引っ張られて抜かれた時のように、気が遠くなる。だがここで倒れて結界の張り直しが続けられなければ、死に直結する。
狭い世界で俺の魔法と何かがぶつかり、奔流が起きる。こないだ聖国に投げつけた魔法に囲いはなかったが、局地的にはこんな感じではなかったかと冷静に思う。
「や……」
もうダメか、そう思った時、ふ、と、視界がクリアになる。目の前のグレーのドラゴンには赤く光る『亀裂』が見えた。少しは傷がつけられたのか? そう思った。
その時、俺はドラゴンの回りにいろんな欠片を見た。そして暴風が俺の回りにまで届けたソレらに背筋が寒くなる。
「ぶき? あれは剣士の、あの戦斧は茶色のドワーフ、あのマントは……」
剣士は腰に佩いた剣を抜いて、群れで来た魔物を一騎当千の動きで倒してくれた。寒いだろうと熾す火の薪をコツコツと斧で切っていたドワーフのおっちゃんも、魔物を倒し出せば素晴らしい古豪だった。マントはポーターの若者で今回の稼ぎがよいと新調したと笑って語って……弓に、錫杖……瓦礫の下、他にも血まみれの『遺品』が二日、たった二日だったが、行軍を共にした冒険者やポーターのモノだったとわかる。
中でも俺の側に突き刺さった二本の槍は、精霊国のギルドがローカルルールを教えるためにと、最初にサポートに付けてくれた槍戦士の兄と妹二人の武器……遺品……だ。
ドリーシャを飛ばした時に見つけられなかったが、俺が来るより先に来た彼らは、だいぶ減った人員ではあったが、作戦通りアタックをかけて……喰われたのだ。
「『終わり』にして『始まり』だと……」
ミシミシっ……何かが割れる音がする。目の前の幼体ドラゴンは定期的に人間を喰っていた。そして今夜の食事を冒険者で『済ませて』しまった……誰も幼体がいつまで幼体のままでいるかなど考えていなかった。
本当なら今日の深夜、満月の下で起こるはずだった、ドラゴンの『成熟』が目の前で起こっていた。幼体から大人に。脱皮すると言えばわかりやすいか。
「gggっggggggggggggggg!」
幼体で保護色であったグレーの分厚い皮が剥がれ落ち、マグマのように輝く赤い巨体が顕現する。
天に向かって自分の降誕を祝うように吠えれば、雲が割れ、一気に青空が広がる。足を一歩動かしただけで、地面が揺れて割れ、遺品が飲み込まれていく。
「……あああああああぁっ!」
自分が何かを口にした所で絶対に覆らない目の前の生き物に、何様だ、生意気だ、と、よくわからない感情が渦巻く。
ヘイトを取る必要もないのに、何故叫ぶようなマネをしたのか自分でも意味がわからない。先ほど以上に大きくなった、その畏怖に発狂したわけでもない。けれどそうすべきだと、思ったのだ。自分でもわからない叫び声に対し、燃える火のようなオレンジ色の瞳がこちらを向く。
俺はいつしか握っていた赤い刀を振りかざし、走り込む。
ガキッ!
今までこの刀を握って味わった事のない抵抗感。
「そんなの着ている人間は見た事がない」
あきれつつ言った師匠の声が聞こえる気がした。結界……着ている人間はいないが、着ている魔獣がココに居た。それも極厚なのにサクサク動けている、俺の上位版だ。
「gyyyyyyyっ」
尻尾を振り回される動きに吹っ飛ばされつつ、離れる。アレの声を聴く度、頭の耳がざわざわして気持ち悪い。
俺は赤い刀に炎を纏わせる。
あの竜の属性は炎だ。水雪が使えるのなら本当はそちらがイイ。だが体の中の魔力が枯渇しており、火の神であるかぐつちから貰ったこの刀と相性がイイのは火炎だ。
「どちらが上か……」
弾けるように黒い大地を蹴り、巨大な生物に立ち向かう。
何度も何度も。
それは数え切れぬほどの果敢に刀を振り回す。ドラゴンは火を吹き、拳を振って対抗する。
いつしか日が傾く。
小蠅を潰すつもりで招き入れた俺が簡単に潰れないのに焦れたドラゴンが足を上げた。俺は疲労困憊、もうそれを避ける瞬発力が出なかった。それを奴もわかった上での行動だったろう。
「諦める……?」
左手の刀。両手に比べ、どうしても力が弱い。それを補う為に俺は手の無い右腕を左脇に抱え込むと、右肘関節で柄頭を押す様に左手を全身で補佐しつつ、突き上げる。
「氷華炎!」
刀が纏う炎の中に氷を発生させ、高速で渦巻かせる。本来火と水氷は混ざらない。そう俺にも固定観念があった。だが、今発生させているのは俺の魔力。混ぜるのも混ざらないのも俺の自由だと割り切った時、それはドラゴンの足裏を切り裂き、抉れて跳ぶドラゴンの血と肉片と共に、俺はヤツの結界を巻き込んで解き、上に抜け出せた。
「gyyyygyaaaaaaaaaat!」
初めてドラゴンから痛みを伴う声を聴いた。ドラゴンの煮えた血が皮膚を焼く感覚がしたが無視し、そのままの勢いで鼻頭を蹴りあげ、体のバランスをとるために広げた蝙蝠羽を切り落とした。
再び響くドラゴンの声。着地と共に、ヤツの振り回した尻尾に体を薙ぎ倒される。ただ吹き飛ばされるのを良しとせず、刀を横に払い、その尻尾を切り裂いてやる。
尻尾の破片に押しつぶされつつ、すっ飛んで行く俺の体。火の神の加護を得たにしても、五歳にしては少し小さいくらいの肢体が限界を迎えたのを感じた。
「ああ……」
目の前のドラゴンはだいぶみすぼらしくなっていた。新品だった蝙蝠羽は片方がほぼ落ち、身体を支える後ろ足が一本砕けているので、バランスをとるために前足をつかざるを得ず、短い尻尾はその動きを不格好にする。
「今宵は飛べまい……」
ただ嗤う。
目的は達した。
ドラゴンの喉に提灯のような火が灯る。俺を盛大に焼いてくれるようだ。奴隷の葬儀にしては豪華だなぁ……そう思った。この後は誰かがきっと果たしてくれるだろう。
「ラスタ、ただ、君に会いたかった」
胸に入れていた緑琥珀の箱がコトリと鳴った。俺が焼け死んでも、師匠から貰った箱に入ったコレが焼けずに残っていたなら、誰かこれを彼女に届けて欲しい。
命が紙のように薄い世の中だから、箱に入れた切れ端の願いが果たされるかはわからない。何より笑いながら『もしドラゴンから踏まれても潰れないし、中身は絶対に変化しないよ』と言って渡してくれた師匠の箱が、簡単に開き、拾い主に意図が伝わるかはわからないし。貴重な緑琥珀が盗まれるだけかもしれない。
もし良心的に届けようにもハイエルフなんて会えるのか。もし頑張ってどうにか届いた所で『どなた様からでしょう?』と言われるのだろう。そうやって首を傾げる彼女を思い浮かべるだけで、嗤えてしまう。
彼女に会えなかったけれど、この世はそこそこ楽しかった、ボロボロなドラゴンから赤い火球が飛び出し、目の前が赤くなって俺が辞世を覚悟した瞬間だった。
バリバリバリバリバリバリっ
「くっくるーーーーーー」
空まで覆っていたドラゴンの結界が唐突に割れた。そして滑り込んできた巨大な白く長い何かが、俺に直撃すべきだった火炎を一身に受けた。
赤と白が交錯し、弾けて相殺される。
「ドリーシャ!?」
何が起きているかよくわからなかった。
だが、ドラゴンの火炎からドリーシャらしい、でもとても大きな白い物体が、俺を守ってくれたのがわかった。
「っ……」
いつもは俺の方から抜いていく事が多い赤の魔力が、逆に大量の青が流れ込んでくるのがわかった。俺はその支援を受けて、立ち上がる。もうどこからも出てこないと思っていた力が再びざわりと沸く。酷い痛みは魔法ですべて打ち消して動く。
俺達にもう一撃を放とうとしたドラゴンに飛びかかって、腕を無造作に振った。
「逝け」
今までの戦闘の積み重ねもあったろうが、ドラゴンを襲ったのは『暴力』としか言いようのない力だった。
赤い刀は氷華を混ぜた紅蓮の炎になって、巨大なドラゴンを焼き尽くす。指一本、動かす隙を与えない力が鎖となってドラゴンを縛る。頭の耳がブルリと震えるような、怨嗟の声が響き渡る。
いつしか暗くなっていた夜の空に、その声が響き、炎が空を焦がす様は後に聞けば、獣人国のユエの所まで届き見えていたという。
「ドリーシャ……」
豪炎を背にフラフラと彼女の所へ歩んでいく。空まで覆うドラゴンの結界が消え、小雪が舞って落ちる。白い巨体を黒い地面に横たえて、か弱くドリーシャがクルルと鳴く。
「おま、その体で鳩の鳴き声はないな……」
白い白い、けれど血にまみれた巨体は、今まで相対していたモノより細くて、スピード特化とわかる姿をしていたが明らかに『ドラゴン』だった。体は鎧のような皮膚の硬さより、その上を覆う柔らかく長い白毛が手に触れる。野宿の時に覆い、優しく包んでくれたあの手触りだった。だがその体は焦げた血肉を見せ、細く、長い尻尾まで血が滴っている。細く苦し気な息が目の前の死を俺に見せた。
「何で俺なんか庇った……」
それもドラゴンを倒す程の力までこちらに送って。
優しく撫でてやれば、赤い瞳がゆっくりと閉じかける。命が零れ落ちて行くのがわかった。もう俺の中も空っぽで送る魔力は残っていない。彼女を生かす為に残しておくべきだったが、そうすればあのドラゴンを倒しきれず、俺もドリーシャもやはり死んでいただろう……
「いや……」
このまま死なせるわけにはいかない。
俺は左手を振う。
苦し気なドリーシャを安楽死させる気などではなく、赤刀を振ったのは俺の手がない『右腕』だ。
「喰えっ!」
落とした後に、みじん切りにした俺の肉を彼女の口に押し込む。明らかに何考えているのか問う『くるくる』を聞くが、切り離したのだから戻るわけもない腕、喰ってもらうしかない。
そう、初めてドリーシャに会った時、あの毛玉は小さくて死にかけで。でも俺に手を喰って大きくなった。ならきっと、きっとそれで何とかなるはずだ、と。
腕を喰わせたドリーシャは目の前でいつもの小鳩に戻った。傷は消えていた。それでも力ない彼女を懐に突っ込み、吹雪き出した夜の山を降りる。
暫くはドラゴンの薪で煌々と明るかったが、徐々に暗くなる。夜目は利く方だが、吹雪いてきた山に、腕の出血や無理が祟り、足元がふらついた。
「おおおおおおぉい! いないかぁー」
「誰かっいないかぁー」
「おーーーーい」
小さく、声が聞こえる。あす、っと言っていたが、遭難者が多く、山頂の騒ぎで誰かが捜索隊出してくれたのかもしれない。
ふらり、ふらりと音のする方に歩いて行く。喉が干上がって声が出なかった。ドラゴンの熱か血飛沫を吸って焼かれたのだろう。
「いた、いたよ! 子供だっ」
「ティだ」
「これ以上、吹雪いてきたらヤバいぞ」
「ここからならあっちのルートがイイ」
「だれか、にもつを! わたしがはこぶよ」
「さ、山頂? わかった。だがそれはまた後だ」
掠れた声で『山頂で他の仲間の遺品を見た』事を告げると、誰かに背負われて下山した。
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