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そして二人は

私はケルの瞳をそっと見上げると、おもむろに口を開く。


「その……シンディに消極的すぎると言われたの。ケルは格好いいし、街でも有名で……おちおちしていたら他の方に取られてしまうと……だからその……」


ケルは深く息を吐きだすと、眉を寄せ不機嫌そうにぶつぶつと呟く。

(全く余計な事しかしないな……)


「……シンシア様のお話を真に受けないように……。チャーリー、よく聞いてください。私はあなたを愛しています。今までもこれからもずっと。だからこそ大事にしたいのです。私のためにしてくれるのはとても嬉しいのですが……心の準備はまだできていないでしょう?先ほど体が震えておりました。シンシア様がどう言おうとも、私たちは私たちのペースで進んでいきましょう。それに婚約を申し出た際、あなたの両親と約束したのです。結婚するまでは指一本触れないとね」


そんな約束をしていたなんて……。


「ごめんなさい、私……シンディにあなたが街で女性に声をかけられていると聞いて焦ってしまいましたの。別の女性になびいてしまうかもしれないと……」


「ふふっ、やきもちを焼いてくれたんですか?嬉しいですね。ですが他の女性に靡くなどありえない。私がどれだけあなたを想っているのか、しっかり理解されてないのですね」


ケルは体をこちらへ向けると、大きな手が頬へ触れあ。

熱情の帯びた瞳と視線が絡むと、目を逸らせない。


「あなたを今すぐにでも抱きたい。あなたの瞳に私以外誰も映してほしくない。……誰の目に触れないよう檻の中に閉じ込めておきたい」


「えぇっ!?」


彼の言葉に目を丸くすると、ケルは笑みを深める。


「とりあえずは私の愛が伝わるまで少しずつ慣らしていきましょうか」


よくわからない言葉に首を傾げると、ケルは首筋へ顔を寄せ耳たぶをペロっと舐める。

湿った彼の舌に、体が大きく跳ねた。


「ひゃっ、ケルッッ!?」


「ふふふ、可愛らしい。その下着とても似合っていますね。選んだのがシンシア様というのがいただけませんが……。触れないのでもう少し楽しませてください」


ケルは布団をはぎ取ると、私の体をじっと見つめる。

恥ずかしさに腕で隠そうとするが、その手はすぐに止められた。


「ケル、待って、はっ、恥ずかしいわッッ」


じっと見つめる彼の視線に涙が浮かぶと、訴えかけるようにダークブルーの瞳を見上げる。

私の姿が彼の瞳に映ると、ケルは一瞬動きを止め拳を自分の額へ打ち付けた。


「はぁ……自分でやっといてなんですが……これは非常にまずい……。はぁ……お嬢様もう休みましょう。明日も朝早くから土いじりをされるのでしょう」


そそくさと離れようとする彼の姿に、私は思わず彼の腕をとった。


「ケル、あの、ごめんなさい。その……結婚したら私をもらってくれるのかしら……?」


そっと顔を上げると、彼は天井を見上げ額に手を当てていた。


「なんてこと……ッッ、恥じらう色っぽい姿……潤んだ瞳……ぶつぶつ。あぁ……お嬢様それぐらいにしておきましょう、頭が爆発しそうだ。当然必ず受け取りますよ。誰にも渡さない」


ケルは逃げるように私の手を外すと、急ぎ足で部屋を出て行ったのだった。


そうして迎えた結婚式。

王都へ戻り挙式を上げると、その夜彼の部屋へと招かれる。

メイドたちに丁寧に磨き上げられた肌に、シンシアにもらった下着を身に着けた。

とうとう今日……ケルと……。

ドキドキしながら寝室で待っていると、扉がゆっくりと開く。

燕尾服ではないタキシード姿。

この人が私の旦那様になったのね……。


改めて実感していると、彼はベッドへやってきた。

彼の手が私の頬へかかると、ゆっくりと体が後ろへと倒される。

ようやく彼を……。

彼を受け入れそっと瞳を閉じた刹那、バタンと扉が開いた。


「お姉さま~~~!やっぱり寂しいですわ~~!!」


バタバタバタと走り寄ってくると、ケルを突き飛ばしシンディが私へと抱き着く。


「えぇ!?シンディ!?」


「腹黒な男にお姉さまを渡すなんてやっぱり嫌!あらっお姉さま、その下着着てくれたのですね~嬉しい。とっても似合っていますわ」


何が何だか突然のことに狼狽していると、ベッド下へ突き飛ばされたケルがゆっくりと立ち上がった。


「シンシア様……何をしにきたのですか?私たちの邪魔をしないでいただきたいのですが、今すぐに出て行ってください」


ニッコリ深められた笑みから怒りを感じる。

ブリザードが吹き荒れブルっと体を震わせると、扉から別の声が響いた。


「おい、シンシア、何してんだ!」


「マーティ様~、だって純粋で美しい御姉様が腹黒に取られると思うといてもたってもいられなくて……黒く汚れてしまいますわ~」


マーティンは深く息を吐きだすと、シンシアの首根っこを掴みベッドから引きずり下ろした。


「すまない、邪魔をしたな」


「まったくですね、しっかり見張っておいてください」


「ぃやぁ~お姉様が汚れてしまう~~~!!!」


手をバタバタとさせながら引きずられていくシンシアを見送ると、扉が閉まり静寂が訪れる。

先ほどの甘い空気はなくなり、何だか笑いが込み上げてきた。


「ふふふっ、シンディったら」


「笑いごとではないですよ。最後の最後まで邪魔を……私がどれだけこの日を待ち望んでいたと思っているのですか?」


「私もよ、ケル、愛しているわ」


ムッと膨れる彼の手をベッドへ引き寄せると、深い口づけを交わした。

**********************

いかがでしたでしょうか?

最後の最後までシンディに邪魔をされてしまいましたが……(-_-;)

追加ストーリーは以上となります!

ご意見ご感想等ございましたら、お気軽にご連絡ください(*'▽')


これからも皆様に読んで頂けるような物語作りを頑張ります!

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