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閑話:大好きなお姉様7

そして決戦の日、婚約破棄が行われると、裏庭の入り口にケルヴィンと王そして王妃の姿。

成功したことに、思わず口角があがると、慌てて表情を手で隠す。

そして王子にも気づかせ、私の計画は成功した……とそう思った。


嘘の婚約破棄を皆に聞かせ、正式な婚約破棄すれば、王子はもう誰のものでもない。

さすがに面と向かってお姉様の気持ちがわかったんだし、好きという気持ちも薄れているでしょう。

そう私は確信していた。


だけど実際はそう上手く事は進まなかった。

貴族社会にあっという間に婚約破棄が広まったが、正式な発表は先延ばしにされてしまう。

王子は焦って私の屋敷へくるが、お姉様は執事と一緒に出て行った後。

両親へ上辺だけの謝罪をするが、私は自宅謹慎を言い渡された。


まぁ婚約破棄は時間の問題かなぁ。

そう考えていた、それに信頼できるケルヴィンが一緒だとのことで両親は捜索すらしない。

みんなあの腹黒に騙されすぎ、だけどお姉様を連れて出て行ってくれて、全てが上手くいった。

初めて彼がいてくれてよかったと思ったの。


学校へも行くことが許されず、部屋に閉じ込められる間、はやく婚約破棄が現実になれと……そればかり考えてた。

だけど婚約破棄は保留にされ、お姉様の返答を待つと結論に至った。


ようやく謹慎が解放されると、私はすぐにお城へ向かった。

そこで見たのは憔悴しきった王子の姿。

これはチャンスと、私はそこにつけこもうと考えた。

だけどそんな隙なかったの。

泣くわけでも怒るわけでもなくて、只力ない笑みで笑って、ずっと自分を責めて……。

その姿にとんでもないことをしてしまったと、やっとわかった。


ケルヴィンからようやくお姉様の居場所の報告がくると、私は強引に王子を連れ出し、別荘へ向かった。

そこで初めてお姉様と本音で話をした。

もう元に戻るなんて無理だと思っていたから、正面からお姉様と話せて嬉しかった、認められた気がした。

大好きな、大好きな、私のお姉様。



そして今、婚約破棄が成立し、お姉様がいた別荘を背に、山道を馬車がゆっくり進んで行く。

雨で地面がぬかるんでいる為、牛歩だ。

ふと隣へ視線を向けると、小窓から差し込む夕日をじっと眺めるマーティンの姿。

けれど悲しげで苦し気な感じではなく、どこか吹っ切れた表情を浮かべていた。


「……何だかマーティン様、スッキリした顔をしてますねぇ。もっと落ち込むのかと思ってました」


「いや……落ちこんでないわけじゃないが……。でも初めて彼女の本音を知れて嬉しんだ。これも全部シンシア嬢のおかげだな。ありがとう」


婚約破棄を提案して落ち込んだ私を気づかっているのだろう姿に、胸がキュンッと締め付けられる。

本当バカだなぁ、でも……これだから好きなんだよねぇ。

その優しさをお姉様にもちゃんと向ければ、きっと二人は幸せになっていただろう。

そう思うが、心の底ではそうならなくてよかったと安心する自分がいる。


「ねぇ、マーティン様。もう一つ提案あるんだけど」


「うん、なんだ?」


彼は小窓から視線外すと、キョトンとした表情でこちらを向いた。


「マーティン様は恋愛結婚に憧れてるんですよね。ならそれ私としませんか?」


「はぁ?どっ、どういうことだ?」


私の言葉にマーティンは大きく目を見開くと、何が何だかわからない様子で固まった。


「私はマーティン様を好きなんです。お姉様を想う姿が大好きです。だからですねぇ~、マーティン様が私に恋すれば恋愛結婚成立です!お得でしょう?」


「おいおい、一体なにを……ッッ冗談は……」


私は狼狽するマーティンへ顔を近づけると、逃がさないようギュッと首へ巻き付いた。


「ちゃんと聞いてください、冗談じゃないですよ。それに婚約破棄した今、城へ戻れば目の色変えた令嬢に囲まれます。ギラギラと獣のような令嬢たちの相手をするのは大変でしょう!その点、私を婚約者にしておけば、全て蹴散らしてあげます!それに……今はまだ無理かもしれないけれど、絶対にマーティン様を幸せにします。あんな悲しそうな顔一生させない。だからね、お試しでこのまま婚約しませんか?」


精一杯可愛く見えるよう笑みを浮かべると、彼の顔が赤く染まった。

恥ずかし気に視線を逸らせる彼の姿に、私は身を乗り出すと、そのまま唇へ唇を重ねる。

するとゆでだこのようなマーティンが出来上がった。


「……ッッ、ちょ、おい、なにを……ッッ、」


「その反応は~全く脈なしってわけじゃないですね。ふふっ、不束者ですがこれから宜しくお願いします!さぁ王妃教育頑張らなきゃ!」


「ちょ、おいおい、気が早すぎるだろう!?」


焦る彼に向ってそう笑うと、彼もつられて笑い始めたのだった。

――――――――――――――――――――――――――――

最後までお読み頂き、ありがとうございます!

無事に完結出来て、とても嬉しいです(*ノωノ)

個人的にはシンシアは結構好きなんですが、いかがでしたでしょうか?

前作「逃げて、追われて、捕まって」では全員を幸せにできなかったので……。

今作は幸せな気持ちで終わろうと思っておりました!

ご意見ご感想とございましたら、いつでもご連絡下さい。

必ずご返信いたします(*ノωノ)

それではまた次回の作品でお会い出来れば嬉しいです。


(個人的には綺麗な幕引きかなぁと思っておりますが、こんなのを読みたいとのご意見がございましたら、ぜひ教えてください!完結後、ゆっくりですが更新できればと思います!)


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― 新着の感想 ―
[一言]  ケルちゃんと無事シャー子ちゃんがゴールインできたことでスッキリしたところで、妹様と王子様も。確かに綺麗な幕引きでしたね笑 ただ、妹様はお姉様から色々奪ってきた点に関して最後まで反省していな…
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