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婚約成立?

婚約が成立すると、自由な時間を削られ、王妃教育が始まった。

ケイトお姉様に会いに行くことも出来ず、城での業務をこなすと屋敷で過ごす毎日。

せっかく夢中になれるものを見つけたのに……。


王妃教育は難しいものではないけれど、儀式、様式があり、早々に知識を詰め込んでも15歳まで続けなければいけない。

何とも硬い伝統と言えばいいのか、王妃教育とはとコンコンと聞かされた時は、思わずため息をついてしまいそうだった。

だけど令嬢としてそんな態度を見せられるはずもなく、私はニッコリと笑みを浮かべ続けた。


それにしてもどうして婚約が成立してしまったのかしら?

これが何度考えてみてもわからない。

王子が私に好意的であれば、まだ納得は出来るわ。

私の方は正直どうでもいい、いえ良くはないけれど、結婚や恋愛に執着はない。

それよりも知識を深めることが好きだから。


そうして慌ただしく一日が過ぎていき、あっという間に2度目の顔合わせがやってくる。

さすがに今日は正式な婚約者。

もうすこしマシな態度を見せてくれると、信じているわ……。

メイドに案内され、テラスへやってくると、そこにはすでに王子が待っていた。

彼は私の姿を見るや否や、慌てて視線を逸らせる。


あの態度……どうして婚約が成立したのかしら……。

私は心の中でため息をつくと、風で揺れる木々から、心地よい鳥のさえずりが耳にとどく。

こちらへ顔を向けない彼は、口を結んだまま開こうともしない。

シーンと静まり返り、どうしたものかと空を見上げた。

どうしようかしら……とりあえず何か話さないとね。


「マーティン様、今日はとても良い天気ですわね」


他愛のない天気の話を振ってみると、彼は琥珀色の瞳を細めながらこちらへ顔を向けた。


「あぁ……だがそれがどうした」


素っ気ない返答に頬の筋肉が硬直していく。

ちょっと前面に不満をだしてくるじゃない!?

仮にも婚約したのだから、隠そうとはしないのかしらね……?

私は引きつりながらも、何とか持ちこたえるとしっかり笑みをはり付ける。

あぁ……会話が続かないわ。

というよりも、会話する気がないわよね……。


「いえ、ごめんなさい。特に意味はありませんわ……」


そう応えると、彼はプイッと視線を逸らせ顔をそむけた。

これはかなり嫌われているわね。

なのにどうして婚約が成立したの?

家が関係している?

いえそんなはずないわ、王族とは今も昔も懇意の仲だし、王妃と母で小さなお茶会も開くのよ。

何とも気まずい空気が流れる中、ふとこちらへ近づいてくる足音が耳にとどく。


「こんにちはーシャーロット様、この度はご婚約おめでとうございます」


声に振り返ってみると、そこには夜会などで何度か見たことがある少年が、屈託のない笑みを浮かべこちらへやってきた。

あの方は確か何度か挨拶をしたわ、それに研究所でも何度かお見かけしたわ。

名前は……カイザック様だったわね。


「カイザック様、ごきげんよう。ありがとうございます」


彼は懐っこい方で、よく一人で喋っているわ、気まずい空気をどうしようかと思っていたけれど、助かったわ。

私はほっと胸を撫でおろすと、笑みを浮かべて見せる。

これ以上あの空気に耐えられないもの。

そして彼と談笑を楽しみ、あっという間に時間が過ぎると、私はこれからの逢瀬に不安を抱えながら、屋敷へと戻って行った。

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