60 みんなでお出かけ②
アイリスは俺の手を引っ張るようにして、どんどん先に歩いていく。
「わー、すごいっ。ほんとに色んなお店があるんだね!」
「ああ。色んな人が行き交う場所だからな。
どこか気になるところはあったか?」
「んー、まずはあそこ!」
アイリスが指さしたのは、フール飴が売られている露店だった。
以前リーシアと行ったのとはまた違う店だ。
「フール飴が食べたいのか?」
「うん。ああいうの、昔から憧れてたの。
こんな風に外を出歩くのも久しぶりだから……」
しゅんとした表情を浮かべるアイリス。
リーンが意識を失ってから、彼女がずっと邸宅で塞ぎこんでいたというのは知っている。
だからこそ、俺は小さく笑って彼女の頭に手を置いた。
「なら、今日はその分楽しまなきゃな。
ただ他のが食えなくなったらダメだから、小さめにしておこう」
「――うんっ!」
パアッと顔を輝かせて、元気いっぱいに頷くアイリス。
その姿に癒されていると、後ろから不満げな声が届く。
「むぅ、アイク! アイリスちゃんばっかり!
ちゃんと私たちも構ってよ~」
「そうは言っても、今日はアイリスを案内するのが目的だろ?」
「アイリスを楽しませるのはたしかに大切。
だけどそれと同じくらい、わたしたちと遊ぶ必要がある」
フレアとテトラの二人に続いて、リーシアがぐっと身を乗り出してくる。
「ええ、ええ、フレアやテトラの言う通りですわ。
ご主人様、わたくしたちにもフール飴をぜひお買いください!
いえ、むしろ自分のために買って食べたものをわたくしにお譲りください!
二本目のコレクションにいたします!」
「コレクション? 何の話だ?」
「いえ、何でもありません。聞き間違いではないでしょうか?」
いきなり身を引き、いつものような柔らかい笑みを浮かべるリーシア。
彼女がそう言うのなら、聞き間違いだったんだろう。
そう決断を下しアイリスに視線を向ける。
「わるいな、アイリス。騒がしくなって」
「ううん、大丈夫! みんなで楽しむのが一番だからっ!」
「…………」
「えっ? えっ? どうしたの、みんな?」
アイリスの言葉を聞き、俺を含めた全員が彼女の頭を撫でる。
アイリスは困惑半分、嬉しさ半分といった表情を浮かべていた。
その後、結局全員分のフール飴を買って散策を続けることになった。
リーシアがなぜか不満げな表情を浮かべていたけど、その理由は俺には分からなかった。
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