渚のランデブー
「え? まあわかったよ。確かにイミアちゃんとはあんまり話してなかったね」
「そうです。じゃないと僕がエミアさんに色々と楽しむ様に提案し辛いんですよね。自罰的でイミアさんのような子が幸せじゃないと自身を許せないようなので」
「まあ……樹が元気になってくれるなら俺も協力は惜しまないけど、イミアちゃんを俺が世話して解決するのかねー?」
お義父さんはピンと来てないようですぞ。
モグラはお義父さんに懐いてますからな。確かにモグラの親戚には良いのかもしれないのですぞ。
そんな訳でカルミラ島のダンジョン攻略を錬と樹、ヴォルフが行っている間に俺たちはLv上げも併用することにしたのですぞ。
俺たちの来訪によってカルミラ島の活発化は拍車が掛かり、島の賑わいがより一層広まったのですな。
という訳でお義父さんと怠け豚は伯爵と相談をして島でサーカスを開いて良いとの話を付けて市場の一部の使用許可を貰ったようでしたぞ。
手広く商売を継続してお姉さんの村の復興の手伝いもしながら世界各地の波に挑んでいく手はずになるのですな。
「そんな訳で実験のお時間なのー」
「何が実験なんだよ!」
今回、俺たちが居るのはカルマードッグがボスとして出現する島の最奥部にある祭壇ですな。
ここの祭壇にある球体はイヌルト専用ダンジョンの入り口なのですぞ。
そこに現在、キールを連れてやって来てますぞ。
錬は現在、ダンジョンを攻略中なのですな。
「ほら、キールくん、挑戦」
「頑張ってキールくん」
樹の提案でモグラも一緒にキールを応援ですぞ。
このループでもモグラはキールと関係は良好なのですな。
「いや入りたくねえよ。俺はイヌルトじゃねえ!」
「まあ……イヌルトじゃなくても見た目似てるからで入れるって事もあり得るよ」
「兄ちゃん、それなんのフォローにもなってねえよ! 何でこんな事しなきゃいけねえんだよ!」
「ガエリオン達の情報収集なの」
「こんな事知ってどうするんだよ!」
キールがキャンキャンと喚いてますぞ。
「剣の勇者が居ないループで代用可能かも知れねえなの」
「俺で代用しなくて良いだろ! おい! ルナちゃん! 俺をそれに近づけるな!」
ルナちゃんがキールを抱えて祭壇に上りますぞ。
「勇者たちが妖精姿に変身できる魔法が判明した時にキールはいなかったなの。だから実験なの」
「別の可能性って世界の話で俺がいねえってあんまり聞きたくねえけど、だからってこの俺で実験すんな!」
「まあまあキールくん。君と錬しか俺たちの仲間で入れないって事かもしれないからさ」
「専用って言われてもよー」
何てぐずっていたキールですが最終的に挑戦することになりましたぞ。
「ダメだ。なんか弾かれて入れねえよ!」
「そっか……やっぱ無理かなー」
「盾の勇者様、これ」
「あ、そうだね」
と言いつつお義父さんはモグラが取り出した代物、キールの頭にサンタ帽子を被せますぞ。
「兄ちゃん何すんだ! うお!」
ズボっとキールがダンジョンに入って行きましたぞ。
入れるようですな。
「まあ似てるからダンジョンが勘違いしたのかもしれねえなの。もしくは本当にキールはイヌルトの親戚なのかもしれねえなの」
実験成功なのー! とライバルは検証を終えたようですぞ。
「嬉しくねえよ! 俺一人でダンジョン行く意味あるのかよ!」
「奥の方に宝があるなの。後で剣の勇者と遊んでくればいいなの」
「そんな訳だから、キールくんもまあ頑張ってね」
「……イヌルトのクラスアップアイテムをキールに使ったら本当にイヌルトになるかもしれねえなの」
「俺で実験すんなよマジで! まったく!」
などというやり取りはありましたが、俺たちのカルミラ島でのバカンスは過ぎていくことになりましたぞ。
当然の事ながら活性化期間の延長が確定したので伯爵も期間限定の収入が恒例になるとの事でホクホク顔でしたな。
「ユキちゃん、こっちに来るのですぞーブルンブルンー」
「元康様待って欲しいですわー」
俺はウサウニー姿でドライブモードをして、ユキちゃんと一緒に渚のランデブーをしますぞ。
あははは……うふふふ……ですぞ。
「ほっほっほ」
そんな様子を島に誘った仙人が楽し気に見てましたな。
「まあ……ウサウニー姿でなら絵的に受け入れられるかなー」
「人間基準ならそうなのでしょうけど……」
「獣人基準だとちょっとギョッとするぞ」
ウサギ男とワニ男がお義父さんの近くで俺のドライブモードにケチを付けましたぞ。
何か文句があるのですかな?
「ヴォフッペーン! ナオフミ様、海で遊ぼうペーン」
「ヴォルフはペックル姿を満喫してるなー……特殊能力も色々と手に入れたみたいだし、島の坂とか上って行くのを見るとなんていうか……ダイエットがテーマのゲームが浮かぶな。ピンクの酷い雌ペンギンはいないが……思えば酷い彼女だな」
「岩谷様が何を言っているのかわかりません」
俺も分かりませんぞ! 赤豚の事ですかな?
「ヴォフー」
ちなみにお義父さんもヴォルフの後でペックルの特殊能力はダンジョン攻略で習得させて貰ったようでしたぞ。
「ユキちゃん、見てるのですぞ! 右の足が沈む前に左の足を前に出す、これで海を走れるのですピョン!」
スタタタと海を走って行きますぞ。
「うわ……なんの冗談だろ。海の上を走ってる」
「フィーロたんもお義父さんの援護魔法を受けてやってたのですピョン!」
「ああ、リベレイション・オーラを掛けると出来るのか……凄いな」
「なんの冗談でしょうねアレ」
「テオも追いかける? 元康くんがウサギだから絵にはなるかもよ?」
「アレに混ざるのもどうなんでしょうね」
「走り方次第で絵にはなりそうだが……」
この俺がカルミラ島を満喫する術を伝授してやるのですピョン!
「他にもこういう遊びがあるのですピョーン! 見てろですピョン!」
俺は槍を天高く掲げて力強く振り下ろしますぞ。
すると海が綺麗に裂けましたのですピョン!
「ほらユキちゃん! 海底走行ですピョン! 水が戻って来る前に走って海の中を見るのですピョン! 綺麗なのですピョン」
「ハイですわー!」
「海を割ってる……某十戒もびっくりだね」
「あれは遊びで片づけて良いんですかね?」
「この辺りって遠浅らしいから……まあ、そこまでは困らないのかも?」
「あ、なんか楽しそー! みんないこー」
「おー!」
俺とユキちゃん、そしてついてきたフィロリアル様が追いかけて来て下さいましたぞ。
海での楽しい遊びなのですぞー!
「満喫してるなー……本当、それに引き換え錬や樹はダンジョンに潜って強化中……」
「良いんでないかい?」
浮き輪を持って頭にシュノーケルを被ったパンダがお義父さんの隣に立ってますぞ。
もちろん水着ですぞ。
「ラーサさん、どこでサングラスとか海を満喫するグッズを買ったのか知らないけどさ……エレナさん並みにエンジョイしてるね」
「休みさね。それとも魔物でも倒してLv上げをする必要がここであるのかい?」
既にここでの必要Lvは超過してますぞ。
実の所、ダンジョン攻略以外で行く意味はないですが、バカンスを楽しむことに意味があるのですぞー。
「これもある意味、楽しみ方なの。ガエリオンはお姉ちゃんたちと狩りとかして遊んでくるなのー」
「みんな好き勝手やってるなー……まあ、勇者同士の連携強化が目的らしいけど既に果たしてるからね」
「盾の勇者は何処か行きたい所は無いのか? 槍の勇者の様子を見るだけが全てじゃないだろ?」
「そうそう、遊びましょうヴォフッペン!」
「やっと事件が解決したって感覚じゃないですか。終わったら色々とやって行くんですし、今のうちに遊びましょうよ」
と、三人の奴隷たちがお義父さんに提案してますぞ。




