二度目の肩車
「俺たちが魔法を覚えるのは良いんだけど、ツメの勇者のヴォルフは?」
「ペン?」
「ああ、これは聖武器の勇者用らしいなの」
「そうなんだ? 七星武器の勇者は覚えられないのか」
「杖の勇者なら魔法文字さえ分かれば唱えられるなのー」
クズも使う事は出来ましたからな。
そう言う意味ではクズは赤豚の本体が何が何でも封じておきたかった勇者なのは間違いないのでしょうな。
「石碑に関してはこれで良い感じかな? じゃあ次は隠された島を出すための方法だね」
「尚文はペックルじゃ無くていいのか?」
「ヴォルフが代用する事で出来るか実験かな……難しいようだったら、シオンやテオ、ヴォルフとか亜人獣人の人たちには離れて俺も変身するよ」
という訳で俺たちはそれぞれ肩車の準備ですぞ。
地面を何度も踏みしめて待機ですぞ。
「あー……ユキ、槍の勇者を三段目に載せる為に抱えて置けなの。じゃないと高らかに踏みつけて乗っかるなの」
「僕たちを踏みつける気ですか!」
「させるか!」
樹と錬が構えますぞ。
「肩車をしないといけないのですぞ!」
「お前は余計な乗り方をするから先に封じてるだけなの!」
「ラフミちゃんが楽しみそうなやり取りをしてるなぁ……」
ラフミの笑い声が聞こえる気がしますぞ。
絶対に近くにいるはずですぞ。
奴は分裂するから厄介ですぞ。
「く! ならばキールー!」
「え? ここで俺の流れ? ケルスス兄ちゃんだろ!」
キールがイヌルト枠として効果を発揮するのかの検証ですかな?
「それはしてみても良いかもしれないなの」
実験なのでライバルは否定しないみたいですな。
「ひっでえガエリオンちゃん! ならこっちだって手があるぜ! ルナちゃん! ケルスス兄ちゃんを抱えて準備だ!」
「おー」
「こらやめろルナ! 俺じゃない! キールをトーテムにするんだぁあああ!」
と、錬がルナちゃんに抱えられて暴れてますぞ。
「何やってるんですかね、さっさとやりますよ」
「ユキちゃん! 樹は水に入ると頬が膨れるのですぞ!」
「ここで何を言ってるんですか? ……確かにそうですけどね。泳ぐのが面倒ではありますが」
「槍の勇者……恒例のネタにする気なの? 前にも言ってたなの」
樹の反応が渋いのですぞ。
「見てみたいですわ!」
「ユキちゃん、ちょっと考えて発言してね。樹の頬袋が膨れて面白い場面じゃないと思うよ?」
「まあ……次のダンジョンで行われるギミックにあるなの」
「……そうですか。先に言うのは配慮ですかね?」
樹の台詞にライバルが静かに頷きましたぞ。
「根に持って暴れられると面倒なの」
「配慮されたらしょうがないですね……甘んじてその場面は受け入れましょう」
樹の反応が淡々としていて感情が籠ってないように見えますぞ。
「是非とも俺は見たい!」
錬が抗議しますぞ。
「剣の勇者……」
「ケルススだワン!」
「ギャグ仲間を増やしたいのはわかるけど、今の弓の勇者にすると面倒だから我慢してほしいなの」
「俺はどうなんだ!」
「そこまでかわいそうじゃねえから良いなの」
「ふざけるなー!」
などと錬が抗議しつつお義父さんはペックル姿のヴォルフに近づきますぞ。
「ヴォルフは俺が抱えるよ」
「ヴォフッペーン」
ヴォルフは特に暴れることなくお義父さんに抱えられましたな。
ライバルが用意した道具を武器に入れて錬と樹、ヴォルフが変化させましたな。
俺も合わせた装備にチェンジですな。
「お持ち致しますわ」
ユキちゃんが俺を抱えるのですな。
「うふふーかわいいー」
ルナちゃんがそんな俺たちの様子を満面の笑みで見つめております。
「ルナちゃん。すっげーいい笑顔」
「まあ、ここはルナちゃんにとって天国なんだろうね」
カルミラ島に妖精姿で冒険に来た際は……ヒイ、ルナちゃんはキールが居なかった所為で恐ろしい気配を宿していたのですぞ。
ですがこのループではキールと錬と遊んでいるので穏やかに微笑んでいらっしゃるので問題ないのですな。
「僕は誰が……ウサギの彼、お願いします」
「リーシアさん辺りで良いと思いますが……まあわかりましたよ」
ウサギ男が樹を抱き上げましたぞ。
で、錬、樹、俺、ヴォルフで肩車してトーテム完成ですぞ。
「じゃあ……みんな、手を放してねー」
「お義父さんが俺の上じゃないのが残念なのですぴょん」
腹いせに樹の顔を足で挟んでやりますぞ。
と、したのですが樹の奴、がっちり俺の足つかんで挟めないのですぞ!
「あなたがやりそうな手口は先に抑えて置いてますよ」
く……小癪なですぞ!
「槍の勇者、大人しくしろなの。なおふみも注意するなの」
「うん。元康くん、じっとしててね」
「お義父さんがよじ登らないので何もしないですぴょん」
あの時のお義父さんが登って来る光景はちょっと魅力的ではありましたな。
「まあ、ペックル姿って……足が短いからさ。これで……このトーテムを上るのは結構大変だよね」
お義父さんの魅惑のお腹なのですぴょん。
ふかふかなので触り心地は良いのですな。
ヴォルフのお腹? 違うのですぴょん。違うのですぴょん! 生暖かいけど違うのですぴょん!
「何か元康くんが動かないけど騒がしい気がする」
「じっとしてても五月蠅い奴なの」
「酷いですぴょん!」
そうして……トーテムの前で肩車をしているとビリビリっと迸りましたぞ。
前にも経験ありますぞ。
トーテムの周囲と俺達が立って居る場所が輝き始めるのですな。
カッと地面に赤い稲妻のような物が走ってゴゴゴ……と物音がし始めますぞ。
同時にトーテムの開拓動物の目が光りましたな。
「ギミックが発動したなの。もうやめて良いなの」
「てい!」
「うお! ですぴょん!?」
「ペン!?」
ここぞとばかりに樹が俺を投げましたぞ!
そのまま落ちそうになったので華麗に俺は二段ジャンプで着地してやりましたぞ。
「何をするのですぴょん!」
「いつまでも僕に乗らないでください。不愉快です。僕は乗る側です」
「だからお義父さんによく乗るのですかな!?」
「仲悪いなぁ……」
ヴォルフは着地失敗して転がってますぞ。
樹は何事も無かったかのように錬から降りてますぞ。
「いてて……」
「ヴォルフ大丈夫?」
「ぺーん! 大丈夫」
お義父さんに心配されてヴォルフが起き上がりましたぞ。
「樹が酷いのですぴょん!」
「まあまあ……原因は元康くんだよ」
お義父さんが抗議に対して宥めている間に海岸の方で島が浮上して行ったのですぞ。
「アレはなんだ!?」
「新しい島!?」
「さっき、カルミラ島の原住民と呼ばれた生物が居たぞ」
「勇者達らしいぞ。その勇者が島の謎を解いてるらしい」
「すげぇえ……」
と、まあ、他のループでも聞いたやり取りが聞こえてきますな。
これで島の活気も更に増すでしょうな。
「話は聞いてましたけれど……充当ですね」
「あの島にあるダンジョンは勇者というか開拓妖精姿だと入れるんだっけ」
「なの」
「ガエリオン詳しいわね」
遠目で見ていた助手が呟きますぞ。
「なの!」
どう誤魔化しているのか疑問ですな。
夜にお義父さんに聞いた所、俺の槍を介して別ループの記憶を得たと説明したそうですぞ。
事実ですがそれで受け入れるのですな助手は。
ちなみに既にジャックは助手の胸元に装着されてますぞ。
哀れですピョン。
そうして島へと上陸ですぞ。
「ペーン」
「ヴォルフはなんていうか……狼なのかペンギンなのかよくわからなくなってきたねー」
「行くぞー」
「おー」
で、錬はキールと一緒にルナちゃんに乗って島に行くようですぞ。
「待ってくださいレ――」
「名前を間違えるなワン!」
錬の仲間に錬は何度もキャンキャン注意をしてますぞ。
水鳥のように進むのですな。
ユキちゃんも俺を乗せて進んで下さってますぞ。




