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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
1211/1287

満たされている

「あ、ごしゅじんさまー! チョコおいしーよ」


 俺が詰問するとラフミは鼻で笑った後に微笑を浮かべて口を開きましたぞ。


「わからんのか?」

「勿体ぶるなですぞ!」

「わからないと思うよ……何をしてる訳?」

「やれやれ、私の苦労を理解できないとはな。盾の勇者、お前はフィーロを少々甘やかしすぎたのだ」

「いや、甘やかすがなんでメスガキ教育になっちゃう訳?」


 フィーロたんに教えているこの妙なセリフはメスガキ教育という代物のようですぞ。

 お義父さんは物知りですな!


「いやな、どうも当初こそ割とハキハキとしていたのだが環境か、はたまた平和すぎるからかフィーロが徐々にサクラ化してきてな。ボケーっとしているので私が教育してフィーロである事を維持しているのだ」

「チョコーザァコザァコー」


 フィーロたんがラフミにチョコを要求してますぞ。

 ピン! っとラフミが追加でフィーロたんにチョコを飛ばしますぞ。


「サクラ化って……フィーロちゃんの別の可能性だっけ?」

「うむ。おっとりとしたフィロリアルでな。ボケーっとしている事が非常に多いぞ」

「ここにいるのはサクラちゃんではなくフィーロたんですぞ!」


 ラフミは何を言っているのですかな!


「だからそのフィーロが平和な環境の所為でサクラみたいな面になってきているのだ。見ろ、この腑抜けた面を!」

「んー?」


 フィーロたんがとても幸せそうにボーっとした顔をしながらチョコを食べて居ますぞ。

 もちろんフィロリアル様のお姿ですぞ。


「フィーロになるように色々としたが所詮は付け焼刃。飼い主がこれでは徐々にサクラになっていくという事だろう」

「それって遠回しに俺を馬鹿にしてない?」

「そうは言っていないだろう? 世間の理不尽にさらされずにいろんな連中に守られていたらこうもなろう」


 ラフミが訳の分からない事を抜かしてますぞ。


「まあ、油断がならない状況というのも時には重要という事かもしれんが……まだ軽く調整する程度で済みそうだからこのように教育しているのだ」

「それはそれで何か違うフィーロちゃんになりそうじゃない?」

「やや過激な教え方をしないと調整は難しいのだ。本来はメスのコウと言った程度で落ち着くのだが……このおっとり具合は所詮はサクラという事なのだろう」

「ぶー……なんか悪い事言われてる気がするー」


 おおう。フィーロたんがラフミに馬鹿にされて抗議してますが、この抗議の弱さはサクラちゃんを髣髴するのは事実ですぞ。

 フィーロたんとサクラちゃんは同一の存在だと思わせる出来事ではありますが違うのですぞ!


「槍の勇者に飛び掛かれるのを解禁するかとも思うがそれは劇薬で最終手段だ。病まれるのが一番困る。それならまだ見た目フィーロのサクラで良いだろうしな」

「フィーロたんを解放しろですぞ!」

「今もしているぞ? お前からな」


 くっ! ですぞ!

 絶対いつか痛い目に遭わせてやりますからな!


「まあ、満たされているが関心を持てる相手がそんなに居ないのが原因かもしれん。もう少ししたら興味を持てる相手との出会いがあるだろうしそれまでの辛抱だと思っていろ。勇者共」


 ラフミめ! もしや婚約者が来るのを待っているのですかな!

 俺にフィーロたんに触らせてくれない癖に婚約者を優遇するとはどういう事ですぞ!


「そもそも最初の世界でのフィーロはこの頃、毒舌だったそうだぞ。クラスアップの夢は毒を吐けるようになりたいだったそうだ」


 フィーロたんがそのような夢を持っていたのですな。

 毒と言えばみどりとヒヨちゃんがフィロリアル様の中では印象的でしたぞ。

 もちろん解毒も得意なフィロリアル様で、その辺りの感知能力も高かったですぞ。

 お義父さんが料理する際に本来の回復適正からの肉の熟成促進の他に毒によるうま味強化などをする際にみどりたちの力を利用したりしていたのを覚えております。


「んー……? ぐー……」


 少し目を離した隙にフィーロたんはお眠りしてしまったのですな。

 可愛い寝息が聞こえますぞ。

 そんな幸せそうなフィーロたんの寝顔をお義父さんは苦笑してラフミに注意しますぞ。


「一応ラフミちゃんなりの調整って事にしておくけど変な手癖をフィーロちゃんに教えないでね?」

「問題ない範囲で抑えておく。盾の勇者の配下である三匹奴隷共を見てれば危機感を抱くかと思ったのだが、所詮は元がサクラか」


 ふと、ここで先ほどちらりと見たヴォルフやワニ男たちが思い出されますぞ。



「677……678……」


 組み立てられたチェストプレスマシンで相当量の重りをワニ男が黙々と持ち上げておりました。

 ガチャン! ガチャン! と音が続いているのですぞ。


「770……771……」


 その後ろではヴォルフがやはり大きな重りがついたバーベルを両手で持って重量挙げのような事をしてましたぞ。

 もちろん勇者の強化を加味して更に重量を増した機材での使用ですな。

 最近では重すぎるので専用の馬車に機材を乗せて何名ものフィロリアル様によって運ばれる機材ですぞ。

 お義父さん曰く、そろそろパンダの村辺りに専用のジムを作った方が良いかもしれないと仰っていたワニ男たちのトレーニング空間ですな。


「ハッ……ハッ……ハッ……」


 そのトレーニング空間をウサギ男はウサギ姿で走っていましたぞ。

 汗臭い空間がそこを支配していましたがその中にはエクレア等も混じっていました。

 それを見た俺の感想はというと愚かだった頃にカルミラ島でお姉さんとのデートだとはしゃいで部屋に行った時のお姉さんがトレーニングしている姿ですな。

 フィーロたんはお休みしておりました。

 そんな感じに本格的に肉体強化にそれぞれ集中している姿ですぞ。

 もちろんこのトレーニング空間にある機材は好きに使って良いとの事でしたな。

 キールが好奇心で持ち上げようとしておりましたが重いと唸り、筋肉を着けようとしてルナちゃんに拒否されて持ち去られましたぞ。

 錬と樹ですかな? ハハッ! 混じってませんぞ。

 汗臭い事はしないという事でしょうな。

 ですが最初の世界の錬なら混じって居そうですぞ。

 ちなみにお義父さんは肉体強化をしていると差し入れを持って行っていましたぞ。

 ワニ男たちは嬉しそうに差し入れを頂くのですな。

 ……改めて思いましたがもしやお義父さんの配下でお姉さんと同じ可能性を持つ連中はこのような訓練をするように育ってしまうのでしょうかな?

 最近のワニ男を含めたヴォルフやウサギ男たちの筋肉の盛り上がりが大分増しているような気がしますな。

 お義父さんに可愛がられるにしても筋肉をつけ過ぎではないですかな?

 ムッキムキになるつもりのようですぞ。

 お姉さんもムキムキだったのを魔法で姿を偽っていたのでしょうか?

 ふとそう思い浮かべるとそうだったのかもしれないと思いますぞ。

 何せお姉さんも腕立て伏せに夢中になっていましたからな。

 指一本で腕立てをするあの姿……村に俺が来た頃になってお姉さんが帰ってきた時は指一本で逆立ちしてましたぞ。

 さらには針の上で指を立ててバランスまで取っていたのですな。

 とてつもない集中力による修行だとは思いましたな。

 そんな修行よりも俺はフィロリアル様と楽しく駆け回ってじゃれあうのが好きですぞ。

 キックを織り交ぜた実戦形式の訓練で避けたり受け止めるのですぞ。

 アハハハ……ウフフフ……と浜辺で走るととても素敵なのですな。

 お? 記憶の中で最初の世界のお義父さんが優しい目で俺を見ている気がしますぞ。


「そうだな……むさすぎる汗臭いトレーニング姿よりもお前の方が楽しそうに見えるな」


 えへへ……ですぞ。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんかもう、ほんとにやすともが可愛い
[一言] もしかして魔物紋を、最初の世界の尚文に近い今の樹と共有させれば、元康の知ってるフィーロを維持できたりして?
[一言] あぁそうか…見た目フィーロになっても性格が環境で変わる事があるのか
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