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119/122

119:楽しくない再会

「再会の挨拶としては随分だなアクティスキナ」


 撃たれて割れ落ちる鉄塊。

 その裂け目から私は懐かしい顔を見上げる。

 顔大半の十文字に走る二つの光点。その両サイドから耳のようなアンテナを立てた鋼の巨体。

 しかし見知った顔はともかく、シルエットにはまるで見覚えがない。

 箱型の胸。砲身を載せた両肩から末端に向けて太さを増す腕。ここまでは良い。望遠で見えた細部にこそ違いあるがこの辺りにはまだメモリと一致する馴染みのある所だ。

 だがそこから下、下半身は知った姿とはまったく異なる。

 大きく放射される炎。

 両脚に代わり、それも地ではなく空に機体を支えるそれが形作るのはまるで逆さにした花束か。見つからなかった本来の脚部代わりの義足なのだろう。が、だとしても剛毅と言うか消耗度外視と言うべきか。

 それをして武器の威力を出せるだけの余力はある、か。どういう仕掛けをしているやら。


「……不敬な……その力、なんと不敬な事か」


 記憶の中の姿と今目の前にあるモノとの差異から推測する私に対し、空の元同僚は同じ事をブツブツと。

 これにはつい苦笑が漏れてしまうな。


「こちらの言い分に聞く耳を持たぬのは変わらぬな。しかし不敬と言われても何の事やら。私は私の使える力で我が手の届く場所を拡めているまで。言いがかりをつけるのはらしくないぞ……いや、思えばガストロリトスに粛々と従うだけだったお前とはまともに対話らしい対話をした事は無かったか」


 肩を上下させて言えば、スラスター塊の下半身で強引に宙に浮くアクティスキナはその顔に灯った二つ光点を明滅させながら走らせる。

 まあ乗っては来ないだろうな。

 あの智将気取りの阿呆アステルマエロルとは違う。無口なイエスマンぶりを揶揄した程度の挑発ひとつで崩せる訳もない。

 しかし、そんなヤツがわざわざ姿を見せて攻撃を仕掛けてくるか。命令があったか、あるいはヤツの言う不敬な力とやらがそれほど我慢がならなかった、と言うことになる。


「まあ良い。我が道を阻むというのなら如何なる形にでも降すまでの事……おおそうだ、一応念の為に訊いておこう。私に仕えるつもりは無いか? 支配するという事の意味を履き違え、破滅を拡げるだけの……おっと」


 誘い文句を遮る形で降ってきたエネルギー弾。これに私はソードウィップを一振り。軌道を逸らしつつセプターセレンを走らせかわす。

 おやおや、主君を下げる言はどうしても我慢がならんかったらしい。忠誠心が強いというのは美徳である。が、暴虐の暗愚を諌めもせずに従うだけではただ頑迷だと言う他無いな。

 そんな私の腹の中の声が聞こえたかのように、降り注ぐ光弾は勢いを増す。

 追尾弾で追い込んでの置き弾をソードウィップで逸らし、ついでに鉄巨兵の残骸を突き刺し放る。

 ただの残骸の投擲ではあるが、私の力を込めたモノ。アクティスキナの降らすモノに一方的に負ける事は無く、相殺して光の幕を張るくらいにはなる。

 その下で私は投擲するだけで無く波動砲への作り替えも。授けた力をじっくりと圧縮させ、ずれたタイミングで狙撃をさせる。

 この時間差での打ち上げをアクティスキナは光る目を走らせ捉えたようだが、反応出来たところで間に合わずに直撃。弾けた光に殺到した後続が空の敵を覆い隠す。

 しかし私は愛馬の足を休ませずに波動砲作りをし続ける。

 ちょいと欲張って大掛かりなのを織り交ぜていた私だが、その大物が弾を吐き出すよりも早く空に出来た輝きの繭が爆ぜる。

 併せて飛び散った光の弾が発射済み未発射のを含めて対空即席波動砲の尽くを破壊する。

 生産者たる私を無視しての大迎撃。

 煙を帯びた機体の各所をうならせながら、アクティスキナは顔全体に荒々しく明滅する二つの光点を巡らせる。

 務めて冷静さを取り戻そうとするそれに、私はまたもう一つ波動砲を準備してやる。が、アクティスキナはそれを見つけるなりに発砲。

 これで生じた破片を含んだ爆風を後にした私たちに上空から銃口が。


「……不敬な!」


「さっきから何度も何度も……この程度の何が不敬というのか。データ攫いの干渉と機体のセルフメンテナンスの応用に過ぎんぞ?」


 憤りを帯びた声と砲撃が落ちてくるのをしのぎつつ言い分を返してやる。

 波動ないし物理的な接続から対象の内部の情報を奪う収集法。

 損傷したパーツの代わりを繋ぐなり取り込むなりしてから馴染むように手直し最適化するメンテナンス法。

 私はそれを掛け合わせて自分の機体の外でも行っているだけだ。なにも可笑しいことはあるまいが。


「……そのような、支配の力を気安く……お前ごときが、許せるモノか……ッ!!」


 だがアクティスキナは私を見下ろしながら煮えたような声を零してくる。

 しかし、支配の力と来たか。

 確かに制限はあれど対象を意のままに作り替える力ではある。加えてかつての姿では思いもつかず使いもしなかった手法でもある。だがそんな大層な言われ方をされるようなモノか。

 そんなちょっとした技術程度を扱うのに私ごときが、とも来た。

 まったくやってられぬな。


「たかだか半歩程度の歩みとはいえ、私が独力で掴んだ技にケチをつけるとは耄碌したか? それとも、自分がセンス不足で身に着けられなかった事へのやっかみからの言かアクティスキナッ!?」


 言いがかりも甚だしいとの声と共に、手にしていた部品を再構築した矢を五人張に番えて放つ。

 我が波動を帯びたこの一矢は、天に留まる鉄巨人目掛け真っ直ぐに昇る。

 重力を引き裂く我が言葉とやじり。対してアクティスキナは込み上げたモノを呑むように目に苦悶の明滅を。そしてその代わりとばかりに腕から破壊の弾を落とす。

 私を放った矢諸共に押し潰そうという魂胆なのだろうこの波動弾は、しかし我が矢とぶつかるなり一方的に射貫かれる。

 この結果に二つの光点を激しく瞬かせるアクティスキナ。だがそんなに驚く程の不思議はあるまい。

 貴様の放った力が生身ひとつの私にすら劣る分しか無かったまでの事。

 まあそう持って行くように仕込みをしたのは私だがな。

 強引な飛翔をしながら武装を用いる状況でのエネルギーの浪費。合わせて挑発とタイミングを計っての集束の妨害。

 これでのカウンター失敗はもはや取り戻せまいが!

 私に勝利を呼び込む一撃。

 この確信を持った矢は的に届く前に光に飲まれる。

 しまった伏兵――失態を悟った私は感じるままに五人張を投げ捨て下馬。転がるようにして刃を閃かせて流星の如く注いだ光弾を切り払う。

 この断面から迸るエネルギーが飾り鎧越しに我が身を焙る。

 チリリと走る痛みを堪えながら、私は背後に庇った愛馬セプターセレンに本性を現すように指示を。

 合わせて続いた攻撃を返す刀で切り裂き、私を跳ね飛ばす勢いでメタルボディを巨大化させるセプターセレンに足を合わせる。

 弾けるような愛馬の膨張。これに自身の跳躍も掛け合わせて大きく跳んだ私は、ヒラリと身と刃を翻して着地狙いを払う。


「やはりペリトロペー、お前か」


「へぇーえ。こっちの名前を知ってるてぇー事は、原生生物の体に入ってまた細かく分かれてたって本当だったんだぁー」


 横合いから我が攻撃、我が身を撃った狙撃手。ヘリ女のペリトロペーはローターの起こす風を纏い私を見下ろす。


「そっちのー……原生生物の体はレイアって名乗ってるんだってぇー? そーれでチビ共の女王様でございーなんて遊んでるって訳だぁ?」


「遊んでいるとは心外な。有機生命体の肉体を得て甦った事は予想外の事態ではあったが、我が理想の統治にはコレがより都合が良いのだぞ」


 しかし……まったく厄介な。

 よりにもよって伏兵としていたのがペリトロペーとはな。

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― 新着の感想 ―
音波さんみたいな忠臣が出ましたね。 うわー余計なのがまた出たー
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