第603話 腹ごしらえも超重要
金曜日
金曜日。朝から雨が降ってるので教室でお昼。
秋雨前線が来てて週末もずっと雨って予報でめんどくさいなあと。
「迷いの森の向こうにコボルトの巣を見つけたって聞いたぜ」
「え、マジ?」
ナット自身はもう王国の自分達の拠点に戻ってるんだけど、前に情報交換してたリーパさんから情報があったらしい。
ただ、レーシーは出ずにそのまま迷いの森を抜けられたんだとか。
「いなくなったのかしら?」
「また湧くと思うけどな。一般的なのは二週間ほどで湧くし、早けりゃ一週間もかかんねーな」
「へー」
本土に出るエリアボス、俺が知ってるアーマーベアだったり、ウルクだったり、知らないのだとヴァーゲストっていうでかい黒い犬のモンスターとかは、それくらいでリポップするんだとか。
「うーん、俺が倒したレッドアーマーベアは特殊なのか?」
「めったに出ねえって聞くな。まあ、お前の島が特別なんだろ」
それを言われると返答に困るわけで。
まあ、あれはバグだった部分もあったから、特別っちゃ特別なのかもだけど。
「そいや、ライブで作ってた小屋はもうできたのか?」
「昨日、いったん完成ってことにした。ああ、それで聞きたいことあったんだよ。建築スキル取れたプレイヤーっている?」
「建築スキルなあ。俺たちも取りたいって思ってんだけど、全然なんだよな。お前のやらかしに期待してる」
ナットのギルドには大工スキルを上限突破してる人もいるんだけど、土木スキルは高い人でも7らしい。
それ以外の条件はみんな探してるけど見つけられないまま。本が必要なんじゃないかって話もあるらしい。本か……
「ショウ君。本ならアズールさんに聞いてみませんか?」
「聞いてみようか。でも、それでもらえちゃったりしていいのかな?」
「ダメなの?」
「まだ解放されてない竜の都のアイテムをもらっていいのかって話だよな」
察してくれたナットに頷く。
それを言い始めると、空間魔法なんかの魔導書だってそうだろって話なんだよな……
………
……
…
「ええ、うちで建築スキルを取れてる人はいないわ。開拓のことを考えると欲しいスキルなのだけれど……」
そう溢すベル部長。
白銀の館だと、バッカスさんが大工が上限突破してて土木がレベル8。建築スキルを狙ってるけど取れてないと。
「兄上の方が取れる可能性は高かろうな」
「どうかなあ。俺が持ってないスキルが前提って可能性もありそうだし」
そう答えてはみたものの、ベル部長は苦笑い。
バッカスさんの残りのスキルは木工だったり細工だったり、俺が持ってるスキルと被ってるそうで。
「あとは本でしょうか?」
「そうだね。建築関係の本って、本土にあったりしません?」
「うちも『知識の図書館』に依頼を出してるのだけれど、これといった本は見つかってないそうよ」
とのこと。既存の建造物の本とかもないらしい。
そっちはあったらあったで『古代遺跡の内部構造が載ってる書物』なわけだし。
「以前、アージェンタさんに島の古代遺跡について調べてもらったことがありましたけど……」
「あー、あったあった。あれも結局、情報なしだったんだよな」
やっぱり、攻略情報は簡単にはもらえないってことかな。
「ところで北端の塔へは今日から?」
「ええ、夜からのつもりです」
「ほほう。いよいよ島の全貌がわかるのだな」
「さくっと終わるといいんだけどな」
そしたらやっとのんびりできそう。
そのころにはサバナさんも落ち着いてるかな?
離島互助会でハク(コメ)がもらえると嬉しいんだけどなあ……
………
……
…
本番は夜ってことで、放課後のうちに転移魔法陣を置きにいく。
それはいいんだけど、
「え? 探索、ミオンも一緒に来るつもりなの?」
「はぃ。……ダメですか?」
まずは俺とルピ、レダ、ロイ、ラズ、リゲルでって考えてたんだけどなあ。
ミオンも一緒にってなると、シャルたちを護衛につけたいところだし、そうなると一気に北端の塔まで到達できるか微妙か?
とはいえ、前に追い払ったクロクハイエナが集団でってなると、少人数の方が手こずったりする可能性もあるか……
「おっけ。じゃあ、シャルたちとクロたちも呼ぼう」
「はぃ!」
「ルピ。シャルとクロを……」
「ワフ!」「「バウ!」」
全部を言うまでもなく、ルピの号令でレダはクロたちの森の方へ、ロイはシャルたちがいる教会の方へと走って行った。
「俺、ルピ、レダ、ロイ、リゲルが先行で。ミオン、シャルとクロたちって感じかな」
「スウィーちゃんはどうしますか?」
「〜〜〜!」
もちろんと胸を叩くスウィー。
心配ではあるけど、フェアリーズはお留守番させるってことなのでオッケーした。
「私も同行していいだろうか?」
とエルさん。白竜姫様にはエメラルディアさんが側にいてくれるとのこと。
「じゃ、ミオンを護衛してもらえると」
「了解した」
エルさんが護衛についてくれてるなら、シャルたちは先行部隊に来てもらおう。これで敵が多くても対処できるはず。
と、ちょうどそこにロイがシャルたちを連れてきてくれた。
「ニャ!」「「「ニャ!」」」
お呼びでしょうかと言わんばかりのシャルたちを撫でてから、夜に北の森へ行くことを話すと、すぐに準備を始めてくれることに。
そうこうしているうちにレダがクロたちを連れてきてくれたので、ミオンから説明してもらう。
「ゥゥ。ゥゥ?」
「はぃ。お願いしますね」
クロ曰く、今後のことも考えてラケに任せていいかとのこと。妖精たちもいろいろ考えてるんだなあ。
そういえばリゲルと出会ったあたりの森は、島の東側の草原へと繋がってるわけで、そっちもいずれは行ってみないとだよな。リゲルじゃない馬を見たし。
「じゃ、ちょっと行って転移魔法陣を向こうに置いてくるから、その後で出発前のご飯の準備をしようか」
「はぃ」










