第601話 いろんな事があっという間
木曜日
「じゃ、行ってくるよ」
「はぃ。待ってますね」
「うん。<転移:北の森前>」
次の瞬間には北の森の前。ルピと二人、建てかけの休憩場所の前へと転移した。
転移はクールタイムが長いけど、放課後ログインしてすぐに使えば、夜にログアウトする時には使えるようになってるっていう計算。
俺がいない間はルピたちが残って見てくれるので安心。昨日はホガニーブルまで仕留めてくれてたし。
「ワフ」
「ちょっと待ってな」
インベントリから転移魔法陣を出してセットし、ギルドカードを取り出す。
「オッケー」
『はぃ』
しばらくするとレダとロイが現れ、ルピが二人を連れて警戒に出てくれる。
パーンたち、シャルたちと続き、ラケたちギリー・ドゥーもやってきた。
ミオンが誘ったら二つ返事だったので、やっぱり女神パワーは偉大だなあと。
「ゥゥ?」
「ん。奥には危ないかもだから、ルピたちの目の届かない範囲には行かないようにね」
「ゥゥ」
ラケ的にはやっぱり森の方が気になるらしいけど、奥へ行くとエリアボスとかいそうなので自重してもらう。
で、そんなやりとりをしていると、
「わー」「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」
白竜姫様とエルさん、スウィーたちが現れた。
天気もいいし、ピクニック気分で作業を見てもらう感じ。
そういえばスウィーたちもここは初めてなんだっけ。
「おまたせしました」「ぁぃ」
最後にミオンとエメラルディアさん。
エメラルディアさんには引き続き、パーンたちの手伝いをお願いしてある。
「で、あとは、<召喚:リゲル>」
「ブルルン♪」
リゲルも呼んで万全の構え。
「じゃ、俺とパーンたちは作業してるから。森の方は気をつけてね」
「はぃ」「ニャ!」「ゥゥ」
ミオンたちはレジャーシートがわりの亜魔布を敷いて、ちょっとしたピクニック気分。
おやつも持ってきてあるので、休憩の時にみんなで食べる予定。
「じゃ、頑張ろうか」
「リュ!」「「「リュ〜!」」」「ぉ、ぉ〜」
………
……
…
休憩場所の建築は予想以上に順調。
屋根部分にもっと時間がかかると思ってたんだけど、エメラルディアさんとパーンたちの協力もあったし、なにより空間魔法が大活躍。
木材はエメラルディアさんが軽々と運んでくれるし、大まかに設置したところで、俺が空間魔法の<移動>や<回転>で微調整する。
「オッケー。やっちゃって」
「リュ〜♪」
エメラルディアさんがウリシュクを手のひらに乗せて、棟木の上へと運んでくれるので、ハシゴや踏み台も不要。
高所作業はウリシュクたちの得意分野なので、垂木を渡す作業もあっという間だし、屋根板を張る作業もさくさくと。
あとは薄い石壁の屋根を置けば、少なくとも雨は凌げる状態になる。
「ショウ君。そろそろ休憩しませんか?」
「りょ。休憩するよー」
「リュ!」「「「リュ〜♪」」」
パーンたちって降りる時はジャンプでスタッと降りちゃうんだよな。
エメラルディアさんがハラハラしてて、本当に妖精好きなんだなあと。
俺も最初見た時は心配したけど、よくよく考えると教会側の崖もジャンプで降りてたもんな。
「じゃ、いただきます」
「いただきます」「いただきまーす」「〜〜〜♪」
今日のおやつは栗あんこパイ。
マローネの甘露煮とあんこをパイ生地で包んで焼き上げ、さくっとしっとり甘さは控えめ。うん、美味しい。
「退屈じゃない?」
「いえ、全然。あっという間に出来上がっていくので、見ていてすごく楽しいです」
「ああ、確かに」
パーンたちがてきぱきと屋根部分を作っていくのは、指示を出す側で見てても気持ちいいもんなあ。
「昨日は魔法を使ってなかったのはライブだったからですか?」
「いや、えーっと、昨日、寝る前に思いついた……」
エメラルディアさんがいないと棟木を上げるの大変になるし、何かいい方法ないかなあって考えた結果。
空間魔法の<移動>や<回転>で運べるかなって思ったんだけど、遠くから一気に所定の場所に設置するのは難しいんだよな。
でも、微調整の方には使えるじゃんって、寝る前に思いついたっていう。
そういえば、大工スキルはレベルMAXで魔銀の工具で上限突破もしてるのに、上位スキルがまだ出てきてないんだよな。
同じく上限突破してるナットも「わかんねー」って言ってたしなあ……
「土木スキルみたいな魔法だったら良かったですね」
「掘削とか転圧とかわかりやすいもんね」
あ、建築スキルも魔法が絡んでる可能性あるのか? 魔導書が必要だったり? 何か他に前提スキルがあったりする?
土木スキルのときは応用魔法学<地>のレベルが5だったけど……
『ショウ君。今いいー?』
「あ、アズールさん。はい、大丈夫です」
『マスターシェフさんに頼んでた物がいろいろ届いてるよー。一度に全部は無理だから、用意できた分を先にだってー』
うわ、早っ!
あれこれたくさん頼んだから、そのうちの一部を先にってことか。
『それで受け渡しなんだけど、南の島の方でいいかな? エメラルディアが取りに来れるし』
「あー、確かにその方が手間もかからないか」
「ぁぃぁぃ」
エメラルディアさんも乗り気っぽい。キジムナーたちに会いに行けるからかな?
俺たちがいない間に、ここから飛んでささっと行ってくれるそうだ。
まあ、細かい段取りはエルさんに任せておけば大丈夫か。
「ショウ君。そろそろ時間です」
「りょ」
夜には床と壁を張れば終わりそう。
あとは時間があれば森側に石壁を建てておきたいなあ。










