第596話 クールタイムの有効活用
リアル夕飯を食べてから、まずはバーチャル部室に。
昼に手紙が来てた内容と、南の島の状況をベル部長とセスにも共有しておく。
「ふむふむ。南の島の方もひとまず問題は無くなったと考えて良さそうよの」
「調味料や調理器具の調達もマスターシェフさんに任せておけば安心よね。貴金属は宝石について詳しい人が公国にいるそうだし、いろいろな物が手に入ると思うわよ」
とのこと。
俺としても後は基本お任せしちゃおうかなと思ってる。
「そっちは落ち着いたんで、そろそろ北端の塔に行ってみようと思ってて」
「うむ」
「結構遠そうだったけれど、どうするつもりなのかしら?」
「えーっと……」
まずは草原の北の森の入り口に、中継ポイントを作ろうかなと。
小屋ってほどでもないけど、屋根がある休憩場所を作って、そこに女神像を置いてセーフゾーンを作れればベスト。
周りの状況によっては、石壁で囲うことも考えている。
「ふむふむ。そこの安全が確保できれば、転移魔法陣を設置しておくと」
「ずっとは置かないけど、放課後に転移で行って置いて、夜に回収して転移で帰るようにすれば、クールタイム問題を解決できるし」
「なるほど。よく考えてるわねえ」
水曜のライブはその作業がメイン。
ミオンのアルバムの発売が土曜に控えてるわけだけど、俺のゲームプレイがメインなんだからっていう本人の希望でそうなった。
まあ、そっちは土曜にみんな集めてパーティーしたいなって思ってるし。
「ライブ中に完成させるつもりなの?」
「基礎とか木材の準備次第ですかね。そんなたいそうな建物にするつもりはないですし」
パーンたちにも協力してもらうつもりだし、エルさんにも協力してもらえれば、更に早くなるはず。屋根板の釘打ちとか任せられるし。
とりあえず、今日は場所を決めて、木材を調達してかな。
***
ログインしてご飯を食べたら午後8時半。
白竜姫様はデザートを食べた後、おねむになったので寝室へと。
落ち着いたところで、北の森の手前に中継ポイントを作る話を説明した。
「って計画なんですけど、どうでしょう?」
「なるほど、了解した。今日はここで待っていればいいのか?」
「はい。まずは俺とルピたちで場所の選定に行きます。場所を決めたら転移魔法陣を置くので」
まずは転移先の測位をしなきゃなので、俺がリゲルに乗って、ルピ、レダ、ロイで最速で進む予定。
場所が決まったら測位して、持っていった転移魔法陣を置いたら、エルさんやシャルたち、パーンたちに来てもらってって感じ。
「じゃ、行ってくるよ」
「はぃ。気をつけてくださいね」
「ワフ!」「「バウ!」」
さて、急ごう。
10時前には北の森の入り口には着きたいところ。
「シャル〜、リゲル〜」
そう声を掛けると、水路近くで訓練をしていたシャルたちと、その近くで草を喰んでいたリゲルがすぐに気づいて走ってきた。
「これから出かけるから、準備をお願いできるかな?」
「ニャフ!」
馬具を装着してくれてるシャルに、今日の予定を説明しておく。
転移魔法陣を置いた後は、パーンたちにも手伝ってもらいたいので、それを伝えて欲しいことなんかも。
「俺が出たあとにパーンたちに話しておいてくれる? 来れそうだったら、屋敷で待っててって。ああ、慌てる必要はないよ」
「ニャ!」
「よし。じゃ、行こう!」
………
……
…
ギリー・ドゥーたちに挨拶しつつ、ルピたちを先頭に森を駆け抜ける。
神樹が見える湖に出たところでいったん速度を落とす。時間は……午後9時を回ってるな。
「20分ぐらいで走り抜けたのか。ちょっと休憩しよう」
「ワフ」「ブルル」
インベントリからライコス(トマト)を人数分出して、みんなで食べる。
ちょうどいいし、一度ミオンに連絡しておこう。
「ミオン。今、大丈夫?」
『はぃ。もう着いたんですか?』
「あ、いや、今ちょうど半分ぐらいかな。湖のところで休憩中。あと20分ほどで北の森の入り口まで行けると思う」
屋敷にはシャルやパーンたちが来て待ってるらしい。
向こうに着いたら、先に転移魔法陣を置いた方がいいな。
『気をつけてくださいね』
「うん」
そういえば、シェンネペンテスってまたポップするのかな?
まあ、リゲルもいるし、ルピも強くなってるから、もう敵じゃないだろうけど……
「まあ、それはまた今度でいいや。じゃ、もうひとっ走りしようか!」
「ワフ!」「ブルル♪」
飛び出したルピをレダとロイが追いかけ、それを更にリゲルが追いかける。
草原へ出た先、西の海岸近くにアンバーナウトが数頭いるのを見かけたんだけど、今日のところはスルー。
ホガニーブルがいれば討伐しようかなと思ってたけど残念。ワイン煮込み、また作りたいんだけどな。
そんなことを考えつつ走っているうちに北の森の手前に到着。
ルピたちには周囲の警戒に出てもらって、その間に転移魔法陣を設置する。
「ミオン。こっち着いたよ」
『はぃ』
ほどなくして現れたのはエルさんとシャルたちケット・シー。
「待たせた」「ニャ!」
「いえいえ」
続いてパーンやウリシュクたちも現れた。
「リュ〜」
「ありがとうな。今日は木材の調達がメインだから、後で製材も手伝ってね」
「リュ!」「「「リュ〜」」」
リゲルには草原の方を気にしてもらいつつ、森の入り口をざっと眺める。
やっぱり、レッドアーマーベアがいた時の森に様子が近いんだよな。
先に少し中へ入ったルピと感知共有を行ってみると……とりあえずモンスターはいないか。
「あまり森の近くに建てない方が良さそうだな」
「ですよね」「リュ」
エルさんやパーンもなんとなく察してるっぽく、うんうんと頷いている。
手前の木から切っていくとして、30mほど離れた場所に建てた方がいいか。
「えーっと……、あの辺に建てる感じにしましょうか。パーンたちは先に草むしりお願いしていい?」
「リュ!」
「じゃ、俺は木を切るので手伝ってもらえますか?」
「ああ、任せてくれ」
時間的にも、今日は木材をそろえたぐらいで終わりかな?
まあ、ライブで無理に完成させる必要も無いし、のんびりやろう。










