第594話 果報は寝て待て
「夜はのんびりしますか?」
「うん。昼にルピたちも頑張ったし、俺もちょっと疲れたし、休みにするよ」
「はぃ」
ガジュたちにはまた会いに行くつもりだけど、とりあえず今日は休みで。
ルピたちも晩御飯を食べてちょっと眠そう。
「〜〜〜?」
「ガジュたちのところ? 明日にでも行くつもりだけど、スウィーも行きたいの?」
「〜〜〜♪」
アームラ(マンゴー)の実がもう無いから欲しいらしい。
明日は里の外に出るつもりもないし、神樹で移動でもいいかな。
「ミオンはどうするの?」
「ぁ、私はスカーフを作ります」
ガジュ以外のキジムナーたちの分だけでなく、向こうにいるケット・シーたちの分も作ってくれるとのこと。
「そうだ。戦利品の魔石……」
「浄化しますね」
「うん。で、ミオンがそのまま使って」
「ぁ、はぃ。ありがとうございます」
俺はもう中サイズの魔晶石を持ってるし、魔狼の牙の分もあるし、ミオンが持っていた方が役に立つ時がありそう。
「こっちはどうしようか?」
レーシーの丸太? 原木? ともかく、こっちも浄化してもらって、何か使い道があればだけど。
「他のみなさんは杖がいいんじゃないかって話してましたね」
このサイズなら短杖かな。オパールと組み合わせると神聖魔法にプラスつきそうだし、ミオンにちょうどいいかなと思ったんだけど、
「ナットさんの報告を待ちませんか?」
「あー、そうするか」
なんとなく思いつきで作って失敗するのは避けたい。エリアボス素材は希少なんだし、どういう物ができたのかはナットに聞けばわかるだろうし。
「じゃ、俺は……」
ステンドグラスが途中になってるのが気がかりだけど、色ガラスの問題が解決しないとなんだよな。
そういえば、向こうにいたケット・シーたちって、元々はシャルが団長をやってた騎士団の部下なんだよな。彼らにもちゃんとした武器を作って渡そうかな。
「向こうにいるケット・シーたちの分の武器を作るよ」
「はぃ」
シャルに作った細剣を自作複製のアーツで増やしつつ、シャルの分を騎士団長らしい、かっこいいやつにしたいな。
トゥルーの三叉槍ぐらい豪華なやつを。
「〜〜〜!」
「ん、さんきゅ」
フェアリーズの一人、いつもスウィーの代わりにフェアリーズを取りまとめてくれてるワーネが、魔導転送箱の着信を教えてくれた。
「この間のお返事でしょうか?」
「だといいなあ」
マスターシェフさんに手紙を出したのは日曜の夜だったから、順当に考えれば返事の手紙な気がするんだけど。
そんな期待をしつつ箱を開けると、
「お、手紙。と、ポーション?」
手紙が二通と小瓶が二つ入っていた。
手紙は片方がアズールさんで中身はシンプルに「お酒美味しかった。ありがとう」っていうだけ。
もう一通がマスターシェフさんから。
『親愛なるショウ君へ
連絡ありがとう!
調理道具や調味料に関しては、私の方で集めて送ることができるよ。別の紙に一覧を書いておいたので確認して欲しい。
まずは本土ですぐに手に入る、ウスターソースと中濃ソースを使ってみて、感想を聞かせてくれると嬉しいかな。
それら以外でも、本土で手に入るもの、調べたいことなんかがあれば、私から知り合いに頼むこともできるよ。
実際の細かいやりとりについては、今後、依頼書を元に進めていければと思うので、疑問があったら遠慮なく』
うわ、ありがたい。
読んだ方をミオンにまわし、もう一枚の方に目を通す。
「前にライブで聞いた赤唐辛子があるな。で、サルサソースがあるのか。ライコスを使ったミートソースはうちでも作れるけど、ひき肉を作るのがなあ……」
他にもカラシーナで作るマスタードとか。
続きを読んでいくと、調理器具がリストアップしてあって、
「あ、ミンサーあるのか!」
「ぇ?」
「えっと、ひき肉を作る道具かな。手動らしいからハンドルをぐるぐる回すやつだと思う」
これがあれば、ハンバーグを作るのも楽になるし、キーマカレーとかも作れるかも?
「ショウ君は作れたりしないんですか?」
「ちょっと難しいかなあ。複数の歯車をうまく噛み合わせるのって大変そうだし」
他にもパスタマシンとかいろいろと欲しいものが。
ホイッパーって泡立て器だよな。金属製の大きな茶筅みたいなやつ。
「おいくらぐらいなんでしょう?」
「わかんない。でも、全部欲しいなあこれ。値段いくらぐらいか聞いてみるよ」
「ぁ、そうですね」
普通に売ってもらおう。
ゲーム内のお金でいくらぐらいか知っておきたいし、本土の物価がどれくらいか学べるいい機会な気がする。
「じゃ、さくっと返事を出してから鍛冶場に行くよ」
「はぃ」
………
……
…
「ふう……」
アーツで増やした細剣が8本。
クールタイムの間に魔導炉でインゴットを作ったり、採掘に行ったりしたのもあって、シャル専用の細剣の方はあんまり進まず。
まあ、どういうデザインにしようかで悩んでた時間の方が多かったからしょうがないか。
「ミオン。そろそろ戻るよ」
『はぃ』
その言葉に、作業室の隅で寝ていたルピたちが起き上がる。
俺がカンカンやってるんだけど、あんまり気にならないらしく、レダ、ロイと一緒に丸まってすやすやだった。
「ワフ」
「うん。帰ろうか」
帰り道にシャルに会えるかな?
行きは牧場の奥で訓練してたから声を掛けなかったけど、終わってるなら細剣の話もしておきたいし。
そういえば、向こうにいたケット・シーたちって何人なんだろ? ……あれ? そもそもあの子たちってどういう扱いなんだ?
「ミオン。ちょっといい?」
『はぃ。どうしました?』
「南の島にいたケット・シーの数って覚えてる? 10人はいたと思うんだけど……」
『ぃぇ、わからないです。あ、でも、島民の数が増えていたりしませんか?』
「ああ!」
その可能性はありそう。っていうか、シャルの部下になるために島に来てたみたいだもんなあ。
メニューを開いてみると……島民数が225人になっている。
「えっと、225人になってるけど、前って何人だっけ?」
『確か210人だったはずです』
ってことは向こうにいるのは15人。
島民に認識されてるってことは、ガジュたちと同じ扱いだよな。
ん? 俺がもし建国したら、ガジュたちの里って領土になるのか?
……まあ、その時になったら考えることにしよ。










