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もふもふと楽しむ無人島のんびり開拓ライフ ~VRMMOでぼっちを満喫するはずが、全プレイヤーに注目されているみたいです~(旧題:Iris Revolution Online)  作者: 紀美野ねこ
以芸会友

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第585話 備えあれば憂いなし?

「ラ〜ラララ〜ラ〜♪」


 ミオンの透き通った声。スウィーや白竜姫様セルキーたちの合唱が、ゆっくりと水平線に吸い込まれていった。


【モルテン】「癒される〜(*´∇`*)」

【フェル】「浄化されたw」

【ジョンヌ】「<アンコール希望!:1,000円>」

【トモス】「アルバム待ち遠しい……」

 etcetc...


<あと5分ほどありますからー、もう一曲あってもいいですよー>


 ヤタ先生からそう声がかかり、ミオンの方を見ると小さく頷いてくれる。

 とはいえ、さらに次の試聴予定をやっちゃうのはまずいので……


「じゃ、もう一曲」


「はぃ。あ、ちょっと待ってください」


 ミオンがそう言うと、白竜姫様がエメラルディアさんを引っ張ってきた。

 さっきはセルキーたちの端っこで手拍子を叩いてたんだけど歌えるのかな? 意外と歌がうまそうなイメージだけど……


「エメラもー」


「ぅぅ……」


 やっぱり恥ずかしそうな感じでどうしたものかなと。


「アルテナちゃん、無理強いはダメですよ?」


「ダメ?」


 白竜姫様にそう聞かれて困ってる様子のエメラルディアさんなんだけど、スウィーが耳元で何か囁くと、


「ぁぃ」


「〜〜〜♪」


 サムズアップするスウィー。どうやら歌ってくれるらしい。

 まあ、『波のまにまに』なら、みんなで合唱する曲だから大丈夫だろう。


「じゃ、『波のまにまに』で」


「はぃ」


 自動演奏さまさまだよな。

 ちなみに、演奏スキルはもうミオンの方が上で、集めた楽譜集で演奏できる曲も追い越されちゃってる。

 ミオンが歌うために、俺も読んでおかないとなんだけど……


「「「キュ〜♪ キュ〜♪」」」


「ラララ〜♪」「ァァァ〜♪」


 セルキーたちに囲まれて歌い始める白竜姫様とエメラルディアさん。

 ミオンも一緒になって歌い始めると、スウィーたちが輪になって踊り始め、釣られるようにセルキーたちも踊り出す。

 だんだんと気恥ずかしさも取れたのか、しっかりと声が出始めたエメラルディアさんの歌は上手い方?

 そういえば、アージェンタさんとかアズールさんとかバーミリオンさんって歌ったりするのかな?


 ………

 ……

 …


<はいー、終わってますよー>


「「お疲れ様でした」」


 ライブが終わっても、白竜姫様とスウィーがエメラルディアさんを引っ張り回してる。

 セルキーたちも懐いちゃってるし、良かった良かったってことで。


「片付けをしてきます。ショウ君は休んでてください」


「え、あ、はい」


 俺もと思ったけど、ミオンににっこりされてしまったので大人しく。

 エルさんも手伝ってくれるみたいで、二人して洗い物へと向かった。


「ワフ」


「ルピはお腹いっぱい?」


「ワフン……」


 うとうとし始めたルピが膝の上を占領したので、背中をゆっくり撫でてモフらせてもらう。

 今日はちょっと早めにログアウトでもいいかな?

 あ、そうだ。寝る前にナットに連絡しておかないとだったな。いいんちょにはミオンから連絡してもらって。

 明日はまたミオン家にいくけど昼は何を作ろう。やっぱりアジのカレーフライ? フィッシュバーガーにしてもいいか。

 デザートは……もうスーパーで売ってるだろうし、梨のコンポートでも作ろう。


 ◇◇◇


 死霊都市南区。大通りに面した一等地。

 そこにはゲーム内トップと言われる有名料理店『リヴァンデリ』がある。

 妖精が作った食材を活かした料理が出るこの店には、バフ効果目当てにくるプレイヤーだけでなく、その美味しさにNPCも足繁く通っていたりする。

 そんな店舗の2階一番奥にある個室に二人のプレイヤーがいた。


「呼び出すことになっちゃって申し訳ない。相談しておきたいことがあって」


「大丈夫大丈夫。だいたい想像はついてるよ」


「まあ、そうだよね。実はアズールさんからコンタクトがあって、ショウ君が料理関係はうちと専任で取り引きしたいかもって話が来てて」


「やっぱりね」


 マスターシェフの話に大きく頷くのは、この店にも出資しているデイトロン。


「竜族が動いてるってことは、ほぼ確定事項なんだろうけど……相談って?」


「いや、そのまま受けちゃっていいのかい? 嬉しいんだけど、いろいろ大丈夫かなって思ってさ。それで意見を聞きたくて」


「そこは心配しなくて大丈夫。もちろん欲をかかなければだけどね」


 そう答えたデイトロンがワインを口に運ぶ。

 ショウの島のワイン、通称『女神のワイン』ではないが、王国南部産でプレイヤーの間でも評判のワインだ。


「それは重々承知してるよ。けど、普通に取り引きするだけでも利益がすごくなりそうでさ。魔石バブルから撤退した連中が金を余らせてるし……」


「あー、それはそれでちょっと困るね。下手すると、ショウ君の島にゲーム内の全てのお金が吸われかねない」


 と苦笑いのデイトロン。

 実際そこまでにはならないだろうが、ショウがお金を使ってくれないことには、島に貯まる一方なのも確かだ。


「何かアイデアある?」


「そうだな……。ああ、圧力鍋ってあるんだっけ?」


「まだないはず。圧力を一定に保つ部分の調整がすごく難しいだろうし、需要があるわけでもないし」


 ショウが口にしたことでチャレンジするプレイヤーがいるだろうが、その難しさに全てのプレイヤーが諦めるだろうというのがマスターシェフの予想だ。


「うーん、さすがにその研究開発費にっていうのは無理があるか。赤や黄色のガラスの件も難航してるし」


「ショウ君が先行しすぎて未実装領域だったりするんじゃない?」


「あはは、確かに! じゃ、まずは料理関係で島に無さそうなものをリストアップしておこうか。焼け石に水だろうけど、そっちはお金で払ってもらえないかって」


「了解。何を言われても大丈夫なようにしておきたいけど……ショウ君だからなあ」


 そう言って笑い合う二人。

 本人が知らない間に、すでに周りは動き始めているのであった……



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