第576話 死霊都市の再生に向けて
『ショウ君。今回はランキングに応じた特別褒賞はないそうです』
「あ、そうなんだ」
ミオンが公式ページを確認してくれている。
視聴者プレイヤーさんたちも自分のワールドクエストのリザルトを確認してるみたいで、いろいろと情報が流れてきた。
「えっと、他にも部門あるんですよね?」
【ロッサン】「捕獲討伐部門、問題解決部門ってのがある」
【リクレー】「ランクインはしてないけど、合計で8SPもらえてた!」
【ミイ】「今回は最高10SPが上限っぽいですね」
【ゴマシオ】「これでまたスキル取れる!」
etcetc...
『みなさんのお話を聞いていると、部門ごとにSPをもらえてるみたいですね』
「なるほど。俺は情報収集と後方支援で計10SPもらえたってことか」
三つ以上の部門で貢献して、合計で10SPもらえてる人もいるらしい。
俺が二部門で10SPもらえたのっていいのかな? まあ、気にしてもしょうがないけど。
『悪魔はいなくなったんでしょうか?』
「どうだろ? リザルトのところには特になかったけど……」
【ドウミン】「いなくなったらしいぞー」
【マリオネラ】「ラストのダンジョン行った人いないの?」
【ラッカサン】「ラスボスの口上だと、役目を終えたやつは帰ったらしい」
【リーパ】「なんか親切なボスやなw」
etcetc...
コメント欄を眺めてる感じだと、悪魔はいなくなったって考えてよさそうかな?
とりあえず一安心だけど、しばらくは警戒を続けてもらうことにしよう。
『大丈夫みたいですね』
「だね。でもまあ、9月いっぱいは気をつけたほうがいいかも」
視聴者さんたちも引き続き警戒って雰囲気っぽい。
あと気になるのは魔石の件か。67%を奪還できたってことは、33%、三分の一は向こうに取られちゃったってことだし。
「あとは……厄災の限定的な再現ってなんだろ?」
『気になります。アルテナちゃんのこともありますし』
【トネン】「やばそうよなー」
【マスターシェフ】「次のワールドクエストまでに調べないとだね」
【ペーター】「このゲーム、下準備・下調べ重要ですよね」
【プレマル】「ショウ君、頼んだ!」
etcetc...
なんだか任されてるけど、俺ができることって白竜姫様の安全を確保するぐらい?
あとはまあ、できるだけ同じ無人島スタートした人たちをフォローできればかな。悪魔に独力で対抗することができるのって、うちとラムネさんの島ぐらいだし。
次のワールドクエストが始まるまでに、離島互助会を整えたいところだけど……
「ま、あんまり先のことを考えてもしょうがないし、しばらくはのんびりかな?」
『はぃ』
じゃ、そろそろ時間だし、ミオンの歌で今日は終わりにしよう。
この後すぐ次の試聴曲になる『波のまにまに』が今日の曲目。
来週は『水平線に掛かる虹』になるから、また港に来たほうがいいかな?
………
……
…
ライブも終わり、ミオンや白竜姫様、エルさんも来てのんびりしていると、
『いろいろあったみたいで、ベルさんたちからお話があるそうですよー』
「ぁ、はぃ」
今はもう隠すこともないので、ミオンの配信先がバーチャル部室になっている。
ヤタ先生はこっちのライブ後にベル部長の方を見てたっぽいけど、そっちで何かあったらしい。
『お邪魔するわね』
『すまんの』
「どもっす。何があったんです?」
『アンシアが死霊都市の副制御室の再起動を目指し、特大の魔晶石の再結晶化を目指すと宣言しおっての』
「「えっ!?」」
今回のワールドクエストが始まる前から、ひっそりと魔石を買い集めていたらしい。魔王国の依頼で。
そして、終わったタイミング、悪魔たちがほぼいなくなったのを見計らっての発表だったっぽい。
副制御室関連の話は、知る人ぞ知るって内容だったけど、それも全部オープンにしちゃったらしい。
「再結晶化は誰がやるんです?」
「できる人を募集するんですって」
……俺が指名されてるように感じるのって自意識過剰かな?
でも、そんなことするつもりないんだよな。だって、何にもメリットないし。
「俺はやんないっすよ」
「はぃ!」
『うむうむ、わかっておる』
『アンシアさんもできる人を探してる感じだったわね。高給優遇みたいな話よ』
そういうことならご自由にで。
俺としては、再結晶化はいろんな応用が利きそうだし、応用魔法学<地>や錬金術の同士が増えるのは嬉しい。
「ぁの、副制御室が再起動すると、何が起きるんでしょうか?」
『厄災を起こすようなことは起きないのよね?』
「ええ、それはアズールさんが解析して大丈夫だって」
副制御室の役割は、あくまで死霊都市のそれぞれの区画にある施設の管理。
転移魔法陣の固定を外せたりするわけだけど……
「死霊都市にある魔導具とか魔導設備とか、外せるもの全部外して持っていっちゃうとか?」
「『『……』』」
あれ?
『アンシアさんも、さすがにそこまではしないと思うわよ?』
『今はサバナ殿の島の件もあって評判を落としておるからの。おそらくは副制御室の再起動によって得られる恩恵を、共和国や魔王国のプレイヤーと分け合うつもりであろうて』
「恩恵? 他に何かあるの?」
『死霊都市の外周に大型魔導施設があるのだけれど、そこはまだ使えないままなの。そこを使えるようにするんじゃないかっていう話よ』
木をまるまる一本加工できるような工作機械とかが何種類かあるんだけど、マナが足りてないのか、ロックが掛かってるのか、とにかく起動できないらしい。
それを動かせるようになれば、木材加工全般が圧倒的に楽になるんじゃないかっていう。
『バッカスさんが聞いた話だと、大きな製材所や木工所にある設備がほぼ全部揃ってるそうよ。合板も作れるんじゃないかって』
『魔王国や共和国には木造建築も多いゆえ、そちらの需要を見込めるのであろう』
「へー、すごいなあ」
いろいろと考えてるんだなあと。
でもまあ、魔王国アップデートからIROを始めた人たちには、便利な施設が増えてくれた方がやりやすいよな。
「ぁの、部長は副制御室を再起動するつもりはないんですか?」
「あ、確かに。他にはそういう場所ってないんです?」
『南側に関しては、食品の加工施設があったみたいね。厄災のせいか瓦礫に埋もれちゃってるから、今のところは放置したままになってるわ』
『北西側、竜族の区画に関しては我らも知らぬゆえ、兄上からアズール殿に聞くのがよかろう』
セスにそう言われたんだけど、アズールさん、そういうこと気にしてなさそうなんだよな……










