第31話 祭りのあと
9日目(月)
「じゃ、また後で」
「ぅん……」
とてとてっと自分の席へと向かうミオンを見送りつつ、自分の席へと座る。
「おは」
「おはおは。昨日の祭りはすごかったな」
祭り? あー……
「無人島の火祭り的な?」
「それよ」
結局、あの後はIROもできないしで、俺のアーカイブをみんなで見て、詰められる会に……
いや、ホントに詰められたわけじゃないけど、質問はいろいろされたし、こっちも質問はあったしちょうど良かったけど。
「そいや、朝確認してないんだけど、メンテって終わったのか?」
「今朝の6時にメンテ明けたっぽい。釣られてキャラ削除したやつも、申請があった分は復活したらしいぞ」
「へー、運営の人たちも大変だな……。しかし、ナットはキャラ削除したやつが知り合いにいたの?」
陽キャのこいつのことだし、ゲーム内にもう相当フレンドがいそうな気がする。
「いや、俺のフレはメンテ入るってアナウンスにはキレてたけど、さすがにあんなのに釣られたりはしないぞ。
削除キャラが復活したってのは、朝、公式フォーラムを見たからな」
「あー、公式フォーラムか。全然見てないわ……」
ネタバレ見ちゃいそうで避けてるんだよな。それに、街中のことだとかクエストだとか、俺と全く関係なさそうだし。
関係がありそうなのって、生産系スキルの話題ぐらいか?
「まあ、ネタバレ気にしてるなら見ないほうがいいな。俺もクエスト関連は全然見てないし」
「クエによっては『事前に調べてないとクリア不能』みたいなのあるんじゃないのか?」
「まだオープンして2週間だし、そんなクエねえって。IROは公式が『再チャレンジできないのはストーリークエストだけ』って言ってるしな」
「へー」
そういや、美姫もそんなこと言ってたっけ。安定稼働からの新規の制限解除があってからメインストーリーが始まるとか。
まあ、無人島生活の俺には関係なさそうだけどな……
***
休憩時間にナットからいろいろと聞いた感じ、俺とミオンが悪いって話にはなってないらしい。少なくとも公式フォーラムでは。
「つか、ゲーム攻略サイトのバーチャルアイドルが検証もせずに、キャラのリスタを煽るのもアウトだし、それに釣られる方も悪いって話だな」
そんな感じらしくて一安心。という話を部室でしている。
『そうなんですね。ホッとしました』
「だね。黙ってた俺らが責められたら、ホントとばっちりだよ」
『公式フォーラムって私でも見れるんでしょうか?』
「確かIROのプレイヤーだけが利用できるはず……って、ミオンはキャラは作ってあるから見れる気がするな」
別にスタートしてなくても、アカウントあればいいんだよな? キャラネームはミオンって決めてたし。
『見てきてもいいでしょうか?』
「いいと思うけど、告知はチャンネルだけって宣言しちゃってるから、書き込みはダメじゃないかな?」
『はい。見るだけです』
「あと、悪口とか書かれてるかもだけど……」
『大丈夫ですから』
そう言って公式サイトからフォーラムを見に行くミオン。
俺は見る気はないし、ベル部長が来るまで暇だ。そういや、ミオンが投稿した動画の再生数ってどれくらいに……
「うわ、マジか」
最初の動画は30万再生を超えてるし、その次のも12万を超えてるし。チャンネル登録者数は5000人突破かー。
「二人とも早いわね」
「私が担任ですからねー」
ベル部長とヤタ先生が来て、それぞれ席に着く。
「昨日の緊急メンテの一件だけど、今のところ、二人にとばっちりが来るようなことにはなってないみたいね」
「むしろ心配されてるっぽいですねー」
二人がチャンネルを見てそんな話を……どこだ? あ、こっちのお知らせについたコメントの方か。
そっちの方に、昨日のメンテ時間辺りからコメントが増えている。
ミオンが動画を上げなくなるんじゃないかっていう心配が多いな。あと、動画を見ていたおかげで、無人島スタートを思い止まりました的なのもちらほら……
「まあ、あの動画見てたら『俺も!』ってならんよなあ」
「今回のことで後から協力者が入ることもできないってわかりましたしねー」
『次の動画は火曜に投稿でいいですか?』
「いいんじゃないかしら。明日の部活の時間にやりましょ」
明日の動画はルピを助けるところまでだっけ。それはそれで動物好きが盛り上がりそうな気がするな……
***
「ワフッ!」
「おはよう、ルピ。ちょっと待ってくれ」
いつものようにライブ配信をミオン限定で開始。ほどなく視聴者数が1になる。
『ショウ君、ルピちゃん、こんにちは』
「ようこそ、ミオン」
「ワフン」
さて、部活終わりまで1時間ほどだし、さくっと罠の見回りの続きと粘土採集かな。
『そういえば、皮をなめす話なんですけど』
「あ、なんかわかった?」
『素材加工っていうスキルがあるそうです。モンスターのドロップ品でそのまま使えないものを加工して、使えるものにしてくれるんだとか』
「おおー!」
って、さっき公式フォーラムで探してくれてた? うーん、なんか俺のネタバレ回避へのこだわりで手間をかけてるっぽくてアレ。
ともかくスキル一覧を開いて、素材加工はどこに……あった。SP1で済むし【素材加工:Lv1】を取得っと。
テントに置いてあった皮を手に取ると、加工するための薬剤が足りないらしい。薬剤……調薬でなんとかなるのか?
『ダメですか?』
「行けそうなんだけど、皮の加工に薬剤が足りないって言われてる」
『皮の加工で薬剤っていうと……タンニンにつけたりするっぽいですね』
ミオンが調べてくれたのかそんな話をしてくれる。タンニンっていうと柿渋とかだっけ?
柿……どっかで見たことがあるような……
「ああ!」
パプの実を取り出して鑑定……
【パプの実】
『パプの木になる実。渋味が強い。
料理:乾燥させるなどで渋味を抜くと美味。調薬:果汁は麻痺状態を解除する。素材加工:果汁は皮革加工剤となる』
「これだ! これ要するに柿だよな。ゲームに合わせて手間のかかる部分はスキップしてる感じだけど」
『すごいです!』
「いやいや、ミオンのおかげだって。よし! 罠の見回り、粘土探しに加えて、パプの実を採集に行くか」
「ワフッ!」










