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十六夜2
昨日の満月があまりにきれいだったので
日が沈んですぐに散歩に出た
月の出が遅くなることをすっかり忘れていて
寒い夜の坂道を独り
うろうろと歩く
寒い寒いと思いながら
坂道から東の山を眺めると
山際の空がうっすら明るい
坂道で立ち止まり東の空を眺める
盆地の空は狭いと平野や海辺に住む人は言うが
周りに山が見えないと落ち着かない
そんなことを思っていると
山の間から少しずつ
月が出てきた
月を見ながら歩き出す
人も車も通らない傾斜のきつい坂道を
ゆっくりと下りた
昇る月は思いの外はやく
坂の下の車が行き交う道に着く頃には
すっかり姿を現している
帰り道
家々の隙間から月が顔を見せる度に立ち止まった
すれ違う人たちに怪訝な顔をされたけれど
誰かと眺めたかった気もするけれど
月があまりにきれいだったから
月がとても大きく丸かったから
まあ、いいか




