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冬の夜に自転車を押す


 盆地の空は狭い

 山の影がビルの向こうに見える

 ライトアップのイベントがあるせいか

 歩く先から沢山の人

 明るい表情の人々が怖くて

 一つ横の通りへ移る

 一つ横の通りは人がほとんどいない

 だからキシキシとなる自転車の音に

 ようやく気づけた


 行きは急ぎだったから

 自転車で緩やかな坂を下りた

 明るい道に残る雪は融けて軟らかい

 地方都市の休日の昼

 たいして人は多くない


 用を済ませて暗い坂道を帰る

 昼間融けた雪はキラキラと凍っている

 一つ横の大通りから感じる

 人々の気配は

 さらに横の道へ移ることで

 消えてゆく

 暗い道に自転車の軋む音だけが響く

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