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窓
夜、部屋の窓から外を見る
そんなことも少なくなった
いつの間にか変わる景色が寂しくて
変わったことに気付けもしない程
見ているようで見てこなかった
かつては無かった高いビル
その灯りが見える
かわりに1分位の間隔で明滅していた
高校生の頃によく眺めた
あのビルの灯りはもう見えない
今は遠くなった高校の窓
毎日眺めた山や空
卒業して二十年過ぎてから
一度だけ学園祭に行って眺めた
山はあまり変わらず
けれど自分がどの教室にいたか
もう思い出せなかった
大学の窓はさらに遠く
生きている間にまた見られるか
もうわからない
通った中学校は今日が卒業式
見慣れたこの部屋の窓
その外を
今を生きている卒業生たちは
通って式にのぞむだろう
窓の景色は変わってゆく
いろんなものが遠くなった




