街路樹

　５月のはじめ

　やわらかな緑が目に優しい

　この時期だけ数日見られる木の葉の色

　そのやわらかな緑色を見たくて

　夜明けの街を歩いた

　車の流れもあまりなく

　静かな通りに立つ木々を眺めた

　あれは1997年だった

　合宿の帰り

　やはり朝早くに

　あの人と並んで千本通を北へ歩いた

　プラタナス、だったと思う

　街路樹の葉がやわらかな緑色で

　折に触れてふと思い出す

　あの日と同じ新しい葉の緑色が見たくて

　毎年この時期に独りで歩く

　木々は美しく

　朝の街はやはり静かで

　けれどあの日と違う

　今の美しさを楽しみながら

　遠く離れた時を感じる

　あの日に見た街路樹の緑色を見たくて

　同じものなどないとわかっているけれど

　今年もこうして歩いている