82:それぞれの幸福
長くなってしまった本作の最終話です。
最後はやはりヒュルトユウリ視点でシメです。
「それで?」
俺は翌朝帰って来た姉ちゃんから詳細を聞いていた。姉ちゃんって前世の時はここまでウラを読む事はしなかったよな。のほほんお嬢様生活の所為でだいぶ前世より精神的に弱くなったと思ったけどその分だけお貴族サマ生活の所為でウラを読むことが出来るようになったのかな。
いや読めていたらランスベルトみたいなバカに傷つけられる前に手を打てたはずだからルーク限定?
「それでも何も。それで終わりよ」
「終わり?」
「だって私に執着している理由が分かった以上ルークを廃人にしないためにこの婚約は続く。婚姻を結んでしまえば後は第二王子妃……王弟として夫であるルークの外交を手伝う妻になるだけ。ルークが今は私を本気で愛しているのは分かるけれど私はルークを愛していないもの。というかルークと話していてやっと分かったわ」
「……何を?」
「私の幸せは何か」
姉ちゃんの幸せ。
それは俺が最も知りたいこと。
思わず身を乗り出して聞く体制になった俺に姉ちゃんは笑って言った。
「私の幸せは……今と変わらないってこと」
「今と変わらない?」
「そう。ハルトが居てマリーが居てルークが居てユウちゃんが居てニルが居てお父様とお母様が居てハルト達の結婚式を観に来た国民達が笑っている。なぁんにも変わらない日々。変わらないからこそそれを維持するのが難しい事を前世、途中退場してしまった私は知っている。もちろん国王になったハルトや王妃になったマリーを支えるのも外交官のルークを支えるのも大変だろうけれどそれは生きて行くなら問題なんて有って当然だもの。だから日々が続いていつかおばあちゃんになって。それでも変わらない日々があったなら幸せなんじゃないかなって。だからルークを愛せるかどうかは分からないけれど、取り敢えず今の私は幸せなんだなって」
「……姉ちゃんは随分強くなったな」
「……そうかしら? でも結局そういう事なんだと思うわ。大小の問題があっても笑っていられるのなら。それが幸せなんだと思う」
「……そっか」
姉ちゃんの言っている事は分かる。俺達は既に国民の命を背負い始めている。その比率はハルトとマリアンヌ様が大きいけれどその2人を支える以上俺達も少なからず背負うのだ。国民を守ることが国を守ることでその結果が沢山の笑顔ならば幸せなのだと姉ちゃんは言う。
トホルスも多分そのために隣国へ帰った。そのうちトホルスにも会うだろう。トホルスはおそらく隣国の重要な役職に就くはずだ。アイツはそういうヤツだ。逃げてしまったことを恥じて必ず逃げない事を選んでくる。前世のアイツのことはよく知らんが今世でのトホルスを見ればそんな感じがする。トホルスの幸せもおそらく姉ちゃんと一緒だろう。そういう意味では姉ちゃんもトホルスも似ているんだろうな。
俺も負けていられない。
自分のためにも姉ちゃんのためにも“幸せ”を模索しながら続いていく日々を願うのではなく叶える力を持たなくてはーー。
長らくお付き合い頂きまして、ありがとうございました。お読み頂きましてありがとうございました。
えっ?何この終わり方?と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、考えた末のものです。人によっては納得出来ない終わり方かもしれませんが、何をもって幸せと感じるのか、と考えた末にベリエはこういう考え方に変化しても良いかな、と。あれだけ傷ついたからこそ新しい恋をすることよりも今、笑っていられることを幸せだと思う考え方に変わりました。
傷ついたベリエだからこそなのかな、と思います。
その後。ルークとベリエは結婚します。
ヒュルトとニーナも。トホルスは多分生涯独身のタイプ。それなりに女性と付き合うだろうけど結婚までいかないかな。
ランス達のその後は刑罰の通りなので必要ないと思って書きませんでした。
以上です。
何かリクエストがあればオマケ話は書きます。リクエストによっては書けないかもしれないですがなるべくご希望に添いたいとは思いますので、リクエストがある方はご連絡お待ちしてます。




