78:改めて知る焦がれる想い〜バイスルーク〜
トホルスが帰国することになりルークの気持ちが落ち着かなくなりました。
同時に今回の話を書いてベリエの幸せが何かが見えました。
あれだけ人を焚き付けておいて簡単に去ってしまう事に衝撃を受けるのと同時にベリエが心配になった。彼女とヒュルトユウリとトホルスは前世があって同じ国でしかも同じ学園にいたそうだ。ヒュルトは年齢が違ったから学園も違ったそうだが。そして何よりベリエはトホルスを想っていたという。
ベリエットとして生まれる前の事だからどうしようもないけれどなんで私には前世の記憶が無いのだろうと思うし、なんでベリエと記憶を共有出来ないのだろうと思えば胸が締め付けられる思いだ。いやそれ以上でトホルスにもヒュルトユウリにも嫉妬で身が焼かれそうな思いが募る。
……ベリエにすら私の知らないベリエが居る事が苦しくて許せない想いを抱えてしまう。
ベリエが悪いわけでもヒュルトが悪いわけでもトホルスが悪いわけでもないのに。辛くて苦しくて悔しくて訳もわからず叫びたくなってしまう程のこの想いは、ベリエがランスベルトと婚約すると聞かされた時以来か。それともトホルスがベリエではないベリエの好きだった男だと聞いた時以来か。ベリエはある意味酷い。私ではない男を好きになった事を私に教えてくるのだから。ランスベルトの時も前世のトホルスの事も。
私がこれほどまでにベリエを愛しているのに。
ベリエは私を愛してくれない。
その現実にまた身が焼かれそうな思いがする。今は余計に。トホルスを想っていたのはベリエではないベリエだとしても、今のベリエだってトホルスの事は嫌っていないはずだ。トホルスが帰国すると聞いてしまったらベリエはどうするというのだろう。私との婚約を破棄してトホルスの元へ去って行ってしまうのではないか。私は情けない事にそう怯えていた。
「……そっか。トホルス、帰国するんだね」
「ああ」
「幸せになってね」
「幸せか……。俺の幸せは俺が考えて決める。だから一般的な幸せとはまた別かもしれない。それでもそれが俺が選んだ幸せならばベリエは納得して応援してくれるだろう?」
「それはもちろん」
「分かった。じゃあ考えてみるよ」
「私もきちんと考えるわ。……さようなら。また会えた時にはお互いが幸せだ、と報告出来るといいわね」
「そうだな」
……私の焦がれるような思いとは裏腹にベリエとトホルスの別れはそれで終わった。終わってしまった。ベリエはトホルスの元へ去って行かないしトホルスがベリエを掻っ攫う事もない。ただただ互いの幸せを願って友として別れた。あまりにも呆気なく。
本当にこれで良かったのかベリエに問おうとして……後悔しているけれど私と婚約しているから仕方ない。なんて言われたら立ち直れないと思うので何も言えなかったし訊けなかった。そんな私の心にベリエは気付いていたらしくてベリエからこの時のトホルスとの別れに対する心境を私が聞くのは兄上の……ハルトリッヒ王太子殿下の国王陛下即位式兼結婚式の日のことだった。
お読みいただきましてありがとうございました。
前書きにも書きましたが今回の話を執筆してベリエの幸せが見えました。




