73: いいかげんに素直になれば良いのに・2〜ハルトリッヒ〜
昨日の続きです。少し短め。
「考えてみればベリエと出会う前のルークの事はあまり良く知らないな」
「ああそうか。王族は基本的に子ども達を個別に育てるものね」
私が溜め息をつけばベリエがあっさりと納得する。だがベリエの話は理解出来る。
「つまりベリエ基準のバイスルークという個人か」
「それがどれほど危険か分かるでしょう? この世に絶対なんて無いわ。私は長生きするつもりだけど例えば明日にでも不治の病に罹らないとは言えない。例えばルークを愛したとして何年か後に別の者を愛したら? 妃は愛人を持てないけれどルークの場合は私が他の人を愛する事そのものが許せないと思うわ」
「……ベリエがそんな不実な事はするまい。だが病や事故などは確かにどうにもならない。そんな時ベリエが居ないルークという個性がどうなるのか、ということか」
私は改めて弟の未来を考える。ずっとベリエがバイスルーク個人の行動の元だったとすれば……ベリエを失った時の弟はどうなってしまうのか。もしかしたらベリエはランスベルトと結婚していた方がルークの為だったかもしれん。少なくとも節度はあったはず。障害が無いからこそ弟の言動が読めない。
「私がこの短期間でルークを愛するようになれていれば良かったのだろうけど残念ながら今の私にはルークの事を幼馴染みの友人以上に思えないの。でもルークの言動の危険性に気付きながら放置していた私に、責任はあるわ。だから」
ベリエがそこで言葉を切った先は既に解っている。
「……ベリエがルークの言動に注意をはらっていたのはそのためか」
「ええ。ルークを廃人に追い込むわけにはいかないわ」
廃人。その放たれた言葉の重みに私はようやくベリエが王命を望んだ意味に気付いた。そうして自分を縛る事でルークをバイスルーク個人として第二王子という公人としてどちらのルークも尊重出来るように側に居る選択をしたのだ、と。王命で無ければ簡単では無いがベリエはルークと離縁も出来るし他の相手を愛する事も出来る。
反対に王命を出せばベリエはその責任と覚悟の重さを持って生涯に渡りルークと向き合い続けるのだろう。
ベリエは権利を放棄し義務を選んだ。ルークと向き合うために。それならば私はベリエの望みを叶えるしかベリエの覚悟に報いてやれないのだろう。ベリエがルークを愛する事になるまで。そしてルークだけを愛し続けられる未来が来るよう祈るしかなかった。
お読み頂きましてありがとうございます。明日はヒュルト視点の予定です。




