68:俺の想像と彼女の話は食い違う・②〜トホルス〜
昨日の続きです。
「済まないベリエ。話がよく分からない」
とりあえず俺は冷静になる為にもベリエが何を考えているのか促した。
「私ね。こんな事をトホルスに話すのもどうかとは思うけれどルークに好かれていると思うわ」
「あれは執着しているな」
確かに好きな女から聞きたい話じゃない。しかも俺の気持ちを知っているのに。だがそこは口にしない。
「……ルークって私を笑顔にする為になんでもしそうじゃない?」
まぁそんな感じはするな、と頷けばベリエは顔を顰めた。
「私はそれが嫌なのよ。私がルークの言動の全てを握っているって怖いわ。例えばこの後ルークを好きな女性から嫌がらせを受けたとする。それに私が泣きつけばルークはその女性どころか家ごと潰しかねない。それが出来る立場も権力もある。でしょう?」
「まぁそうだな。……嬉しくないのか?」
「どこが? 私がそれで喜ぶと思うの?」
確かに。権力で他者を支配するような相手は前世も今世も嫌いな女だ。前世では……俺がバカだったから彼女を踏み躙り男というだけで付け上がる俺や俺に阿る事で彼女を踏み躙る権利を持った女達に逆らう事はしなくても嘲笑われても折れなかった。そういう芯の強さを持っている。
「……つまりルークにはベリエの一挙手一投足にフラフラしないで欲しい、と?」
「そういうことね。でもルークにそう話して聞き入れてくれるとは思えない。どうしたらいいと思う?」
「……それを俺に聞くのか?」
ベリエの話は理解したが何故わざわざ恋敵に塩を送る真似をしなきゃいけない。却下だ。
「トホルスは医者でしょ。だから聞いているのよ」
そうか。恋愛相談を何故俺に、とは思ったがそういう意味なら理解は出来た。やはり敵に塩を送る真似はしたくないが。
「ベリエはルークに怒った事があるか?」
「無いわ」
「それなら注意喚起と同時に次は……と怒ってみるのもありじゃないのか? 要するに全ての行動をベリエ基準にするな、と伝えれば良い。アイツは莫迦じゃないから理解するだろう」
「そう、ね。そうかもしれないわ」
そこで沈黙が起こる。ベリエはその間も何か話したいのか口を開閉していて。やがて静かに話し出した。
「私、ね。トホルスが好きだわ。でもそれは友人として。前世とか今世の立場や状況とかそういった柵を抜きにしてもトホルスを男性として見ようとは思っていないの。トホルスの全てを知っているわけじゃないけれど。環境や立場や様々な事柄で前世の筒井くんじゃないトホルスなのは分かってる。それに関して前世が良かったとか言わないわよ? 寧ろ人の本質は変わらない気がするわ。前世の私はあなたのその本質に惹かれた。でもベリエの私にはあなたのその本質は惹かれない」
本質、か。
確かにそうなのかもしれない。変わらない部分は確かにある。
だけど前世の里江ちゃんはその俺に惚れて今世のベリエはその本質を必要としていない。改めて言われるとキツイものがあるが、遠回しで表現するよりハッキリ言われる方がベリエらしい気がした。
明日はまだ何も考えていないです、すみません。




