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65:見て見ないフリをして来たツケを払う時〜ベリエット〜

昨日のハルト目線で語られたベリエの涙の理由とルークとベリエの会話の中身です。

6人で他愛ない日を送るために出かけて来た所は綿帽子の花が咲く丘だった。咲いている時期はもっと前で今はもう何もないはずの丘なのに未だ咲き乱れているのを見て嬉しくなって駆け出す。小さな頃6人で見た時のようにまた見られるなんて……と感動して凄く幸せな気分だった。だけど。ハルトから耳打ちされてようやく気付く。

この世界には品種改良みたいな概念は無い。


だったら何故この花がこれほど咲き誇っているのか。


土魔法が使えるルークのおかげなのだ、と私も理解する。


「ベリエ⁉︎ なんで泣いている⁉︎」


慌てた様子のルークに言われてハッとする。視界がやけにボヤけると思えば泣いていたみたい。涙を拭いルークのエスコートで皆から離れる。


「この花……」


「ベリエが最初に見た時綿帽子のようだって言ってたから。綿帽子を私は知らなかったけれどそのうち綿という素材を知ってこれが語源だと分かった。それから毎年此処に人をやってこの花の様子を聞いていたんだが。大抵の花同様咲く時期は決まっているし満開の時期は短い事を知って。考えていたんだ。ベリエがこの花をいつでも見たいと言えば見られるように出来ないかって」


ルークの穏やかな声に耳を傾ける。


「それで私には土魔法が使えるから。この魔法は土そのものを防御の壁として変化させたり植物を使って敵を捕らえたりする事が出来る。というよりそう教わる。でも植物を操れるならこの花をいつでも見られるように改良出来るかもしれない、と思い立って。試行錯誤はしたんだ。恥ずかしい話だが一度はこの花を消してしまいそうになってしまって慌てて魔法を使うのもやめた。その時はこの丘全部がこの花で埋まっていたのに私の片手くらいしか残らなかったよ。だけどそこから魔力を調整しながら魔法を使ってこの花を成長させて……去年から1年中咲く花に変えたんだ。国民にもその知らせはしてある。兄上も知らなかったはず」


ルークが照れ臭そうに笑う。


「私のため、ね?」


答えが分かっているのに尋ねる。ルークは「うん」と笑った。胸がキリリと痛む。ルークはいつだってそう。私が笑う事が何かを考えている。……それは時に私を害するものを密かに排除する程に。

この花を改良するような考えも私の笑顔のため。

ランスベルト元殿下の件も私が何も言わず何も行動しなかったならきっと私が再び笑うために冤罪を被せて処刑くらいはしていたはず。

ルークは私の笑顔を守るためにランスベルト元殿下を排除しなかった。私が彼を好きで笑顔でいられたから。ルークが彼を排除しなかったのはただそれだけが理由。


いつでも何をしていてもバイスルーク殿下の言動の根本は“私が笑顔でいられるかどうか”だった。


薄々気付いていたけれどこの花が時期とは関係なく咲いている事をハルトから知らされてルークの言動の根本をようやく理解した。ずっと見て見ないフリをしてそんなわけはない、と否定してきた。でももう確定してしまった。


バイスルークは私の笑顔を守るために全ての行動を決める人ーー


それがこの花のようにプラスになる行動なのか或いは私でも知らないうちに私の笑顔を曇らせる者を排除するマイナスの行動になるのか。それは全てが私次第。私は……もっと早くにこの事実と向き合ってくるべきだった。今まで見ないフリをしてきたツケをそろそろ払う必要があるのかもしれない。

それが出来なければルークはいつまでもこのまま。それは多分……ルークの破滅を呼ぶような気がして怖かった。さっき自分でも気付かないうちに泣いた理由はその怖さを改めて突き付けられたからだろう。


もし私がルークを受け入れて彼と結婚するのなら……私はこの怖さも受け入れなくてはいけない。そう考えればきちんとルークに向き合う事をしなければ。もう私にもルークにも時間が無いけれど……。でも今のままでは私はルークを受け入れる事も拒絶する事も出来ない。

なかなかに怖いルーク。

でもベリエに対する執着の強さって逆に言えばこういう事だろうと思っていたので。

ベリエはその執着心に気付きつつも気づきたくなかった。でももうそんなわけにはいかない、と向き合う事になります。

ストーカー予備軍のルーク……


明日は誰視点か考えてません。


明日からお盆期間中はもしかしたら朝6時ではなく夜とか日中とか更新時間がバラバラになるかもしれません。お盆……忙しいもので。

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