5:転生直後の俺と姉ちゃん・2
弟視点のベリエット。
本人視点じゃないためかなりサラッとしていますが、それでもベリエットが誰のために何のために頑張って来たのか、少しは伝わるといいな、と思います。
姉ちゃんは光魔法の属性を持っている。
それが第三王子との婚約の理由の一つだった。もちろん公爵家という身分も釣り合っていたし。政略として婚約が整った。年齢的には第二王子の方が良かった。姉ちゃんと第二王子であるバイスルーク殿下は同い年だから。本当は姉ちゃんはバイスルーク殿下の婚約者になる予定だった、と父上から聞かされた事がある。
それを、光魔法の属性持ちである事を知った王妃が第三王子との婚約を強引に持ち出した。王太子であるハルトリッヒ殿下とバイスルーク殿下は前・王妃の子。ランスベルトだけが現・王妃の子。一応現・王妃は王太子も第二王子も実の子のように接しているようだ。まぁ前・王妃が病で儚くなって王妃が居ないのは国としても良いとは言えないし、小さな子に母親は必要だろうという事で迎えられた現・王妃だからそれは当然の事なのだが。
それでもやっぱり我が子は可愛いのだろう。ランスベルトと姉ちゃんとの婚約を強引に締結させた。
……王妃自ら横槍を入れておいたくせにランスベルトに愛する女性が出来たからって、側妃として迎えさせる辺り実は何も考えていないのではないかと思うが。王妃はマナーも教養もきちんとしているし語学もそれなりに出来ているし王妃として悪い所は無いが、ランスベルトの事になると若干軽率というか浅慮というか母親としては仕方ないと許せる範囲でも王妃としては疑問を感じるような言動がある、とは噂が聞こえて来ていたけど。
あれ、本当のことだったのか。
王妃だから簡単に離婚出来ないし、幽閉なんかの処分が下せるような大きなミスは無いから国王陛下が諫める事で何とかなっているみたいだが。
……今回のバカの側妃の件は、あの王妃が先走ったことが原因か。だが国王陛下の事だから知らなかったわけはない。なんで諫めてくれなかったんだよ。一夫多妻は許されているが、それだって正妻に子どもが出来なかった場合に愛妾を迎えられるのであって、正妃(後に臣下に降れば正妻)になる予定の姉ちゃんとの結婚より先に側妃(後に臣下に降れば愛妾)を迎えるなんて有り得ないだろうに。
俺は姉ちゃんを思えばやり切れなくなった。
元々姉ちゃんはバイスルーク殿下と仲が良くてランスベルトを弟のように思っていた。それでもランスベルトとの婚約が決まってからランスベルトに釣り合うように必死に勉強も苦手なダンスや護身術も身に着けていた。その間に婚約者としてお互いの事を知っていくうちに、姉ちゃんはランスベルトを好きになっていった。
自分は3歳も年上だから学院生活は共に過ごせない。そして学院生活は男女の距離が近づく。姉ちゃんはそれを身を持って知っていたからこそ、ランスベルトが入学する前に「ランスベルト様をお慕いしております」と告白したのだ。それを受け入れたはずなのに。
学院で男爵家のご令嬢と出会って?
姉ちゃんの目が無いのを良いことにまるで恋人同士のように寄り添いあって?
仲睦まじく過ごした後には側妃?
はぁー? 姉ちゃんの事なんだと思ってんの⁉︎
姉ちゃんは光魔法の属性持ち。俺の闇魔法の属性の方が希少だけどそれでも光魔法の属性持ちは少ない。でも光魔法や闇魔法の属性持ちだからといって、何もせずに使えるわけじゃない。
魔法だって勉強して実地体験で覚えていく必要がある。寧ろ実地体験を重ねていかないとコントロール出来ないから暴走しがちなのだ。俺は魔法を使いたくて仕方なかったから直ぐに覚えたけれど、姉ちゃんはどちらかと言えば魔法を使うのが苦手だった。コントロールが下手で怪我を治す治癒魔法を暴走させて魔力がゴッソリ抜けて倒れる……なんて事を繰り返していたくらいだ。
それでも頑張っていたのは、バカに釣り合う自分になるため。
それだけだったのに。
前世も今世も不器用で引っ込み思案で泣き虫な姉ちゃんが、好きになった相手に告白したのは多分前世の記憶があったから。前世の母親の所為で好きな気持ちを歪められてしまった姉ちゃんは、今度は歪められないように自分の口から気持ちを告げたかったのだろう。
だから受け入れてもらって「一生守る」と言われた、と喜ぶ姉ちゃんを俺も心の底から祝ったのだ。それからたった2年で浮気した挙げ句正妻より先に愛妾と結婚って、これもう姉ちゃんをバカにしているとしか思えないよね?
姉ちゃんとランスベルトとの結婚は半年後。バカが卒業する前だけど姉ちゃんの結婚適齢期を考えるとそこがベストだった。その半年後にはバカも卒業している予定だったから卒業して直ぐでも良かったが、その頃はバイスルークともう一つの公爵家のご令嬢との結婚式が決まっていた。だから卒業半年前にバカと姉ちゃんの結婚式が決まったのに。
1年も経たずに王族が2人も結婚式を挙げるから城内は本当に忙しい。殺伐としている、とハルトリッヒが文句を言っていた。そんな最中に側妃と極秘結婚。色々有り得ない。指折り数えて結婚式を楽しみにしていた姉ちゃんの気持ちを蔑ろ。……滅べばいい。
何のために泣き虫を返上して引っ込み思案を返上するべく頑張ってきたのか。
その姉ちゃんの気持ちと努力を台無しにした王妃とランスベルトは痛い目に遭うべきだと思う。滅べ。あんなに姉ちゃんに好かれていたのに。姉ちゃんになかなか会えないからって擦り寄ってくる女に簡単に引っかかってそっちに乗り替えるとか、滅べ。そして無理やり姉ちゃんと実子との婚約を取り付けたくせに「好きな人と結婚出来ないのは可哀想だわ。せめて側妃にして結婚させてあげなきゃ」とか考えたバカの母親。滅べ。
……やっぱり王太子に文句を言ってキリキリ締め上げてもらわないと俺の気が済まん。
そんな俺の怒りが届いたのか王太子から返信が来て指定された日に城へ向かう事にした。……その前に泣き虫な姉ちゃんの様子を見に行くか。
俺はもっと早くに姉ちゃんの様子を見に行かなかった事を後々悔やむ事になるとは知らず、躊躇いながらも姉ちゃんの自室へ足を運んだ。
次話はベリエット視点。
ランスベルトから話を聞いた彼女の気持ち。マイナス思考の持ち主、ということを先に書いておきます。




